スポーツ栄養WEB 栄養で元気になる!

SNDJ志保子塾2023 ビジネスパーソンのためのスポーツ栄養セミナー
一般社団法人日本スポーツ栄養協会 SNDJ公式情報サイト
ニュース・トピックス

新型コロナウイルス・ワクチン接種を完了した人への勧告の科学的根拠 米CDCのワクチン情報⑥

2021年03月31日

米国疾病対策センター(Centers for Disease Control and Prevention;CDC)から発信されている、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンに関する情報を数回に分けて紹介している。6回目は第1~5回で紹介してきたワクチン接種後の人たちへの公衆衛生上の勧告についての科学的根拠。

この勧告の科学的根拠では、最初に重要なキーポイントを掲げ、その後、詳しい解説を加えている。本稿でもまずキーポイントを紹介し、その後に要旨をまとめる。

新型コロナウイルス・ワクチン接種を完了した人への勧告の科学的根拠 米CDCのワクチン情報

米国と日本では状況の相違もあり(現時点で使用可能なワクチンの種類など)、CDC発の情報をそのまま国内に適用できるとは限りませんが、参考情報として紹介します。国内の情報については厚生労働省のWebサイトをご参照ください。新型コロナワクチンについて(厚生労働省)

キーポイント

  • 現在米国で認可されているCOVID-19ワクチンは、COVID-19重症化予防に有効
  • 予備的なエビデンスは、現在認可されているCOVID-19ワクチンが、B.1.1.7(英国で最初に同定された変異株)を含むさまざまな株に対して、感染リスクをある程度低下させる可能性があることを示唆している。ただし、B.1.351株(南アフリカで最初に同定された変異株)では、抗体の中和と有効性の低下が観察されている
  • ワクチン接種を完了した人が無症候性感染症にかかる可能性は低く、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を他者へ感染させる可能性が低いことを示唆するエビデンスが増えている。ただし、さらなる調査が進行中である
  • モデリング研究は、マスクの使用や社会的距離の維持などの予防措置が、ワクチン接種が行き渡るまで引き続き重要であることを示唆している。ただし、予防接種を受けた人がリスクの低い活動を再開できるようにすることで、バランスのとれた施策をとるという方法もある
  • ワクチン接種を受けた人については、これまでの感染防止行動の一部を緩和する措置を講じることは、人々のCOVID-19ワクチンの受け入れと接種率を向上させるのに役立つかもしれない
  • ワクチン接種を完了した人のSARS-CoV-2感染リスクは、社会活動による感染が続いている限り、完全に排除することはできない。ワクチンを接種した人がCOVID-19に感染し、それを他者に拡散する可能性がある。ただし、検疫要件を緩和し、社会的孤立を減らすことのメリットは、完全に予防接種を受けた人がCOVID-19に感染したり、ウイルスを他者に感染させたりするリスクを上回る可能性がある
  • 完全に予防接種を受けた人のためのガイダンス(本コーナーでシリーズ1~5として紹介済み)が利用可能。それらの情報は、更新・追加され続けている

COVID-19ワクチンの有効性

動物を用いた研究

アカゲザルを用いた初期のチャレンジ研究(人為的にウイルス感染させる研究)から、無症候性感染を含むSARS-CoV-2感染に対するファイザー/BioNTech、Moderna、ジョンソンエンドジョンソン/ヤンセンのワクチンの保護効果が確認された。ワクチン接種されたマカク(サル)は、ヒト回復期血清の中和抗体を超える中和抗体を産生し、SARS-CoV-2チャレンジ後に臨床兆候をまったく示さないか、最小限の症状のみを示した。さらに、COVID-19ワクチン接種は、上気道および下気道でのウイルス複製を防止または抑制した。

ヒトで有効性を検証した臨床試験

認可されたすべてのCOVID-19ワクチンは、COVID-19に対する有効性(65~95%の範囲)を示した。ワクチンの全体的な有効性は、基礎となる健康状態の有無にかかわらず、さまざまな人種や民族を代表する人において、高齢者と若年成人を含むさまざまな集団にわたって同等だった。ワクチンは、入院を必要とする重症COVID-19に対して高い有効性(89%以上)を示した。ワクチンは、COVID-19関連死に対して高い有効性を示した。

臨床試験では、ワクチン接種群でのCOVID-19関連死は認められなかった。Modernaとヤンセンの試験では、プラセボ群でCOVID-19による死亡が認められた。

予備的データは、ワクチン接種が無症候性感染も抑制する可能性が示唆されている。 Modernaのワクチンの試験では、初回接種を受け2回目の接種を受けるまでの間に、SARS-CoV-2陽性の無症候性感染者の割合は、プラセボ投与群に比較し約3分の1だった(それぞれ0.3%、0.1%)。

実際の有効性

米国、英国、イスラエルからの予備的な分析は、2回投与タイプのmRNAワクチンがSARS-CoV-2感染(症候性および無症候性感染の双方)に対して非常に効果的であることを示している。米国では、mRNA COVID-19ワクチン接種(ファイザー/BioNTechまたはModerna)の有効性はSARS-CoV-2感染に対して89%だった。COVID-19と診断されたワクチン接種を受けた人は、ワクチン接種を受けていない人よりも入院率が60%低かった。

英国の医療従事者においては、ファイザー/BioNTechワクチン接種はSARS-CoV-2感染に対して86%有効だった。複数の基礎疾患を持つ成人を含む80歳以上の英国の成人では、症候性疾患に対するワクチン有効性は85%と推定された。

イスラエルでは、ファイザー/BioNTechワクチンの2回接種は、無症候性のSARS-CoV-2感染、症候性のCOVID-19、およびCOVID-19重症化に対して90~94%の効果が確認された。同国での予備的研究からは、ファイザー/BioNTechワクチン接種者は、ワクチンを接種されていない人よりも、感染時のウイルス量が4分の1であることが示唆されている。ウイルスの量が伝播の主要要因であることが明らかになっているため、この観察結果は感染性の低下を示している可能性がある。

