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新型コロナウイルス感染症に関する女性アスリートのための考慮事項

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック発生以降、1年強にわたり、外出自粛やマスク着用、社会的距離の確保など、物理的手段による予防戦略しか手がなかった状況に、ワクチン接種という医学的手段による予防戦略が加わった。現在、世界各国でワクチン供給が始まっている。変異株の出現、ワクチンが感染防御に有効である期間が不明確なことなどの懸念材料はあるものの、パンデミック終息に向け最初のステップを切ったと言えるだろう。

新型コロナウイルス感染症に関する女性アスリートのための考慮事項

この1年間に、COVID-19のスポーツアスリートへの影響をさまざまな角度で研究・考察した多くの論文が発表されてきたが、最近も新たに「COVID-19–Considerations for the Female Athlete(COVID-19–女性アスリートのための考慮事項)」という総説が「Frontiers in sports and active living」に掲載された。要旨の一部を紹介する。

女性アスリートと男性アスリートのCOVID-19の影響の相違

パンデミック以降、今日まで、COVID-19感染者のアウトカムを性別に検討した研究データの大多数は、女性よりも男性のほうが死亡や重症化リスクが高いことを報告している。この傾向を説明するいくつかの仮説が立てられている。

まず、男性は喫煙や飲酒習慣のある人が多く、高血圧や糖尿病などの基礎疾患の有病率が高い。また一般に男性は、手洗いなどのリスク低減のための対策に消極的である。

免疫学的に男性は女性よりもウイルスの活性化に脆弱との報告もある。これは、自然免疫と獲得免疫に関与するX染色体に起因するとされる。その他、エストロゲンやプロゲステロンは、免疫保護作用と抗炎症作用を有する可能性、また、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が侵入の足掛かりとするアンジオテンシン変換酵素2(ACE-2)受容体の性差なども、リスクの性差との関与が考えられている。

ロックダウンから、競技の再開、ニューノーマルへ

アスリートのCOVID-19に関しては、これまでの研究から、併存疾患がなく若い健康な女性アスリートは、男性アスリートと比較してCOVID-19感染時の重症化や死亡リスクが低いことが示唆されている。ただし、アスリートのCOVID-19に関する報告は一般住民に関する報告に比べて格段に少なく、また、外出自粛が女性アスリートに与えた短期的・長期的影響はほとんど不明の状態。加えて最近、女性での有病率が高いビタミンD不足との関連、あるいは多嚢胞性卵巣症候群によるリスク上昇が指摘されている。

一方で、パンデミック初期に比べればCOVID-19の実効性のある予防策が明らかになり、感染者数も国によってはハイレベルながら落ち着きつつある。この変化を背景に、それぞれの国やコミュニティーで、新たなる常態「ニューノーマル」な生活が息づき始めている。スポーツにおいても、国際大会も試行錯誤しながら徐々に再開されつつある。

こうした中、プレー再開(return to play;RTP)に際して、アスリートの全般的な注意点に加えて、女性アスリートに固有の注意点も存在する。

自宅待機からRTPまでの考慮事項

COVID-19に感染、またはCOVID-19感染の疑いがある場合

軽症の場合は10日間の休息を取り、体調全般を監視のうえで段階的なRTPを考慮する。COVID-19治療のために入院を要した場合は、主要なマーカーが正常に戻った後で、包括的なバイオマーカーと心臓スクリーニングを実施し、その後、段階的なRTPを考慮する。

運動トレーニングと怪我のリスクの考慮

状況が許す限り、体力の維持に努め、免疫系にストレスをかけないようにする。周囲のサポートが制限される状況であれば、パフォーマンスの向上を狙うよりも現状維持のほうが、より適切な目標の可能性がある。

遠隔医療の利用を検討する。

メンタルヘルス

サポートスタッフは、メンタルヘルスのリソースをアスリートが利用できるようにする。また、アスリートとの定期的なコミュニケーションを維持する。

月経周期のモニタリング

月経周期に異常が見られる場合、因果関係の特定とともに、トレーニングメニューの変更を考慮する。

一般的な健康上の注意

十分な栄養、睡眠を確保し、回復の促進にとくに留意する。エネルギー可用性が低い状態になることを回避する。

RTP(プレー再開)時の考慮事項

チェックとモニタリング

PCR検査などで感染の有無を確認する。PCR検査が陰性で抗体検査が陽性の場合、ウイルス性疾患の兆候・症状がない限り、トレーニングと社会的接触を再開しても安全であると見なされる。

体温と症状の毎日のモニタリングを、月経周期のモニタリングとともに実行する。可能であれば、酸化ストレスや炎症などのバイオマーカーを週ごとに計測する。必要に応じて心臓スクリーニング検査を行う。

RTPの前の健康診断にて、呼吸機能や睡眠、月経周期の状態な度の懸念事項全般を把握する。

運動トレーニングと怪我のリスクの考慮

トレーニングを再開する状態が整っているかどうかを確認するために、筋骨格系のレビューを行う必要がある。トレーニング再開は段階的に実施する。自覚的運動強度を指標として、倦怠感とトレーニングの適応を評価する。

メンタルヘルス

メンタルヘルス上の問題を回避できるように、アスリートの利便性を向上させたオンラインプラットフォームの使用を検討する。

月経周期のモニタリング

月経周期と症状の追跡を継続する。月経周期に異常が見られる場合、因果関係の特定とともに、トレーニングメニューの変更を考慮する。

一般的な健康上の注意

睡眠と栄養に焦点を当てることを続ける。スケジュールがハードな状況では、回復を優先する。エネルギーの利用可能性が低い状態は避ける。とくに摂食障害の既往歴のあるアスリートは、栄養サポートを検討する必要がある。また、睡眠のモニタリングが考慮される場合もある。

社会的距離の確保などの習慣は、引き続き注意し継続する。

文献情報

原題のタイトルは、「COVID-19–Considerations for the Female Athlete」。〔Front Sports Act Living. 2021 Feb 16;3:606799〕
原文はこちら(Frontiers Media)

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