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料理の分量を手で測る「手ばかり」の有用性を科学的に検証 日本人1,081人・1万2,000食を調査 東京大学

自分の手のひらや握りこぶしなどを使って測る方法「手ばかり」で測った食品の量は、実際に計測した重量と中程度から強度の相関関係があることがわかった。東京大学の研究グループが、日本人成人1,081人から得られた1万2,148食分の食事データを解析して明らかにしたもので、「Appetite」に論文が掲載され、プレスリリースが発表された。手ばかりをもとに、実際の食品摂取量を推定する予測式も提案されている。著者らによると、手ばかりは多くの国で活用されているが、実際の食品重量とどの程度関連するのかはほとんど検証されておらず、有用性を検証したのは本研究が初めてだという。

研究の背景:世界各国で手ばかりが利用されているが、精度は未検証だった

「手ばかり」とは、自分の手のひらや握りこぶしなどを使って食品の量を測る方法。手ばかりは、これまで多くの国の栄養指導や栄養教育のキャンペーンにおいて、適正な食品の量の目安を示すために活用されてきた。食品の量を示す手段には、ほかにも食品の模型(フードモデル)や写真などがあるが、手ばかりは特別な道具を必要とせず、シンプルでわかりやすいという利点がある。一方で、手ばかりを基に推定された食品の量が、実際の食品重量とどのように関連するのかについては、これまで十分な科学的検証が行われていなかった。

そこで本研究では一般の成人を対象に、日常的な食事の中で手ばかりで申告された食品の量と実測された重量との関連を明らかにすることを目的とした。また、将来的に手ばかりを食事調査へ応用することを見据え、手ばかりで申告された量から食品の摂取重量を推定するための予測式(回帰モデル)も作成した。

研究の方法:千人以上の日本人、1万2千食のデータを解析

本研究では、20~69歳の日本人男女1,081人に、4日間にわたって食事内容を記録してもらった。参加者には、朝・昼・夕の食事ごとに、実際に食べた食品の重さをキッチンスケールで量って記録してもらうと同時に、手ばかりを使って、食べた量(見た目のボリューム)を自分の手を基準に表現してもらった。具体的には、ごはん・パン・めん類および果物の量については「こぶし●個分」、肉・魚・卵・豆類などのたんぱく質を多く含む食品の量は「手のひら●枚分」、野菜・海藻・きのこの量は「手のひら●杯分」の形で記録してもらった。

このようにして得られた合計1万2,148食分のデータを基に、手ばかりで申告された手のひらやこぶしの数と、実際に量った重さとの関連を分析した。また、参加者をランダムに半分に分け、片方のデータを用いて、申告された手のひらやこぶしの数と、参加者の年齢・性別・身長・体重を基に、食品の摂取量を予測するための予測式を作成した。その後、もう片方のデータを用いて、予測式の精度を評価した。

研究の結果:主食はr=0.59、肉・魚は0.72、野菜は0.76

解析の結果、手ばかりで申告された手のひらやこぶしの数と、1食あたりの摂取量(g)との間には、中程度から強度の相関関係が認められた(図1)。食品群別のスピアマンの相関係数は、ごはん・パン・めん類で0.59、果物で0.85、肉・魚・卵・豆類で0.72、野菜・海藻・きのこで0.76だった。

図1 手ばかりで申告された手のひらやこぶしの数と、1食当たりの摂取重量との関連

手ばかりで申告された手のひらやこぶしの数と、1食当たりの摂取重量との関連

合計1万2,148食分の食事データを使用した。図中では、●が男性、+が女性のデータを示す。スピアマンの相関係数(r)を、各図の中に示す。
(出典:東京大学)

図2は、各食品群について、1人あたりの「こぶしや手のひら1つ分」の平均重量を示したもの。この「こぶしや手のひら1つ分の重さ」は、個人間でばらつきが大きく、とくに野菜・海藻・きのこでばらつきが顕著だった。

図2 こぶしや手のひら1つ分あたりの食品重量(g)の個人ごとの平均値

こぶしや手のひら1つ分あたりの食品重量(g)の個人ごとの平均値

ごはん・パン・めん類と果物のそれぞれの量を「こぶし●個分」、肉・魚・卵・豆類などのたんぱく質を多く含む食品の量を「手のひら●枚分」、野菜・海藻・きのこの量を「手のひら●杯分」の形で参加者に記録してもらった。図2は、各参加者について、食事1回あたりの摂取量(g)を申告された手の数で割り、その平均を算出したものである(各食品群を含む食事のみ対象)。図2では、10%(下ひげ)、25%(箱の下端)、50%(中央値)、75%(箱の上端)、90%(上ひげ)の値を示す。
(出典:東京大学)

男性では、果物のこぶし1つ分の重量が最も小さく(中央値117g)、野菜・海藻・きのこの手のひら1杯分の重量が最も大きい(中央値142g)という結果だった。一方、女性では、果物のこぶし1つ分の重量が最も小さく(中央値107g)、肉・魚・卵・豆類の手のひら1枚分の重量が最も大きい(中央値126g)という傾向が見られた。また、すべての食品群において、男性の「こぶしや手のひら1つ分の重さ」は女性よりも統計学的に有意に大きいことがわかった。

予測モデルに関しては、推定値と実測値の間にやや広いばらつき(誤差幅)があるものの、平均値の差はどの食品群でも-2.5~-0.3gと小さいことがわかった。また、相関係数も0.61〜0.75であり、中程度から強度の相関が示された。

以上の結果から、手ばかりで測った食品の量は、実際の重量と中程度から強度の関連があることがわかった。また、手ばかりを基にした申告値や個人の特性(年齢・性別など)に関する情報を用いることで、食品摂取量の集団平均や摂取量の多い順・少ない順といった順位付けの推定にも活用できる可能性が示された。

一方で、手のひら1つ分に相当する食品の重さには個人差が大きく、手ばかりを使って食べる量の目安を伝える場合、人によっては多すぎたり少なすぎたりする可能性が示された。今後は、より多様な食品群や、さまざまな国や地域の人々を対象にした検討を進め、手ばかりのさらなる活用可能性を探ることが求められる。

プレスリリース

「手ばかり」はどれくらい正確?──食品の量を手で測る方法を科学的に検証──(東京大学)

文献情報

原題のタイトルは、「Is the hand scale an appropriate tool for guiding and estimating food portions? An evaluation among free-living adults」。〔Appetite. 2025 Jul 14:108232〕
原文はこちら(Elsevier)

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