スポーツ栄養WEB 栄養で元気になる!

SNDJ志保子塾2024 ビジネスパーソンのためのスポーツ栄養セミナー
一般社団法人日本スポーツ栄養協会 SNDJ公式情報サイト
ニュース・トピックス

幼児教育・保育担当者の栄養知識が不足している ニュージーランドでの調査

幼児の健康的な発育のためには、幼児教育・保育に携わる者が、栄養や身体活動に関する正しい知識を修得していることが必要。ところが、現場の幼児教育者・保育者の栄養に関する知識は十分でない可能性があることが、ニュージーランドから報告された。

幼児教育・保育担当者の栄養知識が不足している ニュージーランドでの調査

ニュージーランドのECEC担当者の栄養関連知識をオンライン調査

近年、世界的に小児肥満が増加している。小児肥満は成人後の肥満につながりやすく、種々の生活習慣病のリスクとなる。小児期から適切な食習慣と身体活動習慣を身に付けることが、生活習慣病のリスクを低下させると考えられ、それには幼児教育・保育(Early Childhood Education and Care;ECEC)担当者が、栄養や身体活動に関する知識を身に付けていなければならない。今回紹介する研究では、ニュージーランドのECEC担当者を対象に、それらの知識レベルが調査された。

調査の手法について

この調査は、匿名のオンラインアンケートにより横断的に行われた。5歳未満の幼児のグループベースの教育・保育に従事する同国のECEC有資格者を対象とした。資格をもたない回答者からの回答は除外した。なお、回答にインセンティブは提供されなかった。

アンケートは40項目の選択式または自由回答式の質問が設けられていた。全体は4つのカテゴリーに分けられ、主要栄養素の含まれる食品の摂取すべき量(サービング)に関する質問群、食品の摂取すべき頻度に関する質問群、乳製品や果物などの摂取すべき量、ガイドラインの認知度に関する質問群で構成されていた。

質問の正解は、同国保健省の食品栄養ガイドラインに基づいて判定した。回答者が正しい回答を選択した場合は1点、誤った回答や無回答は0点とし、満点は37点で、スコアが高いほど知識レベルが高いと判断した。

有効回答386人の特徴

ECECの有資格者386名の回答を解析対象とした。年齢は39.9±11.5歳、328名(85.0%)が女性、5名が男性、53名は性別無回答だった。

学歴は、凖学士(sub degree)が33.2%、学士が56.2%、修士が8.0%、その他2.6%。職位は、被雇用者が82.6%、管理職が11.4%、その他が3.1%。

ECEC担当者としての経験年数は3年以下が15.5%、4~10年が42.2%、11年以上が42.2%であり、平均は7.3±4.2年だった。

正答率は約6割

総合点では、年齢や資格、職位、経験年数などによる有意な傾向なし

アンケートの回答が全問正解の場合37点だが、全体の平均点は22.56±2.83点で、正解率は61.1%だった。最低は13.5点、最高は30点だった。

年齢や学歴、職位、経験年数などの違いは、全体的な栄養知識スコアに影響を与えていなかった。

以下、4つの質問カテゴリー別により詳しく解析した結果を紹介する。

サービングに関する質問

このカテゴリーの平均スコアは2.26±1.16点、正解率は43.3%だった。全問正解者は1名のみで、その一方、0点が18名いた。

より詳細に各質問の回答率をみると、フルーツの摂取推奨量(正解は少なくとも2サービング〈同国保健省の食品栄養ガイドラインによる〉)の正解率は46%、野菜の摂取推奨量(同)は23%、パンまたは穀物(少なくとも4サービング)は8%、全粒パン/全粒穀物(ほぼ毎日)は31%、赤身肉またはその代替品(少なくとも1サービング)は51%、乳製品またはその代替品(少なくとも2または3サービング)は67%だった。

ECEC経験年数別にみると、4~10年の群は2.45±1.2点で、11年以上の群の2.12±1.1点より有意に高かった(p<0.05)。3年以下の群とは有意差がなかった。相関分析では、経験年数とサービングのスコアとの間に有意な関連はなかった(r=-0.02,p=0.633)。

