新型コロナウイルス・ワクチン接種を完了した人への勧告・推奨事項 米CDCのワクチン情報⑤
米国疾病対策センター(Centers for Disease Control and Prevention;CDC)から発信されている、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンに関する情報を数回に分けて紹介している。5回目はワクチン接種後の人たちへの公衆衛生上の暫定的な勧告について。
米国と日本では状況の相違もあり(現時点で使用可能なワクチンの種類など)、CDC発の情報をそのまま国内に適用できるとは限りませんが、参考情報として紹介します。国内の情報については厚生労働省のWebサイトをご参照ください。新型コロナワクチンについて(厚生労働省)
CDCによると、この勧告は予防接種を受けた人を対象とする初の推奨事項であり、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の拡散レベル、ワクチン接種者の人口比の変化、およびCOVID-19ワクチンに関する急速に進化する科学的エビテンスに基づいて、更新・拡張されるとしている。
なお、このガイダンスにおけるワクチン接種完了者とは、2回接種が必要なワクチン(ファイザー/BioNTechまたはModerna)は2回目の接種後2週間以上経過した人、1回接種のワクチン(ジョンソン・エンド・ジョンソン/ヤンセン)は接種後2週間以上経過した人を、COVID-19のワクチンを完全に接種したものと見なしている。
概要
米国で現在認可されているワクチンは、COVID-19重症化リスク抑制に非常に効果的である。また、完全に予防接種を受けた人は、無症候性感染となるリスクが低いこと、SARS-CoV-2を他者に感染させる可能性が低いことを示すエビデンスが増えている。
このようなワクチン接種の保護効果がどの程度続くのか、または、報告が続いているSARS-CoV-2の変異体に対する保護効果は現在調査中だ。よって、予防接種の対象範囲が、対象者のリスクにかかわりなく多数の人に拡大され接種されたとしても、これらの不明点が明らかになるまでは、これまでの予防措置が引き続き必要。
ただし、社会的孤立を減らし隔離要件などの措置を緩和することのメリットは、予防接種を完了した人がCOVID-19に感染したり、SARS-CoV-2を他の人に感染させたりするリスクを上回ると考えられる。加えて、ワクチン接種を受けた人は、これまでの制限の一部を緩和する措置を講じることは、COVID-19ワクチンの接種を推進するためにも有用な可能性がある。
したがって、本ガイダンスは、「予防接種を完了した人同士、または予防接種を受けていない人をプライベートな環境で安全に訪問する方法」、「予防接種を完了した人が隔離や検査にどのように望むべきか」について取り上げる。
予防接種を完了した人も公共の場では、適切なマスク着用、物理的な距離(少なくとも6フィート〈約2m〉)をとる、群衆の回避、換気の悪い場所の回避、咳やくしゃみのエチケット、手を洗うなど、自分自身や他の人を守るためのガイダンスに従い続ける必要がある。また多くの場合、職場や学校のガイダンスに従う。
ワクチン接種を完了した人も、COVID-19が疑われる症状が出現したり、COVID-19感染者との接触が確認された場合は、COVID-19の症状に注意する必要がある。症状が現れた場合は、予防接種を受けたか否かにかかわらず、すべての人が隔離され、必要に応じてSARS-CoV-2検査を含むCOVID-19の臨床評価を受ける必要がある。
プライベートな条件で、他者を訪問する際の推奨事項
ワクチン接種は、外出や小規模なイベントへの参加での感染リスクを最小限に抑える可能性がある。中規模または大規模のイベント、ワクチン未接種の人々を含むイベントへの参加は、SARS-CoV-2拡散のリスクを高める。予防接種を完了した人自身のリスクは最小限かもしれないが、COVID-19重症化リスクのある人や予防接種を受けていない人に接することは、ウイルスの他者への拡散を媒介する潜在的なリスクに注意する必要がある。
中規模または大規模イベントへの参加
予防接種を受けたか否かにかかわりなく、すべての人は、中規模または大規模のイベントへの参加を避け、イベントの規模ごとに規定された地域ごとのガイダンスに従う。
予防接種を完了した人がイベント参加を選択した場合、適切なマスクの着用、他の人との物理的な距離の維持、頻繁な手洗いなど、ウイルス拡散防止策を引き続き遵守する必要がある。
家の外での個人的・社会的活動
屋内レストランでの食事やジムの利用などでの感染リスクは、予防接種を完了した人では低い。ただし、それらの場所は、もともと感染リスクが高い場所であり、ワクチン未接種の人の訪問が元のように増え始めた場合は、リスクが上昇する可能性があるため、予防策を講じる必要がある。
したがって予防接種を完了した人も、公共の場で社会活動に従事する場合は、適切なマスクの着用、物理的な距離の維持、密集の回避、換気の悪い場所の回避、咳エチケット、頻繁な手洗いなどを、引き続き行う。
旅行
現時点においてCDCは、旅行に関する推奨事項を変更していない。
旅行に関するCDCの推奨とは、公共の場では鼻と口を覆うマスクを着用すること、混雑を避けること、頻繁に手を洗うこと、マスクや手指消毒剤などの予備を持参すること、感染者との接触を避けることなど。
隔離、検疫、検査に関する推奨事項
ワクチン接種後にCOVID-19症状が現れた人
ワクチン接種を完了した人がCOVID-19に感染するリスクは低いが、疑われる症状が現れた場合は他者から隔離し、検査を受ける。検査や治療を受ける際には、ワクチン接種後であることを医療者に伝える。
ワクチン接種後にCOVID-19の症状が現れていない人
ワクチン接種を完了した人がCOVID-19に感染するリスクは低いため、COVID-19が疑われる人に接した後、またはCOVID-19感染者に接した後に、検査を受ける必要はなく、自宅待機する必要がない。ただし、曝露後14日間はCOVID-19の症状を監視する必要があり、症状が現れた場合は他者から隔離、検査を受ける。検査や治療を受ける際には、ワクチン接種後であることを医療者に伝える。
ヘルスケア施設以外の環境に居住するワクチン接種後の人
ヘルスケア施設以外の環境(矯正施設や拘置所、グループホームなど)に居住する、ワクチン接種を完了した人が、COVID-19が疑われる、または確認された人に曝露した場合、14日間の隔離の後、SARS-CoV-2の検査を受ける必要がある。これは、居住者の集合体の感染リスクか高いこと、および推奨される物理的距離の維持が困難な環境である可能性があるため。
ヘルスケア施設以外の環境やその他の高密度の職場に勤務するワクチン接種後の人
ヘルスケア施設以外の環境(矯正施設や拘置所、グループホームなど)や、その他の高密度の職場(肉や家禽の加工工場や製造工場など)に勤務する、ワクチン接種を完了した人が、COVID-19が疑われる、または確認された人に曝露した場合、検疫の必要はない。ただし、曝露後、および定期的に実施される職場スクリーニングプログラム(存在する場合)による検査は、引き続き推奨される。
米国疾病対策センター(CDC)の新型コロナウイルス・ワクチン情報
- ワクチン接種前に知っておきたいこと
- ワクチンの副反応は? 妊婦の安全性は? 持続時間は?
- ワクチンの副反応とその対策
- ワクチン接種後の注意点
- ワクチン接種を完了した人への勧告・推奨事項
- ワクチン接種を完了した人への勧告の科学的根拠
関連情報
Interim Public Health Recommendations for Fully Vaccinated People(CDC)
新型コロナワクチンについて(厚生労働省)