厚労省が新型コロナ禍の「新しい生活様式」における熱中症予防のポイントを公開
厚生労働省はこのほど、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染抑止のための「新しい生活様式」における熱中症予防行動のポイントを公表した。マスクの着用方法、エアコンの使用、涼しい場所への移動、日頃の健康管理の4項目からなり、屋外では条件次第でマスクを外すことも推奨している。
新型コロナウイルスを想定した「新しい生活様式」
まず先に、今回発表された「熱中症予防行動のポイント」の背景にある「新しい生活様式」の内容を改めて簡単に解説すると、「新しい生活様式」は、政府の新型コロナウイルス感染症専門家会議の提言を踏まえ、新型コロナウイルスのリスクを想定したうえでの生活パターンのこと。厚労省ではその生活の具体的なイメージとして、以下のような実践例を示している(抜粋)。
1. 一人ひとりの基本的感染対策
- 感染防止の三つの基本:身体的距離の確保、マスクの着用、手洗い
- 移動に関する感染対策:感染が流行している地域への移動は控える、帰省や旅行は控えめにし出張はやむを得ない場合のみ、誰とどこで会ったかをメモする
2. 日常生活を営むうえでの基本的生活様式
- 外出を控える、密集回避、密接回避、密閉回避、換気、咳エチケット、手洗い、毎朝の体温測定
3. 日常生活の各場面別の生活様式
- 買い物:1人または小人数で出かける、商品の接触を控える、電子決済の利用、通販も利用
- 公共交通機関:混雑時を避ける、会話を控える
- 食事:対面でなく横並びに、会話は控える、大皿を避ける、回し飲みを避ける、屋外で食事、持ち帰りや出前も利用
- 娯楽・スポーツ:公園はすいた時間に、筋トレは自宅で、ジョギングは小人数で、すれ違う時は距離をとる、狭い部屋に長居しない、歌や応援には十分な距離をとるかオンラインで
- 冠婚葬祭:多人数での会食はしない
4. 働き方の新しいスタイル
- テレワークやローテーション勤務、時差通勤、会議はオンライン、対面時にはマスクと換気
熱中症予防行動のポイント
前記の「新しい生活様式」を踏まえて策定された「熱中症予防行動のポイント」は以下のような内容。
1. マスクの着用:ただし、適宜マスクを外す
マスクは飛沫の拡散予防に有効であり、「新しい生活様式」でも基本的な感染対策として掲げられている。ただし、マスク着用により心拍数や呼吸数、血中二酸化炭素濃度、体感温度が上昇するなど、身体に負担がかかることがある。よって高温や多湿といった環境下でのマスク着用は、熱中症のリスクが高くなる恐れがある。
- 屋外で、互いに十分な距離がある場合はマスクを外す
屋外で人と十分な距離(少なくとも2m以上)が確保できる場合には、マスクを外す。 - 喉が渇いていなくても水分摂取
マスクを着用する場合には、強い負荷の作業や運動は避け、喉が渇いていなくてもこまめに水分補給を心がける。 - マスクを外して休憩をとる
周囲の人との距離を十分にとれる場所で、マスクを一時的にはずして休憩することも必要。 - 服装にも配慮
外出時は暑い日や時間帯を避け、涼しい服装を心がける。
2. エアコンの使用:冷房時でも換気が必要
熱中症予防のためにはエアコンの活用が有効。ただし、一般的な家庭用エアコンは、空気を循環させるだけで換気を行っていない。COVID-19対策には、冷房時でも窓開放や換気扇によって換気を行う必要がある。換気により室内温度が高くなりがちなため、エアコンの温度設定を下げるなどの調整を。
3. 涼しい場所への移動
少しでも体調に異変を感じたら、速やかに涼しい場所に移動することが、熱中症予防に有効。その一方、店舗等は店内の人数制限を行うこともあるため、屋内にすぐに入ることができない場合もある。その際は屋外でも日陰や風通しの良い場所に移動する。
4. 日頃の健康管理
「新しい生活様式」では、定時(例えば毎朝)の体温測定、健康チェックを個人に求めている。これらは、熱中症予防にも有効。日ごろから自身の身体を知り、健康管理を充実させる。体調が悪いと感じた時は、無理せずに自宅で静養する。
厚労省では、これらの内容をまとめた「令和2年度の熱中症予防行動リーフレット」のPDFも公開し、使用を勧めている。
関連情報
「新しい生活様式」における熱中症予防行動のポイント(厚生労働省)
新型コロナウイルスを想定した「新しい生活様式」(厚生労働省)
令和2年度の熱中症予防行動リーフレット(厚生労働省、PDF)
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