新型コロナウイルス・ワクチン接種前に知っておきたいこと 米CDCのワクチン情報①
米国疾病対策センター(Centers for Disease Control and Prevention;CDC)から、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンに関する詳しい情報が、系統立てられて発信されている。新興感染症であるCOVID-19に関しては不明なことが多く、ワクチンに関してもわかっていないことが多い。ただし、その一方で既に明らかになっていることもあり、それらの知見に基づく推奨事項は遵守しなければならない。
米国と日本では状況の相違もあり(現時点で使用可能なワクチンの種類など)、CDC発の情報をそのまま国内に適用できるとは限りませんが、参考情報として紹介します。国内の情報については厚生労働省のWebサイトをご参照ください。新型コロナワクチンについて(厚生労働省)
ワクチンを接種する前に
まず、自分自身がCOVID-19ワクチンの優先的な接種の対象であるかどうかを確認する。いくつかのCOVID-19ワクチンについて、どのように働くのか概略を知る。
免疫システム、感染に対する体の防御
COVID-19ワクチンがどのように機能するかを理解するには、まず体がどのように病気と戦うかを知る必要がある。COVID-19を引き起こすウイルスなどの細菌が体に侵入すると、それらは増殖しようとする。これに対して身体の免疫システムは、病原体と戦うためにいくつかのツールを使用する。さまざまな種類の白血球がさまざまな方法で病原体と戦う。マクロファージ、Bリンパ球、Tリンパ球などだ。
COVID-19ワクチンの仕組み
COVID-19ワクチンは、COVID-19を引き起こすウイルスに対する免疫を高めるのに役立つ。さまざまな種類のワクチンがさまざまな方法で機能する。
通常、ワクチン接種後に、Tリンパ球とBリンパ球を産生するまでに数週間かかる。したがって、ワクチン接種の直後にウイルスに感染した場合、ワクチンが免疫を高めるのに十分な時間が確保されず、感染が成立することがある。
なお、ワクチン接種後、免疫力を高める過程で発熱などの症状が現れることがある。これらの症状は正常な反応であり、体が免疫力を高めている兆候と言える。
ワクチンの種類
現在、米国で認可および推奨されているワクチンには主に3つのタイプがある。mRNAワクチン、タンパク質サブユニットワクチン、ベクターワクチンだ。ワクチンの種類によって、2回接種する必要があるものもある。ファイザー/BioNTecのワクチンとModernaのワクチンがこれに該当する。ジョンソンエンドジョンソン/ヤンセンのワクチンは1回の接種で済む。
最後の注射から2週間以内は、すべての予防措置を継続する必要がある。
ワクチン接種を受けるには
誰が優先的にワクチンを接種すべきかについて、CDCが勧告を行い、次に各州が独自の計画を立てる。
日本国内ではどうなっている?
現状、日本国内でのワクチン優先接種対象者は以下のように定められている。- 医療従事者等
- 高齢者(令和3年度中に65歳に達する、昭和32年4月1日以前に生まれた人)
- 高齢者以外で基礎疾患を有する人や高齢者施設等で従事されている人
いつも服用している薬は、予防接種前、どうすべきか
COVID-19ワクチン接種に際して、疾患治療のために服用している薬を中止することは、通常推奨されない。ただし、免疫系を抑制する薬を使用している場合は、COVID-19ワクチン接種の有効性、現時点でわかっていることとわかっていないことについて、医療者と話し合う必要がある。
ワクチン関連の副反応を防ぐために、予防接種前にイブプロフェン、アスピリン、アセトアミノフェンなどの市販薬(解熱鎮痛薬)を服用することは勧めない。これらの薬がワクチンの効果にどのように影響を及ぼすかは不明。ただし、他の理由でこれらの薬を定期的に服用している場合は、ワクチン接種前にも服用し続ける。
アレルギー反応を抑制する目的で、ワクチン接種前に抗ヒスタミン薬を服用することも勧めない。
予防接種を受ける際の注意
ワクチン接種を受ける際、接種する医療従事者と接種される人は、両者ともに鼻と口を覆うマスクを着用する。列に並んでいる人など、人同士の間隔を6フィート(約2m)確保する。
ワクチン接種日、接種場所等が記載された「ワクチンカード」を受け取る。これは将来に備えて保管しておく。
ワクチン接種を受けたすべて人は、その場でしばらく問題が起きないか監視を受ける必要がある。もし、接種場所を離れた後に重度のアレルギー反応「アナフィラキシー」が起きている可能性があると思われる場合は、911(日本の119番)に電話し、直ちに治療を受ける。2回接種するタイプのワクチン(ファイザー/BioNTech、またはModernaのワクチン)で、1回目にアナフィラキシーが起きた場合は、2回目を接種しないことを推奨する。
他のワクチンと同時にCOVID-19ワクチン接種を受けない
COVID-19ワクチンを接種した後に他のワクチン、例えばインフルエンザや帯状疱疹のワクチンなどを受ける場合は、少なくとも14日待つ。また、既に他のワクチンを接種している場合は、少なくとも14日おいてからCOVID-19ワクチンの接種を受ける。
なお、他のワクチンから14日以内にCOVID-19ワクチンを接種してしまった場合、それを理由にCOVID-19ワクチンを再接種する必要はない。複数回接種が必要なワクチンについては、双方ともにスケジュール通りにワクチン接種を完了する。
ただし、他のワクチンとCOVID-19ワクチンの同時期の接種に関する安全性と有効性のデータが新たに得られた場合、CDCはこの推奨事項を変更する可能性がある。
注射が2回必要な場合
mRNA COVID-19ワクチン(ファイザー/BioNTech、またはModernaのワクチン)は、2回接種が必要。1回目の注射の後に副反応があったとしても、それが医師によって2回目の注射を行うべきでない指示されない限り、2回目の注射を受ける必要がある。
なお、1回のみの注射で完結するのは、ジョンソン&ジョンソン/ヤンセンのワクチンのみ。
2回目の注射のタイミング
1回目の注射と2回目の注射のタイミングは、ワクチンの種類によって異なる。
ファイザー/BioNTechのワクチンは、1回目の注射から3週間(または21日)後に2回目の注射を受ける必要がある。Modernaのワクチンは、1回目の注射から4週間(または28日)後に2回目の注射を受ける必要がある。
2回目の接種タイミングは、推奨されている3週間または4週間に、できるだけ近づける必要がある。ただし、何らかの必要があれば、2回目を1回目から最大 6週間(42日)後までに行うことは可能。一方、推奨間隔よりも短い期間で、2回目の注射を受けてはならない。
ワクチン接種後に守ること
ワクチン接種後、体が免疫を構築するには時間がかかる。2回接種が必要なタイプ(ファイザー/BioNTech、またはModernaのワクチン)は2回目の接種から2週間後、単回接種タイプ(ジョンソン&ジョンソン/ヤンセン)は接種から2週間後に、ワクチン接種が完了したと見なされる。
ワクチン接種が完全に終わるまでは、自分自身と他人を守るために、それまで行っていたすべての感染予防策を継続する必要がある。
米国疾病対策センター(CDC)の新型コロナウイルス・ワクチン情報
- ワクチン接種前に知っておきたいこと
- ワクチンの副反応は? 妊婦の安全性は? 持続時間は?
- ワクチンの副反応とその対策
- ワクチン接種後の注意点
- ワクチン接種を完了した人への勧告・推奨事項
- ワクチン接種を完了した人への勧告の科学的根拠
関連情報
Your COVID-19 Vaccine Appointment(CDC)
Understanding How COVID-19 Vaccines Work(CDC)
新型コロナワクチンについて(厚生労働省)
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