世界アンチドーピング機構が新型コロナ後のスポーツ再開を見据えたガイダンスを発表
世界アンチドーピング機構(World Anti-Doping Agency;WADA)は6日、各アンチドーピング関連団体(Anti-Doping Organization;ADO)向けの新たなガイダンスを発表した。WADAは3月20日に、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックが拡大局面にある中で、東京2020に向けてドーピングテストを安全に進めるためのガイダンスを公表していた。一方、今回発表されたものは、COVID-19パンデミックが一部の国や地域で収束しつつあることに対応し、アンチドーピング活動を中止していたADOに対し、活動を再開することも視野に入れた内容も含めて改訂されている。
最新版ガイダンスの主な内容は以下の3項目。
- ドーピングテストを再開する準備をする際に、ADOが検討する必要のある行動とステップ
- COVID-19対応のため、サンプル収集手順時に追加する必要のある措置の例(下記PDFファイルのAnnex A)および「COVID-19アスリートアンケート」の例(下記PDFファイルのAnnex C)
- 個人用保護具の使用に関する補足情報と推奨事項(下記PDFファイルのAnnex B)。
現状においてはほぼすべての国で競技が行われていないため、ドーピングテストは競技会場ではなく、アスリートの個人宅に訪問し実施されている。本ガイダンスの内容も、その現状にそったもので、可能であればモバイルの使用の検討を促している。
また、ドーピングリスクが高いアスリートを除き、血液採取は省略し尿サンプルのみを検体とすることを提案。検体採取時には、使い捨てのグローブ、およびフェイスマスクを着用し、また手指洗浄の徹底を呼び掛けている。
ドーピングテスト再開に際しても、アスリートの感染リスクを避けるため、検体採取担当者を限定することとしている。具体的には、COVID-19陽性者に接触した医療従事者、感染リスクの高い人との同居者、感染者率が高い"ホットスポット"に滞在していた人などは、検体採取担当者として適切でないとしている。
仮に検体採取担当者がCOVID-19に罹患した場合、過去3週間以内にドーピングテストを実施したアスリートにその旨を通知する必要がある。ただし検体採取者の身元は開示されるべきでない。逆にドーピングテストを受けたアスリートがCOVID-19に罹患した場合も、検体採取担当者の所属機関であるADOに知らせる必要がある。
WADAは本ガイダンスのまとめで、「すべてのADOに対し、利用可能なリソースと各国の状況を考慮した上で、WADAのガイダンスやコード、ガイドラインを最大限に活用することを推奨する。各国の保健当局が異なる方法を示すまで、これらの使用を継続すべき」と述べ、「必要に応じてこれらの情報は改訂・更新していく」としている。
関連情報
COVID-19: ADO GUIDANCE FOR RESUMING TESTING(WADA)
市販薬や健康食品にも注意! 飲む前にリスクを確認
現状において、COVID-19以外の病気や怪我になったとしても、医療機関内での感染リスクを考慮すると、すぐに受診することが躊躇される。市販薬でしばらく様子をみようと思うアスリートも多いのではないだろうか。または、健康食品を使って体調を維持しようと考える人もいるだろう。
しかし、市販薬や健康食品もドーピングへの注意が必要だ。総合感冒薬や胃腸薬などにも禁止成分が含まれているものがある。またサプリメントは、とくに海外製品の場合、含まれている成分がすべて表示されているとは限らないため"うっかりドーピング"のリスクがある。信頼のおけるものを使用したほうが良い。
市販薬や健康食品・サプリメントは自己判断で用いずに、薬剤師にドーピングリスクを確認した上で使用することを忘れないようにしたい。
関連情報
『薬剤師のためのアンチ・ドーピングガイドブック 2019年版』について(日本薬剤師会)
薬剤師のためのアンチ・ドーピングガイドブック 2019年版(日本薬剤師会、PDF)
薬剤師用「ドーピング防止のための基礎知識」(北海道薬剤師会、PDF)
日本スポーツ協会「アンチ・ドーピング」(使用可能薬リストなどがダウンロードできる)