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スポーツ中の暑さ対策に関する考察・見解のまとめ オーストラリアからの報告

スポーツ中の暑さ対策に関する見解をまとめた、南オーストラリア大学やシドニー大学の研究者らの論文が「BMJ open sport & exercise medicine」に掲載された。4つの環境関連パラメーターと、2つの個人パラメーターが、熱中症対策において重要だとしている。

スポーツ中の暑さ対策に関する考察・見解のまとめ オーストラリアからの報告

何を、どのように測定すべきか

環境関連の4つのパラメーター

熱の伝達と身体への蓄熱に影響を与える環境関連パラメーターは4つある。気温と湿度、風速、および輻射熱だ。かつては気温のみがスポーツ時の熱中症対策として重視されていた。「今日は暑すぎるのではないか?」という単純な質問の答が、長い間、信頼されていた時期がある。

この点について近年は、そのような考え方は問題であるとの認識が高まっている。ただし、環境関連の4つのパラメーターのすべてが考慮されることはいまだに少ない。とくに風速と輻射熱(主に太陽光による)は無視されることが多い。風速は熱放散に影響し、風速が遅い場合、基本的にはスポーツ中の熱放散が抑制される。

気温は太陽光が直接当たらない条件で測定される数値であるため、その数値を参考にすべきか否かは、スポーツが屋内で行われるか否かと密接に関連する。実際に、人体の熱収支への影響の大きい湿度、輻射熱、気温を考慮した指標である湿球黒球温度(暑さ指数)は、気温より15℃も高くなることがある。

2つの個人パラメーター

蓄熱量に寄与する個人パラメーターは、活動と衣服の2つだ。この2つは、公共の熱中症対策のアナウンスでも触れられないことが少なくない。人体は運動中の熱放散の効率が良いとは言えず、また、スポーツウエアやユニホームの断熱性、通気性の違いも、運動中の熱放散に影響を与える。

これらすべての要因を含めてリスクを評価するには高度に専門化されたスキルが求められる。

組織としての対策

スポーツのチームや団体が、組織として環境ストレスを評価するには2つ方法がある。1つは公開されている気象データを利用する方法、もう1つは機器を使用して独自に評価する手法だ。

前者はコストがかからず、最近はウェブサイトにも情報が公開されていることが多いため、従来以上にアクセスしやすい。ただし、公開されているデータの使用に際しては、イベントに最も近い気象観測所の場所やその他の条件を精査しておかなければならない。通常、気象観測所のデータは、グランドやコート上の熱ストレスを過小評価しており、またイベント会場の特異性(構造など)は考慮に入れていない。

後者は、スポーツを実施する環境条件に最もよく合致した評価が可能だが、測定機器の信頼性を考慮する必要がある。例えば、繁用されているポータブルタイプの湿球温度計は、標準サイズより小さいため、数値の読み取りに注意が求められる。

リスク低下戦略

長い間、熱中症のリスク抑制のゴールドスタンダード戦略は、熱への順応と適切な水分補給と考えられてきた。しかし、体系的な熱順応訓練は多くのアスリートにとって実践が容易でないことに留意しなければならない。また脱水を来し得るスポーツ活動では、アスリートは自由に水分を摂取するのではなく、エビデンスに基づいた水分補給計画を立てる必要がある。

現在のスポーツ関連熱中症対策は、おそらく熱順応と水分補給に重きを置いているがために、冷却という戦略をほとんど用いていないとの指摘もある。イベント内での冷却戦略として、冷水や氷スラリー(シャーベット)の摂取、冷却衣やタオル、皮膚が湿った状態で扇風機に当たる、そしてゲーム途中に休憩時間を挟む、などが挙げられる。

ただし企画立案者は、これらの冷却戦略が多くの場合、個々の環境固有の条件次第であることを認識しておかなければならない。例えば冷水や氷スラリーを摂取したとしても、あらゆる環境下で確実な冷却効果が得られるわけでなく、発汗と放散が低下することがある。同様に、扇風機単体では、極めて高温で乾燥した環境下では十分な冷却効果を得られないことがある。

スポーツにかかわりのある主要関係者が協力し、熱中症対策の実施と遵守に努めることが重要である。昨年報告された「The impact of climate change on cricket(気候変動がクリケットに与える影響)」は、これらの方法論と実際的な考慮事項をまとめて提供した1つの事例として挙げられる。

文献情報

原題のタイトルは、「Considerations for the development of extreme heat policies in sport and exercise」。〔BMJ Open Sport Exerc Med. 2020 Apr 1;6(1):e000774〕
原文はこちら(BMJ)

The impact of climate change on cricket(気候変動がクリケットに与える影響)

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