スポーツ栄養WEB 栄養で元気になる!

SNDJ志保子塾2024 ビジネスパーソンのためのスポーツ栄養セミナー
一般社団法人日本スポーツ栄養協会 SNDJ公式情報サイト
ニュース・トピックス

プロバイオティクスが女性の鉄欠乏アスリートに及ぼす影響は?

鉄は、酸素の運搬やミトコンドリア代謝に不可欠な微量栄養素。ところがアスリートでは鉄貯蔵量の低下が見られることが少なくない。とくに女性に多く、しばしば経口鉄サプリメントが利用されている。ただし、経口鉄サプリメントは摂取しても一部しか吸収されないため、摂取量を増やさなければならないことがあって、その場合は副作用等が問題になる。

プロバイオティクスが女性の鉄欠乏アスリートに及ぼす影響は?

プロバイオティクスのラクトバチルスプランタラム299v(Lp299)は腸管での鉄吸収を増加させることが報告されている。本報告は、Lp299vの鉄補充効果やスポーツパフォーマンスへの影響を二重盲検プラセボ対照試験で検討した結果。

無作為化プラセボ対照二重盲検試験で12週間の介入

スウェーデンのスポーツクラブを通じて募集された365人のアスリートがスクリーニングに参加した。選択基準は、鉄貯蔵量が低下しているが(フェリチン30μg/L未満)貧血には該当しない(女性はヘモグロビン120g/L以上、男性では130g/L以上)、競技スポーツを行っている16〜40歳の男女。週に5時間以上のトレーニングを実施しており、高感度CRPは5mg/L以下の者。介入開始前4週間に鉄やプロバイオティクス製品、アスコルビン酸などを摂取した者、食事やトレーニング内容を大幅に変更した者(研究者の判断による)、妊娠中または妊娠を計画している者などは除外した。

この基準に基づき53名の女性が選択された。平均年齢は22歳、平均トレーニング時間は8時間/週。無作為に2群に分け、1群にはLp299が100億個含まれているフマル酸第一鉄20mg(以下、LpFeと省略)、他の1群にはフマル酸第一鉄20mg(以下、Fe群と省略)を摂取させ、12週間介入。ベースライン時と4、8、12週時点で、鉄貯蔵量を表すフェリチン、炎症マーカーを測定し、エルゴメーターによるパフォーマンスを評価したほか、気分状態を比較検討した。

介入期間中、被験者には他のプロバイオティクス製品、鉄またはアスコルビン酸のサプリメントの摂取を禁止し、栄養補助食品の摂取量は変更せず、食生活の大幅な変更も避けるよう指示した。また、献血や輸血は禁止した。

ベースライン時点の年齢(LpFe群21.6±6.0 vs Fe群22.3±3.5歳)、BMI(22.9 ±1.8vs 23.3±2.5)、トレーニング時間(7.6±2.0 vs 8.2±2.0時間/週)、VO2max(2.8±0.3 vs 2.9±0.3mL/kg/分)に、有意な群間差はなかった。

Lp群でフェリチンが迅速に上昇する可能性

介入期間中に14名が脱落し、最終的にLpFe群21名、Fe群18名のデータを解析対象とした。

ベースラインから4週後までのフェリチン変化量に有意に近い群間差

フェリチンレベルの変動をみると、LpFe群は介入前19.5µg/Lから介入後43.0µg/L(p<0.001)、Fe群は19.8µg/Lから37.8µg/Lへと、ともに有意に上昇した(両群ともp<0.001)が、介入効果の群間差は認められなかった。ただし、4週経過時点までの上昇幅は、非有意ながらLpFe群のほうが大きい傾向が認められた(p=0.056)。

ベースライン時のフェリチン値が高いサブグループでは4週後に有意差

次に、ベースライン時のフェリチン値20µg/Lで層別化し検討すると、20µg/Lを上回るサブグループでは4週経過時点において、LpFe群は15.4µg/L、Fe群は6.1µg/Lであり、有意な群間差が認められた(p=0.0361)。8週後、12週後では有意差がなく、またベースラインのフェリチン値が20µg/L未満のサブグループでは、介入期間を通じて有意差は認められなかった。

気分スコアの「活力」がLpFe群で上昇

CRP、IL-6、TNF-αなどの炎症マーカーは両群ともに低値であり有意差はなかった。エルゴメーターを用いて評価した心拍数、VO2max等も群間差はなかった。

アンケートで把握した気分状態(Profile of Mood States;POMS)スコアのうち、活力に関しては、LpFe群で介入前の58点から介入後の61点へと有意に上昇した(p=0.044)。一方、Fe群は有意な変化がみられなかった。

上気道感染症に有意差

介入期間中に、LpFe群32件、Fe群19件、合計51件の有害事象が報告された。有害事象に基づく脱落がLpFe群で2件発生した。その他、上気道感染症の発生率に有意差がみられ、LpFe群で少なかった(p=0.0332)。

以上一連の結果から、著者らは「20mgの鉄を含むLp299vを摂取すると、鉄のみの場合と比較し鉄貯蔵が迅速に改善される可能性が示された」とまとめている。なお、本研究は、Lp299v関連企業の資金提供により実施され、著者のうち数名はそれら企業およびその他の栄養補助食品企業とのCOI(利益相反)関係を開示している。

文献情報

原題のタイトルは、「The Effect of Lactobacillus plantarum 299v on Iron Status and Physical Performance in Female Iron-Deficient Athletes: A Randomized Controlled Trial」。〔Nutrients. 2020 Apr 30;12(5)〕
原文はこちら(MDPI)

この記事のURLとタイトルをコピーする
志保子塾2024後期「ビジネスパーソンのためのスポーツ栄養セミナー」

関連記事

スポーツ栄養Web編集部
facebook
Twitter
LINE
ニュース・トピックス
SNDJクラブ会員登録
SNDJクラブ会員登録

スポーツ栄養の情報を得たい方、関心のある方はどなたでも無料でご登録いただけます。下記よりご登録ください!

SNDJメンバー登録
SNDJメンバー登録

公認スポーツ栄養士・管理栄養士・栄養士向けのスキルアップセミナーや交流会の開催、専門情報の共有、お仕事相談などを行います。下記よりご登録ください!

元気”いなり”プロジェクト
元気”いなり”プロジェクト
おすすめ記事
スポーツ栄養・栄養サポート関連書籍のデータベース
セミナー・イベント情報
このページのトップへ