スポーツ庁「令和5年度体力・運動能力調査」
2.過去60回分のデータを活用した分析結果
60回目を迎えたスポーツ庁「体力・運動能力調査(令和5年度)」の結果を2回に分けて紹介している。第2回目は、60回分のデータを活用して分析された結果を紹介する。
三世代間における体力・運動能力の比較・分析
60回分のデータを活用して、昭和39(1964)年度、平成5(1993)年度、令和5(2023)年度時における10歳の握力、50m走、ボール投げ、反復横とびに加えて身長・体重を取り上げ、それぞれの体力・運動能力について比較・分析した(図1)。三世代の現在(令和5年度時点)の年齢は、それぞれ69歳(昭和39年の10歳)、40歳(平成5年の10歳)、10歳である。
- 握力については、男女どちらも平成5年度の10歳が最も高い値を示している。また、男子では昭和39年度と令和5年度の結果はほぼ同じ値となっており、女子では、昭和39年度よりも令和5年度の方が高くなっている。
- 50m走については、男女ともに平成5年度の10歳が最も高い値(小さな数値)を示しており、昭和39年度と令和5年度の結果は男女ともほぼ同じ値となっている。
- ボール投げについては、男子で昭和39年度の10歳が最も高い値を示しており、平成5年度でおよそ3m低く、令和5年度は平成5年度と比べてさらに5m程度低い値となっている。女子では、平成5年度が最も高い値を示しているものの、昭和39年度とほぼ同じ値となっており、令和5年度が最も低い値となっている。
- 反復横とびについては、男女ともに令和5年度の10歳が最も高い値を示しており、次いで平成5年度、昭和39年度の順になっている。
- 身長については、男女ともに令和5年度の10歳が最も高い値を示しており、次いで平成5年度、昭和39年度の順になっている、
- 体重については、男子では平成5年度の10歳が最も高い値を示しているものの、令和5年度とほぼ同じ値となっており、昭和39年度が最も低い値となっている。女子では令和5年度の10歳が最も高い値を示しているものの、平成5年度とほぼ同じ値となっており、昭和39年度が最も低い値になっている。
図1 10歳の握力、50m走、ボール投げ、反復横とび、身長・体重の三世代比較
新体力テスト合計点の年次比較
各年代の合計点を平成10年度~令和5年度(26年間)で比較すると、令和5年度の結果は、男子では、35~39歳が第1位となった(表1)。また、75~79歳が第3位、65~69歳が第7位、25~29歳と55~59歳が第9位と比較的高い順位となった。一方で、45~49歳が第24位と低い順位となった。女子では、75~79歳が第4位となった(表2)。また、55~59歳が第6位、25~29歳が第8位、65~69歳が第9位と比較的高い順位となった。一方で、35~39歳と45~49歳が第24位と低い順位となった。
表1 【男子】新体力テスト合計点の平成10年度~令和5年度の数値と順位
表2 【女子】新体力テスト合計点の平成10年度~令和5年度の数値と順位
各年代における体力合計点と運動・スポーツ実施率の年次変化
平成10年度、平成22年度、令和5年度の3時点で、各年代における体力合計点と運動・スポーツ実施率を比較した。
(1)各年代における体力合計点の年次変化
図2は、各年代の体力合計点について、平成10年度、平成22年度、令和5年度調査の結果を比較したグラフである。
- 男女ともに、12~19歳と65~79歳において、平成10年度よりも平成22年度、令和5年度が高くなっている。
- 男子において、20~64歳では各年次に大きな差はないが、50歳以降では令和5年度が若干高くなっている。
- 女子において、20~64歳では大きな差はないが、30~40歳代で令和5年度が若干低くなっている一方、55歳以降で令和5年度が若干高くなっている。
図2-1 【男子】各年代における体力合計点の年次変化
図2-2 【女子】各年代における体力合計点の年次変化
(2)各年代における運動・スポーツ実施率の年次変化
図3は、各年代の運動・スポーツ実施状況において「週1日以上」と回答した者の割合を、平成10年度、平成22年度、令和5年度で比較したグラフである。
- 男子は、20~64歳と65~79歳において、高い方からおおよそ令和5年度、平成22年度、平成10年度の順番となっている。
- 女子は、18歳以下において、平成22年度よりも令和5年度が高いものの、20~64歳ではおおよそ一番低い結果となった。特に30~49歳の令和5年度の低下は顕著である。
- 第3期スポーツ基本計画(令和4~8年度)では、「成人の週1回以上のスポーツ実施率が70%になること」を目標としている。令和5年度の結果をみると、男子では20~64歳において、おおよそ50~60%と目標に届いていないが、65~79歳においては、おおよそ70~80%と目標を達成している。女子では20~64歳において、おおよそ30~50%と目標と大きな差があり、65~79歳においてもおおよそ50~60%と目標に届いていない。
図3-1 【男子】運動・スポーツ実施状況が「週1日以上」と回答した者の割合
図3-2 【女子】運動・スポーツ実施状況が「週1日以上」と回答した者の割合
図4は、各年代の運動・スポーツ実施状況において「しない」と回答した者の割合を、平成10年度、平成22年度、令和5年度で比較したグラフである。
- 男子では、各年次においてあまり大きな違いはみられなかった。
- 女子では、特に12~19歳は高い方から平成22年度、令和5年度、平成10年度の順番となり、65~79歳では、高い方から平成10年度、平成22年度、令和5年度となった。
- 女子では、20~40歳代において、令和5年度が顕著に高くなっており、逆に55歳以上は令和5年度が低くなっている。
図4-1 【男子】運動・スポーツ実施状況が「しない」と回答した者の割合
図4-1 【女子】運動・スポーツ実施状況が「しない」と回答した者の割合
関連情報(詳細なデータはこちら)
令和5年度体力・運動能力調査の結果について(スポーツ庁)
令和5年度体力・運動能力調査結果の概要及び報告書について(スポーツ庁)
スポーツ庁「体力・運動能力調査」アーカイブ
平成30年度(2018年度)
1.元気な高齢者が増えている!?
2.10代女性の運動習慣に明らかな差
3.ストレス解消、学力向上、達成意欲...スポーツのさまざまな効果と可能性
令和元年度(2019年度)
1.小学生男子の体力が過去最低
2.小中学生体力低下の原因は?
令和元年度(2019年度)
1.調査概要と加齢に伴う運動能力の変化
2.年齢別に見る体力・運動能力の年次推移
3.体力・運動能力を前回の東京五輪開催時と比較
4.幼児期の外遊びと小学生の運動・体力
令和2年度(2020年度)
新型コロナの影響か?「令和2年度 体力・運動能力調査」は、わずかに低下傾向
令和3年度(2021年度)
1.小中学生の体力が低下しているのは新型コロナの影響か?
2.運動時間が減りスクリーンタイムの増加が顕著
令和3年度(2021年度)
①体力・運動能力の加齢に伴う変化
②青少年6~19歳の体力・運動能力
③成年20〜64歳と高齢者65~79歳の体力・運動能力
④10年間の調査結果の概観
令和4年度(2022年度)
①子どもの体力が3年連続低下
②中学女子以外は肥満の割合が過去最高
③体育が楽しい中学生の割合が過去最高
令和4年度(2022年度)
①体力・運動能力の加齢に伴う変化(全年齢)
②6~19歳の体力・運動能力
③20~79歳の体力・運動能力
④運動・スポーツ実施状況と体力、健康状態、生活充実度などとの関係性