思春期サッカー選手の食事の質を規定している因子とは? ポーランドのトップ選手を対象に分析
思春期のサッカー選手の食事の質に関連のある因子が、ポーランドのトップレベルの選手を対象とする研究から報告された。思春期前期では体重(コール指数)が有意に関連し、思春期中期では食習慣の自己評価と栄養知識が有意に関連していることが明らかにされている。その一方で、同国の食事に関する推奨をすべて満たしている選手は、わずか1.28%(78人中1人)にすぎないことも示されたという。

思春期のサッカー選手の食事は、何によって質が左右されているのか?
若いサッカー選手の成長、発達、パフォーマンスには、適切な栄養摂取が不可欠であるが、それにもかかわらず、身体的に活動的な青少年はしばしば最適とは言えない食生活を送っている。本研究が実施されたポーランドにおいても、同国の国立公衆衛生研究所・国立衛生研究所(NIPH-NIH)が策定している小児・青少年向けの公的な食事ガイドラインの遵守状況が、低いことが報告されている。そこで本研究では、同国でサッカーの盛んな都市として知られているポズナンの若手サッカー選手を対象に、生活の質、とくにさまざまな食品群の摂取頻度を調査したうえで食事の質を評価し、それを規定する因子を検討する横断的観察研究を行った。
ポーランドのトップチームに所属している81人の思春期男子選手対象に横断調査
この研究の対象は全員、サッカーを専門とするサッカースクールの生徒であり、ポーランド国内の年齢カテゴリーにおける最高リーグで戦っているトップチームに所属する81人。このうち3人にデータ欠落があったため、解析は78人で行われた。全員男子であり、11〜13歳の思春期前期と14〜16歳の思春期中期が、それぞれ同数の39人ずつだった。
標準化された自記式質問票「ポーランドの子どものための簡易食品摂取頻度質問票(Short-Form Food Frequency Questionnaire for Polish Children)」により、食品群ごとの摂取頻度を把握したうえで、それに基づき、健康的な食事指数(pro-Healthy Diet Index;pHDI)と健康に良くない食事指数(non-Healthy Diet Index;nHDI)を算出。また、栄養知識、身体活動、スクリーンタイム、家庭の経済状況などを把握した。
解析対象78人は、半数強(58.97%)が都市部出身で、コール指数に基づき、70.50%は標準体重、20.51%は低体重、8.97%は過体重に分類された。家庭の経済状況は、42.31%が上位、48.72%が中位、8.97%が下位と分類された。全体の約7割(69.23%)はサッカー歴が6年以上で、半数(50.00%)は身体活動レベルが高く、44.87%は中程度と判定された。スクリーンタイムに関しては、48.72%が1日2~4時間、1日2時間未満が33.33%、1日4時間以上が17.95%だった。
栄養知識や食事の質の評価結果
栄養に関する知識は概ね高く、平均スコアは9.15±3.11で、「高い」と判定される選手が71.79%を占め、「低い」に該当するのは7.69%のみだった。ただし、健康的な食事指数(pHDI)の平均スコアは2.68±1.07で、「高い」に該当する選手はなく、「中等度」が51.28%、「低い」が48.72%だった。一方、非健康的な食事指数(nHDI)は全体的に低値で、平均0.58±0.49であり、全員(100.0%)が「低い」だった。
健康的な食生活に関する知識の主な情報源は、両親(75.64%)、インターネット(50.00%)、コーチ(48.72%)であり、栄養士(16.67%)や医師(10.26%)からの情報入手はわずかだった。自己評価に基づき、参加者の89.74%が、自身の食生活が「適切」と評価し、「不適切」との評価は10.26%だった。
同国の小児・青少年向け食事ガイドラインに掲げられている推奨事項のうち、最も遵守されていたのは「毎日朝食を食べる」ことで、85.90%が満たしていた。ただし、食品カテゴリー別の推奨については遵守率が大幅に低く、「野菜を1日に数回摂取している」のは32.05%、「果物を1日に数回摂取している」のは46.15%、「魚を週に2回以上食べている」のは15.38%、「乳製品を1日に数回摂取している」のは23.08%などにとどまった。推奨に掲げられている主要項目をすべて満たしていたのは、全体でわずか1人(1.28%)にすぎなかった。
食事の質と栄養知識、ライフスタイルなどとの相関
次に、調査で把握された各指標の相関が検討された。
pHDIは栄養知識(r=0.25)および食事に対する自己評価(r=0.29)と有意な相関が認められた。また、pHDIはコール指数(r=-0.30)と負の相関があり、体重が重いことは食事の質の低さと関連していることが示唆された。なお、コール指数は、野菜(r=-0.23)および乳製品(r=-0.25)の摂取量と負の相関があり、エナジードリンクの摂取量(r=0.29)と正の相関があった。栄養知識はエナジードリンクの摂取量と負の相関があった(r=-0.22)。
このほかに、菓子類の摂取はファストフード(r=0.31)、加糖飲料(r=0.36)と正相関し、さらに、著者らが「興味深いことに」と述べているように、野菜の摂取(r=0.24)とも正相関が認められた。さらに、菓子類の摂取は魚の摂取と負の相関があり(r=-0.30)、エナジードリンクの摂取は加糖飲料の摂取(r=0.32)およびスクリーンタイム(r=0.27)と正相関していた。余暇時間における身体活動は、スクリーンタイムと負の相関があった(r=-0.26)。
思春期中期では栄養知識の豊富さと自己評価の高さが食事の質を規定
続いて、ステップワイズ回帰分析により、食事の質を予測する因子が検討された。
その結果、検討対象全体では、pHDIの予測因子として、コール指数が低いこと(β=-0.39、p<0.001)、食習慣に関する主観的自己評価が高いこと(β=0.23、p=0.023)、および、栄養知識が豊富なこと(β=0.22、p=0.030)という3因子が抽出され、これら3因子でpHDIの分散の25%を説明していた(R2=0.25)。
年齢層別に解析した場合、思春期前期では、コール指数が低いことのみが有意な予測因子だった(β=-0.51、p<0.001、R2=0.32)。栄養知識が豊富なことは、わずかに非有意だった(β=0.27、p=0.06)。
一方、思春期中期では、食習慣に関する主観的自己評価が高いこと(β=0.49、p=0.002)と栄養知識が豊富なこと(β=0.34、p=0.03)が有意な予測因子だった(R2=0.30)。思春期前期では唯一の予測因子として抽出されたコール指数が低いことは、非有意だった(β=-0.15、p=0.31)。
著者らは、「この結果は自己申告された知識と実際の行動の間に乖離があることを浮き彫りにしている。思春期のアスリートの食習慣を改善するためには、家族やコーチを巻き込んだ、的を絞った多角的なアプローチが必要であることを強調している」と結論づけている。
文献情報
原題のタイトルは、「Determinants of Diet Quality in Young Football Players from Poznań, Poland」。〔Nutrients. 2025 Aug 26;17(17):2760〕
原文はこちら(MDPI)







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