7月から関東甲信地方で「熱中症警戒アラート」試験的運用開始 環境省と気象庁
環境省と気象庁は6月19日、今年7月1日~10月28日にかけて、関東甲信地方の1都8県で「熱中症警戒アラート」を試行として実施することを発表した。スポーツ大会の中止や延期勧奨もアラートに含まれている。
近年、熱中症搬送者数が著しい増加傾向にあり、国民生活に大きな影響を及ぼしている。これまで気象庁の高温注意情報や環境省の暑さ指数(WBGT)※等によって注意を呼びかけてきているが、熱中症による死亡者数や救急搬送者数は引き続き多い状態が続いていることから、新たな情報提供の手段が必要とされ、環境省と気象庁は連携し有識者による「熱中症予防対策に資する効果的な情報発信に関する検討会」を設け、具体的な方法について検討してきた。
※暑さ指数(WBGT):人間の熱バランスに影響の大きい、気温、湿度、輻射熱の三つ(1:7:2の比)を取り入れた暑さの厳しさを示す指標。
今年度は1都8県で試行、来年度から全国で実施
これまでの検討を踏まえ、熱中症の危険性が極めて高い暑熱環境が予測される際に、環境省・気象庁で新たに暑さへの「気づき」を呼びかけ国民の熱中症予防行動を効果的に促すための情報提供を開始することとした。
今年度は関東甲信地方の1都8県(東京、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、神奈川、山梨、長野)で、先行的に「熱中症警戒アラート」を試行し、今秋以降に有識者検討会において今夏の検証を行い、その結果を踏まえ来年度からは全国で、高温注意情報に代わる新たな情報発信として、本格運用する予定。
アラートの基準や発表方法
夕方5時と早朝5時にアラート
アラートは、各都県内の暑さ指数予測地点のいずれかにおいて、翌日の日最高暑さ指数が33℃以上と予想される場合、 17 時頃に「第1号」として発表され、当日の5時頃に「第2号」を発表する。当日になってから日最高暑さ指数が 33℃以上と予測された都県は、当日5時頃に「第1号」のアラートを発表する。なお、前日17時頃にアラートを発表した都県については、当日の予測が 33℃未満に低下した場合においても、当日5時頃に「第2号」を発表する。
アラートの内容は以下のとおり。
- 熱中症への注意を促す呼びかけ
- 観測地点ごとの日最高暑さ指数(WBGT)
- 予想最高気温および前日の最高気温観測値
- 熱中症予防において特に気をつけること
スポーツ大会の中止や延期勧奨も
アラートの伝達方法は、気象庁の防災情報提供システムを通じて地方公共団体や報道機関等に対して発表するほか、同時に気象庁のウェブサイトおよび環境省熱中症予防情報サイトに掲載する。
具体的には、防災無線、訪問を通じての警戒や屋内待機勧奨、スポーツ等のイベントの中止・延期勧奨などがなされる。

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