経験年数以外の変数(年齢、学歴、職位)は、スコアに影響を与えていなかった。

食品の摂取すべき頻度に関する質問

このカテゴリーの平均スコアは18.03±2.24点、正解率は72%だった。全問正解者はおらず、8名が50%未満の正解率だった。

同国保健省の食品栄養ガイドラインが毎日の摂取を推奨している飲食物の中で、水(正解率99%)や牛乳(同82%)などは正解率が高かったが、チーズ(57%)やヨーグルト(38%)などは正解率が低かった。また、同国のガイドラインが幼児の摂取を非推奨としている飲食物の中で、炭酸飲料(99%)やスポーツドリンク(同)などは正解率が高かったが、ナッツ(6%)や固いドライフルーツ(8%)などは正解率が低かった。ナッツに関しては、44.0%が「毎日摂取すべき」を選択していた。

年齢や学歴、職位、経験年数は、このカテゴリーのスコアに影響を与えていなかった。

乳製品や果物などの摂取すべき量に関する質問

このカテゴリーの平均スコアは1.77±1.41点、正解率は36%だった。全問正解者が15名いた一方で、全問不正解者が89名いた。

より詳細に各質問の回答率をみると、乳製品(正解は1カップ〈250mL〉)の正解率は65%、フルーツ(サイズ中のバナナ1本)は56%、野菜(サイズ中のにんじん1本)63%などは正解率が高いものの、肉(チキンドラムスティック1個)は24%にとどまった。

年齢や学歴、職位、経験年数は、このカテゴリーのスコアに影響を与えていなかった。 なお、回答者の一人は、「2歳の幼児と5歳近い幼児とでは、摂取推奨量に大きな違いがあるのではないか」と指摘していた。

ガイドラインの認知度に関する質問

このカテゴリーは、同国保健省の食品栄養ガイドライン(ここまでの質問の正解の根拠とされたガイドライン)と、同国の身体活動ガイドラインの存在の認知度という、2項目で評価した。

平均スコアは0.51±0.40点、正解率は50%だった。両方のガイドラインを認識していた人が127名いた一方で、両方とも存在を知らない人が112名いた。個別にみると、食品栄養ガイドラインを知っていたのは56%、身体活動ガイドラインを知っていたのは46%だった。

ECEC経験年数別にみると、11年以上の群は0.58±0.39点で、3年以下の群の0.41±0.42点や、4~10年の群の0.47±0.40点より有意に高得点だった(いずれもp<0.05)。4~10年の群と3年以下の群に有意差はなかった。相関分析では、経験年数とガイドライン認知度に、弱いながら有意な正の相関が認められた(r=0.16,p=0.001)。

このほかにも、栄養について話すことに自信をもっている人は、スコアが高いという正の相関がみられることなどがわかった。著者らは、「ECEC担当者は未就学児向けの比較的基本的な栄養に関する推奨事項に関して、知識が不足している可能性がある。本調査の対象はニュージーランド国内のみだが、他の国の調査報告と一致している」とまとめている。

文献情報

原題のタイトルは、「Nutrition Knowledge and Perspectives of Physical Activity for Pre-Schoolers amongst Early Childhood Education and Care Teachers」。〔Nutrients. 2020 Jul 3;12(7):1984〕
原文はこちら(MDPI)

この記事のURLとタイトルをコピーする
志保子塾2024後期「ビジネスパーソンのためのスポーツ栄養セミナー」

関連記事

スポーツ栄養Web編集部
facebook
Twitter
LINE
ニュース・トピックス
SNDJクラブ会員登録
SNDJクラブ会員登録

スポーツ栄養の情報を得たい方、関心のある方はどなたでも無料でご登録いただけます。下記よりご登録ください!

SNDJメンバー登録
SNDJメンバー登録

公認スポーツ栄養士・管理栄養士・栄養士向けのスキルアップセミナーや交流会の開催、専門情報の共有、お仕事相談などを行います。下記よりご登録ください!

元気”いなり”プロジェクト
元気”いなり”プロジェクト
おすすめ記事
スポーツ栄養・栄養サポート関連書籍のデータベース
セミナー・イベント情報
このページのトップへ