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暑さ+睡眠不足+体力消耗で間食摂取が増える? 消防士の山火事消火シミュレーションで検討

東京2020は1年延期になったが、開催される季節は変わらない。となると、酷暑への対策は引き続き入念に進めておく必要がある。

スポーツとは異なる領域の話題だが、山火事の消火活動にあたる消防士の間食消費行動をシミュレーションした興味深い研究が、オーストラリアから報告された。山火事の消火活動は通常、連日続き、体力を消耗するうえ、環境温度は高く、睡眠時間は制限される。そのような過酷な条件をさまざまに再現し、間食行動の相違を検討している。結果は、条件が変わっても間食の摂食量は変わらず、摂食のタイミングが変わるというものだ。

暑さ+睡眠不足+体力消耗で間食摂取が増える? 消防士の山火事消火シミュレーションで検討

山火事消火の過酷な状況を再現

酷暑(30℃以上)での身体活動は、コルチゾールの上昇で把握される急性ストレス反応、および急性炎症反応を惹起する。ただし消防士を対象とした多くの研究から、そのような環境下でも消防士の身体的パフォーマンスは影響されないと報告されている。その一方で、認知能力は低下するとの報告があり、危険な作業への正しい判断が損なわれる恐れもある。山火事の消化作業は連日にわたり、酷暑と睡眠時間制限が重なるため、認知能力への影響がより大きくなる可能性もある。

この研究は、山火事の消火にあたる消防士の間食欲求を把握し、最適な供給につなげるための基礎的データを収集する目的で実施された。

現役消防士を4群に分類

検討対象は、オーストラリア南部の州の消防署で働く、ボランティアまたは有給の消防士66名(女性10名を含む)。南部の州に限定した理由は、気温格差条件を再現する必要から、平均気温の高い北部はそぐわないため。18歳未満、睡眠障害のある者、けがや病気、妊娠中の者、運動制限のある者などは除外した。

年齢、性別、BMIに差が生じないよう配慮したうえで、全体を無作為に以下の4群に分類した。

  • 対照群(control;CON)18名:日中気温19度、夜間気温18度、睡眠時間8時間
  • 睡眠制限群(Sleep Restriction;SR)16名:日中気温19度、夜間気温18度、睡眠時間4時間
  • 酷暑環境群(HOT)18名:日中気温33度、夜間気温23度、睡眠時間8時間
  • 睡眠制限+酷暑環境群(HOT+SR)14名:日中気温33度、夜間気温23度、睡眠時間4時間

なお、各群の年齢は36~41歳、BMIは27~30の間に分布し、統計的有意差はなかった。

シミュレーションは3~5名ごとのグループ単位で、2012年3月から8月(秋から冬で温暖から涼しい季節)の3日間にわたって行った。シミュレーション中、対象者はシャワーとトイレ以外、研究施設の上記の環境で過ごした。服装は消火活動中と同一とし、ブーツやグローブ、ヘルメットといった総重量5kgの装具を装着した。また、消防タスクが行われ、ホースの運搬やセット、放水姿勢の維持などを1日あたり6~10時間実施した。

間食の支給と摂食量、空腹感などの調査

シミュレーション中、食事以外に毎日3,085kJ(740kcal)のスナックパックを支給し、休憩時間に自由に摂食できることとした。また、空腹感と満足度などを3日間で13回、ビジュアルアナログスケール(VAS)を用いて把握した。

間食の摂取エネルギー量に群間差はないが、摂食した時間に相違

結果は冒頭に述べたように、摂取エネルギー量に有意な群間差はなかった。炭水化物、脂質、蛋白質の摂取量や、空腹感、満足度にも群間差はみられなかった。

ただし、昼間の活動時間を、8:00~10:00(ブロック1)、10:00~12:00(ブロック2)、12:30~14:30(ブロック3)、14:30~16:30(ブロック4)、16:30~18:30(ブロック5)の5ブロックに分けて検討した結果、一部に摂取エネルギー量の有意な群間差が認められた。

まず、ブロック1では睡眠制限(SR)群は対照(CON)群に比し、摂取エネルギー量が少なかった。またSR群はブロック3では、他の3群すべて(CON群、HOT群、HOT+SR群)より摂取エネルギー量が少なかった。ブロック4ではHOT群の摂取エネルギー量が、SR群およびHOT+SR群より多かった。

その他、栄養素別の解析でも、一部に有意差が認められた。

これらの結果からの考察として、著者らは、酷暑条件と睡眠制限の相加効果による摂食量への影響が認められ、その原因はエネルギー消費の増大、身体活動による食欲抑制など、複数の機序を挙げている。また、今後の研究に向け、睡眠制限や酷暑環境が及ぼす血糖やコレステロール、ホルモンレベルなど代謝といった生理学的反応の理解が必要となるだろうと述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「Hot, Tired and Hungry: The Snacking Behaviour and Food Cravings of Firefighters during Multi-Day Simulated Wildfire Suppression」。〔Nutrients. 2020 Apr 21;12(4)〕
原文はこちら(MDPI)

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