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5大陸・14万人・10年の追跡で、GI値と心血管イベント・全死亡との有意な関連を確認

グリセミックインデックス(GI)と心血管イベント発生率との関連を、5大陸にわたる約14万人を対象に10年近く追跡したデータを解析した結果が、「The New England journal of medicine」に掲載された。高GI食によるリスクに関する研究はこれまで主として西側の高所得国から報告されてきたのに対し、この研究対象には、低または中所得国が含まれており、高GI食によるリスクの地域差も観察された。

健康的食事指数と推定心血管年齢が正相関 韓国の健康栄養調査から

低~高所得の20カ国の35~70歳の成人で検討

グリセミックインデックス(glycemic index;GI)は、50gの炭水化物がどれだけ血糖値を上げるかを示す食品別の尺度。食物繊維の含有量が少ない炭水化物食品・飲料はGIが高く、全粒穀物よりも精製穀物はGIが高い。糖尿病の予防や治療にはGIが低い食品が良いことは、多くのエビデンスで裏付けられている。GIと心血管疾患リスクの関連については、糖尿病との関連ほど強い相関は示されていないものの、低GIが有利であることが明らかになっている。ただしそれらのエビテンスの多くは、高所得の西側諸国での研究に基づくもので、低~中所得の非西側諸国からのデータはほとんどない。

それに対して今回発表された研究は、世界的規模で実施された「前向き都市農村疫学調査(Prospective Urban Rural Epidemiology;PURE)」のデータを解析したもので、5大陸の20カ国から35~70歳の13万7,851人が対象。対象国には、高所得国4カ国(カナダ、スウェーデン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦)のほかに、中所得国11カ国(アルゼンチン、ブラジル、チリ、中国、コロンビア、イラン、マレーシア、パレスチナ、ポーランド、南アフリカ)、低所得国5カ国(バングラデシュ、インド、パキスタン、タンザニア、ジンバブエ)が含まれている。

研究対象の平均GIは82.6±5.4で、アジアで高く、中国が最高値

研究対象者のGIは、ベースライン時に行った28項目からなる食習慣質問票から判定した。その平均は82.6±5.4であり、地域別にみると、欧州と北米は76.7±4.4、南米は79.7±4.8、アフリカは85.3±4.0、中東は77.9±3.9、南アジアは83.3±5.2、東南アジアは85.4±3.8、中国は86.2±2.8だった。

この研究ではGIにより対象全体を五分位で分け、心血管死および主要心血管イベント(非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、心不全で定義)という複合エンドポイントを主要評価項目として、そのリスクとの関連を検討した。二次評価項目は、主要評価項目の各構成因子と、非心血管死とした。

各群のGIの中央値(四分位範囲)は以下のとおり。第1五分位群76(74~78)、第2五分位群81(80~83)、第3五分位群86(85~87)、第4五分位群89(88~89)、第5五分位群91(90~91)。

ベースライン時の心血管疾患既往の有無にかかわらず、高GIは高リスク

中央値9.5年の追跡期間中(範囲3.2~11.9年)に、エンドポイントは1万4,075件発生した。内訳は、心血管死3,229件(全死亡は8,780件。非心血管死は5,551件)、心筋梗塞3,579件、脳卒中3,840件、心不全923件。

心血管イベントリスクに影響を及ぼし得る因子(年齢、性別、居住地域、経済状態、教育歴、喫煙・身体活動習慣、ウエスト/ヒップ比、糖尿病、スタチン・降圧薬の使用、総摂取エネルギー量、食物繊維摂取量、全粒穀物摂取量など)を調整後、GIの最低五分位群(GIの低い下位5分の1)と最低五分位(GIの高い上位5分の1)を比較すると、ベースライン時の心血管疾患既往の有無別にみた2群、および全数という3通りの解析のすべてにおいて、主要評価項目である複合エンドポイント、および二次評価項目の複合エンドポイント構成因子の一部に、正の関連がみられた。また、全死亡や非心血管死との関連も同様だった。

詳細は以下のとおり。

対象者全体での解析(vs 第1五分位群で有意差のあるものを抜粋。以下同)

