スポーツ庁「令和6年度 体力・運動能力調査」
1. 調査結果の概要と今後の対応
スポーツ庁はさきごろ、「令和6年度 体力・運動能力調査」の結果を公表した。同調査は、国民の体力・運動能力の現状を明らかにするため、昭和39年以来、毎年実施されており、令和6年度調査は61回目。

今回の報告では、平成10年度に新体力テストとしての調査が始まって以降、令和6年度までの27回分のデータ分析の結果なども示されている。3回に分けて紹介する。第1回は、体力・運動能力の変化の全体的な傾向と、同庁の今後の対応について。
体力・運動能力の変化の全体的な傾向
(1)体力・運動能力の加齢に伴う変化の傾向
一般的傾向として、ほとんどの項目の記録は、男子が女子を上回ったまま成長とともに向上を示し、女子が中学生年代でピークレベルに達するのに対して、男子では高校生年代でピークレベルに達する。ただし、握力は、男女ともに青少年期以後も緩やかに向上を続け30~40歳代でピークレベルに達し、他のテスト項目に比べピークに達する年代が遅い。
ほとんどの項目において、男女ともに記録はピーク以後、加齢に伴い直線的に低下していくが、低下の程度はテスト項目によって大きく異なる。
(2)体力・運動能力の年次推移
青少年(6~19歳)
新体力テストが施行された平成10年頃と令和6年度を比較すると、男女ともに、上体起こし、長座体前屈、反復横とび、20mシャトルラン、50m走が、ほとんどの年代で令和6年度の方が高く、握力とボール投げは、いずれの年代でも令和6年度の方が低い結果となっている。合計点については、男女ともいずれの年代でも令和6年度の方が高い結果となっている。
最近10年間では、過半数の年代で低下傾向を示したのは、男子では、握力、上体起こし、20mシャトルラン、持久走、ボール投げであり、女子では、上体起こし、20mシャトルラン、ボール投げであった。合計点については、男子のみ過半数の年代で低下傾向を示している。
成年(20~64歳)
新体力テストが施行された平成10年頃と令和6年度を比較すると、男子では、上体起こし、反復横とび、20mシャトルランがいずれの年代でも令和6年度の方が高く、握力、長座体前屈、立ち幅とびは、ほとんどの年代で令和6年度の方が低い結果となっている。女子では、上体起こしと反復横とびがほとんどの年代で令和6年度の方が高く、握力、長座体前屈、立ち幅とびは、ほとんどの年代で令和6年度の方が低い結果となっている。合計点については、男子ではほとんどの年代で令和6年度の方が高い結果となっている。
最近10年間では、過半数の年代で低下傾向がみられたのは、男子では、握力および立ち幅とびであり、女子では、握力、長座体前屈、立ち幅とびであった。合計点は、多くの年代で男女ともに横ばいである。ただし、40歳代女子ではほとんどの項目および合計点で低下傾向を示している。
高齢者(65~79歳)
新体力テストが施行された平成10年頃と令和6年度を比較すると、男子では、長座体前屈以外の項目で、いずれの年代でも令和6年度の方が高い結果となっている。女子では、すべての項目でいずれの年代でも令和6年度の方が高い結果となっている。合計点については、男女ともいずれの年代でも令和6年度の方が高い結果となっている。
最近10年間では、男子の多くの年代で上体起こしが向上傾向を、長座体前屈が低下傾向を示している。女子では多くの年代で上体起こしが向上傾向を示している。合計点は、いずれの年代でも男女ともに横ばいである。
今後の対応
- 第3期スポーツ基本計画に基づき、誰もがスポーツに参画できるような機会の創出・意識の醸成や、研究現場・医療現場等の関係者との連携深化等に取り組んでいく。
- 女性の30~40歳代においては、運動・スポーツの実施率及び体力が低下傾向にあることから、企業、スポーツ団体、地方公共団体等と連携して、働く世代・子育て世代を重点としつつ、運動・スポーツの実施を促すための取組を進める。具体的には、以下の取組を重点的に進める。
- (1)生活の中にスポーツを取り込む「Sport in Life」に賛同する企業、団体、地方公共団体等の加盟を募り、相互の情報共有、連携を促すことで、働く世代を中心にスポーツを楽しむ人を増やすことをねらいとする「Sport in Lifeコンソーシアム」の拡大
- (2)従業員の健康増進のためにスポーツの実施に向けた積極的な取組を行っている企業・地方公共団体・大学等を認定する「スポーツエールカンパニー」の拡大
- (3)地域住民に対してスポーツの実施・習慣化を促す取組を行う地方公共団体を支援する「運動・スポーツ習慣化促進事業」の推進・横展開の強化
- (4)「女性のスポーツ参加サポートページ」等による女性に運動・スポーツの実施を促すための周知・啓発
- 学生時代の中で運動・スポーツの機会が減少する大学期において、運動・スポーツを行う環境を充実させるため、大学においてレクリエーショナルスポーツをモデル的に実施する等の検討を進める。
- 様々な性別、年齢、ライフステージの方が、目的を持った効果的な運動・スポーツを通じてライフパフォーマンスの向上を目指せるよう、科学的根拠に基づくコンディショニング(セルフチェックと改善プログラム等)の普及や、デジタル技術を活用した多様な運動プログラムの開発・普及に取り組んでいく。
- スポーツを通じて国民の健康増進、健康寿命の延伸、介護予防に資するよう、関係省庁との連携を進める。
関連情報
スポーツ庁「体力・運動能力調査」アーカイブ
平成30年度(2018年度)
1.元気な高齢者が増えている!?
2.10代女性の運動習慣に明らかな差
3.ストレス解消、学力向上、達成意欲...スポーツのさまざまな効果と可能性
令和元年度(2019年度)
1.小学生男子の体力が過去最低
2.小中学生体力低下の原因は?
令和元年度(2019年度)
1.調査概要と加齢に伴う運動能力の変化
2.年齢別に見る体力・運動能力の年次推移
3.体力・運動能力を前回の東京五輪開催時と比較
4.幼児期の外遊びと小学生の運動・体力
令和2年度(2020年度)
新型コロナの影響か?「令和2年度 体力・運動能力調査」は、わずかに低下傾向
令和3年度(2021年度)
1.小中学生の体力が低下しているのは新型コロナの影響か?
2.運動時間が減りスクリーンタイムの増加が顕著
令和3年度(2021年度)
①体力・運動能力の加齢に伴う変化
②青少年6~19歳の体力・運動能力
③成年20〜64歳と高齢者65~79歳の体力・運動能力
④10年間の調査結果の概観
令和4年度(2022年度)
①子どもの体力が3年連続低下
②中学女子以外は肥満の割合が過去最高
③体育が楽しい中学生の割合が過去最高
令和4年度(2022年度)
①体力・運動能力の加齢に伴う変化(全年齢)
②6~19歳の体力・運動能力
③20~79歳の体力・運動能力
④運動・スポーツ実施状況と体力、健康状態、生活充実度などとの関係性
令和5年度(2023年度)
①調査結果の概要と今後の対応
②過去60回分のデータを活用した分析結果
令和6年度(2024年度)①
【前編】中学生・男子はコロナ前の体力に戻るが、小学生・女子は引き続き低下【後編】「運動は好き」と回答した割合が中学生・男子で過去最高







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