令和元年度「体力・運動能力調査」(3)体力・運動能力を前回の東京五輪開催時と比較 スポーツ庁
スポーツ庁「令和元年度 体力・運動能力調査」の結果を4回にわたって紹介している。第3回は、「前回の東京オリンピックが開催された頃との比較」の結果を取り上げる。
前回の東京オリンピックが開催された頃との比較
各テスト項目の加齢に伴う変化の比較
各テスト項目ごとに加齢に伴う変化を比較した場合、昭和39~43年と令和元年度との間で、ボール投げを除き、ピーク時を迎える年代やその値にあまり大きな差はみられない。なお、令和元年度ではいずれのテスト項目においても大学生(18、19歳)での記録の低下がみられる。
握力は、男女および両世代(昭和39~43年度と令和元年度)とも30代でピークに達し、その後は加齢とともに低下していくが、その低下の様子は令和元年度の方が昭和39~43年度よりもややゆるやかである。50m走は、両世代とも男子は17歳、女子は14〜15歳頃にピークに達し、その後は加齢とともにゆるやかに低下していく。持久走は、両世代とも男子は17〜18歳で、女子は13歳でピークに達し、その後は加齢とともにゆるやかに低下していく。
成人での実施種目である急歩は、男女および両世代とも加齢とともにゆるやかに低下していく。ボール投げは、男女および両世代とも17歳でピークに達するが、令和元年度の記録はすべての年齢において昭和39~43年度に比べて低い。
体格と体力(握力)の発育発達に関する比較
昭和39年度に比べ令和元年度の青少年期の体格(身長、体重)は、いずれの年齢においても大きく向上しているが、体力(筋力)は、15歳以後の発達の程度が緩やかであり、昭和39年度の記録を下回っている。
令和元年度の身長および体重は、男女ともにどの年齢においても昭和39年度を大きく上回っている。しかし、握力は男女ともに14歳までは、両世代間でほとんど差がみられない、あるいは令和元年度がやや上回っているが、15歳以後は令和元年度の加齢に伴う向上(発達)が昭和39年度に比べて緩やかなために、令和元年度の記録は昭和39年度を下回っている。
青少年の運動・スポーツ実施状況の比較について
青少年の運動・スポーツの実施率は、令和元年度の状況を前回の東京オリンピック開催後の昭和43年度と比較すると、どの年齢においても高い値を示しているが、とくに小中学生の女子での変化が顕著である。
中学生、高校生のスポーツ実施率は、令和元年度と昭和43年度当時を比較すると向上していることを推測すると、競技性の高いスポーツだけではなく、誰もが気軽にスポーツを楽しめる環境が増えていると考えられる。
なお、昭和43年度調査では、「実施している」「実施していない」の二択、令和元年度調査では、「ほとんど毎日」「ときどき」「ときたま」「しない」の四択での回答してもらっている。
年代別総合評価(A・B判定)の加齢に伴う推移の比較
東京オリンピックを経験した世代は、毎年体力・運動能力の総合評価※が高い者の割合が増加しているが、とくに東京オリンピックを経験していない世代の40代前半の女子は、低い値のまま推移している。
前回の東京オリンピックを経験した世代(昭和17、24、34年生まれ)は、総合評価A・B群の割合は年齢が上がるとともに増加し、令和元年度の値は約60%で基準値を大きく上回っている。
前回の東京オリンピックを経験していない世代(昭和44、54、平成元年生まれ)において、男子では昭和54年生まれが最も低いものの基準値以上の割合を維持しており、平成元年生まれでは再び高い割合を示している。一方、女子では昭和54年、平成元年生まれの割合が基準値を下回り、特に昭和54年生まれは、低い値のまま推移している。
年代別総合評価別運動実施状況の比較
東京オリンピックを経験した世代、していない世代ともに、体力・運動能力の総合評価が高い群では、スポーツを週1回以上実施している割合が高い。また、東京オリンピックを経験した世代は、一部を除いて実施率は総合評価の結果にかかわらず高い。
男女ともいずれの年代においても、運動・スポーツを週1回以上(ほとんど毎日+ときどき)実施している割合は、「総合評価の高いA・B群」が高く、「総合評価の低いD・E群」で低い。
「総合評価の高いA・B群」においては、運動・スポーツを週1回以上実施している割合は、男性ではいずれの年代においても60%、女性では30代前半を除き50%を上回っている。とくに、青年期に東京オリンピックを経験した70歳代以上では、男女ともにその割合は80%を上回っている。
「総合評価の低いA・B群」においては、運動・スポーツを週1回以上実施している割合は、男性では50代前半が最も低く約28%であるが、70歳代以上では50%を上回っている。また、女性では30代前半が最も低く約19%であるが、60歳代以上では50%を上回っている。
関連情報
スポーツ庁「体力・運動能力調査」アーカイブ
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3.ストレス解消、学力向上、達成意欲...スポーツのさまざまな効果と可能性
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1.小学生男子の体力が過去最低
2.小中学生体力低下の原因は?
令和元年度(2019年度)
1.調査概要と加齢に伴う運動能力の変化
2.年齢別に見る体力・運動能力の年次推移
3.体力・運動能力を前回の東京五輪開催時と比較
4.幼児期の外遊びと小学生の運動・体力
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1.小中学生の体力が低下しているのは新型コロナの影響か?
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①体力・運動能力の加齢に伴う変化
②青少年6~19歳の体力・運動能力
③成年20〜64歳と高齢者65~79歳の体力・運動能力
④10年間の調査結果の概観
令和4年度(2022年度)
①子どもの体力が3年連続低下
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③体育が楽しい中学生の割合が過去最高
令和4年度(2022年度)
①体力・運動能力の加齢に伴う変化(全年齢)
②6~19歳の体力・運動能力
③20~79歳の体力・運動能力
④運動・スポーツ実施状況と体力、健康状態、生活充実度などとの関係性
令和5年度(2023年度)
①調査結果の概要と今後の対応
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【前編】中学生・男子はコロナ前の体力に戻るが、小学生・女子は引き続き低下【後編】「運動は好き」と回答した割合が中学生・男子で過去最高