主要評価項目(複合エンドポイント)
第3五分位群HR1.14、第4五分位群HR1.23、第5五分位群HR1.25
二次評価項目(主要心血管イベント)
第4五分位群HR1.14、第5五分位群HR1.14(非致死的心筋梗塞;第4五分位群HR1.20、第5五分位群HR1.25。非致死的脳卒中;第4五分位群HR1.23、第5五分位群HR1.28)
その他の二次評価項目
全死亡;第2五分位群HR1.10、第3五分位群HR1.14、第4五分位群HR1.30、第5五分位群HR1.34。非心血管死;第2五分位群HR1.21、第3五分位群HR1.24、第4五分位群HR1.37、第5五分位群HR1.41

ベースライン時に心血管疾患既往のない群での解析

主要評価項目(複合エンドポイント)
第3五分位群HR1.12、第4五分位群HR1.20、第5五分位群HR1.21
二次評価項目(主要心血管イベント)
非致死的心筋梗塞;第4五分位群HR1.31、第5五分位群HR1.32
その他の二次評価項目
全死亡;第2五分位群1.14、第3五分位群HR1.18、第4五分位群HR1.32、第5五分位群HR1.35。非心血管死;第2五分位群HR1.19、第3五分位群HR1.24、第4五分位群HR1.34、第5五分位群HR1.39

ベースライン時に心血管疾患既往のある群での解析

主要評価項目(複合エンドポイント)
第3五分位群HR1.20、第4五分位群HR1.39、第5五分位群HR1.51
二次評価項目(主要心血管イベント)
第4五分位群HR1.33、第5五分位群HR1.49(非致死的脳卒中;第4五分位群HR1.51、第5五分位群HR1.71)
その他の二次評価項目
全死亡;第5五分位群HR1.36。非心血管死;第4五分位群HR1.52、第5五分位群HR1.45。非致死的心筋梗塞;第5五分位群HR1.45

BMI、身体活動・喫煙習慣別などのサブグループ解析の結果

BMIで層別化したサブグループ解析により、GIと主要複合エンドポイントとの関連は、BMI25未満群よりもBMIが25以上の群のほうが、より強い関連が認められ、有意な交互作用が存在した(交互作用p=0.01)

身体活動習慣、喫煙の有無、降圧薬・スタチン使用の有無で層別化したサブグループ解析では、群間に有意差はみられなかった。

地域・国民所得の影響

中国と非アジア地域で高GIによるリスクの影響が強い

GIの高低によるアウトカムへの影響は、地域によって若干の差が認められた。研究参加人数が最大のグループである中国では、GIの第1五分位群と第5五分位群の比較で有意差が存在した(HR1.76)。中東も同様に有意差がみられた(HR3.22)。その他のアフリカや欧州・北米、南米は、ハザード比が1以上であったものの95%信頼区間が1をまたいでいた。

一方、アジアと非アジアで比較すると、非アジアでのみ、GIとアウトカムとの有意な関連が認められた。この点について著者らは、「おそらく非アジア諸国のほうが、GIが広い範囲に分布しているため」と考察し、そのデータを示している。

高所得国のほうが高GIによるリスクへの影響が強い

国民所得別に解析した場合、高所得国では全数解析およびベースライン時に心血管疾患既往のない群での主要複合エンドポイントの発生リスクに、GIとの関連が認められた。しかし、低所得国では有意な関連が認められなかった。中所得国では、全数解析における第4五分位群のみ、有意なリスク上昇が認められた。

なお、本研究ではGIのほかに、グリセミックロード(炭水化物摂取量)との関連も同様に検討している。それらの結果はGIよりもアウトカムとの関連がやや弱く、また、GIとの関連がほぼ線形の相関であるのに対し、グリセミックロードは非線形の相関が多く認められている。

著者らは、「本研究は、さまざまな集団において、低GIと低グリセミックロードの食事が心血管疾患と死亡リスクの低いことを示している」とまとめている。

文献情報

原題のタイトルは、「Glycemic Index, Glycemic Load, and Cardiovascular Disease and Mortality」。〔N Engl J Med. 2021 Feb 24〕
原文はこちら(Massachusetts Medical Society)

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