ヨーグルト適量摂取で2型糖尿病の発症16%減、医療費1,440億円削減の可能性 シミュレーション研究
40~79歳の日本人のデータを用いてシミュレーションした結果、ヨーグルトを1日に160g摂取することで、10年間で2型糖尿病の発症が16.1%減少し、糖尿病関連の医療費を2.4%(約1,440億円)削減できる可能性が示されたとする論文が、「Nutrients」に掲載された。国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所と(株)明治の研究グループによるもの。ヨーグルトを上記の半分の1日80g摂取した場合にも、10年間で2型糖尿病の発症が5.9%減少し、糖尿病関連医療費が0.9%(約520億円)削減できる可能性があるという。同研究所のサイトには、プレスリリースが掲載されている。

増大する2型糖尿病の医療費をヨーグルトで抑制できるか?
この研究は、「食環境整備推進のための産学官等連携共同研究プロジェクト」(以下、食環境プロジェクト)の一環として、健康への意識が高い人だけでなく、すべての人が、意識せず、自然に健康になれる食環境の構築を目指す取り組みとして実施された。
研究の背景:ヨーグルト摂取量増加の影響を既報研究に基づきシミュレーション
国内には、糖尿病患者とその予備群をあわせて約2,000万人が存在すると推定されている。糖尿病は、心筋梗塞、脳卒中、認知症などのさまざまな疾病のリスクを高め、生活の質を低下させるとともに、医療費を増大させる一因となっている。そのため、適切な対策を実施し、糖尿病の発症を予防することが重要とされる。
2型糖尿病の多くは、遺伝的要因に、食生活の乱れや運動不足などの生活習慣が加わって発症する。近年、複数の研究において、ヨーグルトの摂取が2型糖尿病の発症を減少させることが報告されている(Adv Nutr. 2022 Dec 22;13(6):2165-2179.)。そこで、ヨーグルトの摂取量を適量まで増やすことの医療費に及ぼす影響を、シミュレーション※1により検証した。
※1 シミュレーションの限界について:シミュレーションによって試算される医療経済効果は、ヨーグルト摂取量の増加に関連する2型糖尿病のリスクの幅に応じて異なる可能性がある。感度分析の結果から、ヨーグルト摂取量の増加に関連する2型糖尿病のリスクの幅が、シミュレーションにおける不確実性の最大の要因であることが示された。この不確実性により、試算される医療経済効果は1日160g摂取の場合で約660億円~約2,130億円、1日80g摂取の場合で約230~約800億円の幅がある。また、本研究ではシミュレーションに必要なデータの不足から、加糖や無糖などヨーグルトの種類を考慮に入れなかった。ヨーグルトの種類によっては、2型糖尿病のリスクに影響を与える可能性がある。
研究の内容:「食事バランスガイド」の適量まで増やすと糖尿病医療費が1,440億円減る
令和元年「国民健康・栄養調査」によると、ヨーグルトを含む発酵乳・乳酸菌飲料の平均摂取量は、40~79歳で24.5~51.4g/日にとどまっている。その一方で、「食事バランスガイド」では、1日に「2つ分」の牛乳・乳製品の摂取が適量とされており、ヨーグルトで牛乳・乳製品の適量「2つ分」を満たすには160gの摂取が必要。
本研究では、40~79歳の日本人のデータを用いて、ヨーグルトの1日の摂取量を食事バランスガイドで適量とされている牛乳・乳製品の量(ヨーグルト160gに相当)、あるいはその半分量(ヨーグルト80gに相当)まで増やした場合の2型糖尿病に対する医療経済効果を、マルコフモデル※2を用いてシミュレーションした。なお、本研究は個人を対象にした介入研究ではない。
※2 マルコフモデル:疾病と医療費のシミュレーションなど、医療経済効果の試算に用いられる手法。
その結果、160g/日までヨーグルトの摂取量を増やすと、10年間で2型糖尿病の発症が16.1%減少する可能性があり、糖尿病関連の医療費が2.4%(約1,440億円)減少する可能性が示唆された。また、80g/日までヨーグルトの摂取量を増やすと、10年間で2型糖尿病の発症が5.9%減少する可能性があり、糖尿病関連の医療費が0.9%(約520億円)減少する可能性が示唆された。
以上より著者らは、「健康的な食習慣の一部としてヨーグルトをとり入れることは望ましいと考えられる。しかしながら、ヨーグルトの長期的な過剰摂取は、栄養摂取の偏りを生じる恐れがある」との留意点を挙げ、「推奨するものではない」としている。
 
プレスリリース
シミュレーションによりヨーグルトの適量摂取に関連する2型糖尿病と医療費の変化を試算(国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所)
文献情報
原題のタイトルは、「The Cost-Effectiveness of Increased Yogurt Intake in Type 2 Diabetes in Japan」。〔Nutrients. 2025 Jul 9;17(14):2278〕
原文はこちら(MDPI)


 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
  



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