新たなSARS-CoV-2変異株に対するワクチンの効果

懸念されるSARS-CoV-2変異体(B.1.1.7〈英国で最初に報告〉、B.1.351〈南アフリカで最初に報告〉、P.1〈ブラジルで最初に報告〉)にみられる変異は、COVID-19ワクチンに対する耐性を高めるようであり、とくにB.1.351変異体に対する有効性を低下させる可能性が懸念されている。したがって、SARS-CoV-2変異体に対するワクチンの効果の検証は、ワクチン接種を受けた人の継続的な予防措置の必要性を評価する際の重要な考慮事項であり、継続的なモニタリングが必要。

予防接種状況の変化に伴う予防措置の影響

個人およびコミュニティーレベルの予防策は、SARS-CoV-2の伝播を減らすのに役立つことが示されている。これらの措置は、ウイルス伝播を抑制するための戦略の基礎と言える。ただし、物理的な距離の確保、検疫、学校や事業の閉鎖、およびその他の予防措置に関連し、個人的および社会的な経済損失が発生する。

モデリング研究は、マスクの着用や物理的な距離確保などの予防措置の遵守が、ワクチン接種後も引き続き重要であることを示唆している。一方、予備的な研究データは、ワクチン接種率が急速に増加した場合、いくつかの予防措置を段階的に廃止できる可能性があることを示唆している。さらに、他の措置が維持されている限り、ナーシングホーム訪問などの必要性の高い特定の行動については、ワクチン接種後に活動を再開できる可能性がある。

要約すると、ワクチン接種状況に関係なく、とくにワクチン導入期間中は、予防措置がすべての人々にとって引き続き重要。しかし、予防接種の対象範囲が広がるにつれて、完全に予防接種を受けた人の予防措置、理想的には予防措置による影響を大きく受けている人の特定の予防措置を、段階的に廃止するというバランスの取れた施策が考慮されるべき。

予防接種および予防策に対する人々のスタンスと行動

米国で2020年12月にワクチン接種が開始されてから実施された調査では、米国の成人の約3分の2が、COVID-19ワクチンを接種する可能性が少なくともある程度ある(またはすでに接種している)と回答している。最近の調査では、「予防接種を受けた後もマスクを着用し、社会的距離を確保する必要がある」と聞いた場合に、5人に1人は予防接種を受ける可能性は低いと回答したことが報告されている。

米国で最初のCOVID-19ワクチンが認可された直後に実施された調査によると、ほとんどの人は、夕食に出かける、体育の授業、ホテル宿泊といった活動を再開できるようになるまでに、少なくとも6カ月かかると予想していた。しかし、予防接種プログラムの開始から2カ月以内に実施された調査によると、米国の一般成人人口の半数以上が、COVID-19のリスクにもかかわらず、「自分たちの生活を取り戻したい」という理由で、既にこれらの活動の一部を再開し始めている。

予防接種を完了した人の予防措置の一部を緩和することは、予防接種を推進する強力な動機となる可能性がある。

結論

現在米国で認可されているCOVID-19ワクチンは、無症候性感染症、症候性疾患、重症化、死亡などのSARS-CoV-2感染症リスクに対して有効であることが示されている。新たなSARS-CoV-2変異体に対するワクチンの有効性は調査中である。予備的なエビデンスは、現在米国で認可されているCOVID-19ワクチンが変異体に対して有効である可能性が高いことを示唆しているものの、B.1.351バリアントでは抗体の中和と有効性の低下が観察されている。

米国のCOVID-19ワクチン接種プログラムは、ワクチン接種を完了した人の感染を予防し、感染の連鎖を遮断することにより、米国の疾病負担を大幅に軽減する可能性がある。ワクチン接種を完了した人が他者にウイルスを伝播する可能性を完全には否定できないが、不必要な検疫や社会的孤立などの混乱を回避することのメリットは、これらの潜在的な残余リスクを上回る可能性がある。

米国疾病対策センター(CDC)の新型コロナウイルス・ワクチン情報

  1. ワクチン接種前に知っておきたいこと
  2. ワクチンの副反応は? 妊婦の安全性は? 持続時間は?
  3. ワクチンの副反応とその対策
  4. ワクチン接種後の注意点
  5. ワクチン接種を完了した人への勧告・推奨事項
  6. ワクチン接種を完了した人への勧告の科学的根拠

関連情報

Science Brief: Background Rationale and Evidence for Public Health Recommendations for Fully Vaccinated People(CDC)
新型コロナワクチンについて(厚生労働省)

この記事のURLとタイトルをコピーする

新型コロナウイルスに関する記事

栄養・食生活

アスリート・指導者・部活動・スポーツ関係者

運動・エクササイズ

もっと見る

志保子塾2024前期「ビジネスパーソンのためのスポーツ栄養セミナー」

関連記事

スポーツ栄養Web編集部
facebook
Twitter
LINE
ニュース・トピックス
SNDJクラブ会員登録
SNDJクラブ会員登録

スポーツ栄養の情報を得たい方、関心のある方はどなたでも無料でご登録いただけます。下記よりご登録ください!

SNDJメンバー登録
SNDJメンバー登録

公認スポーツ栄養士・管理栄養士・栄養士向けのスキルアップセミナーや交流会の開催、専門情報の共有、お仕事相談などを行います。下記よりご登録ください!

元気”いなり”プロジェクト
元気”いなり”プロジェクト
おすすめ記事
スポーツ栄養・栄養サポート関連書籍のデータベース
セミナー・イベント情報
このページのトップへ