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思春期女性アスリートにおける尿漏れの有病率 システマティックレビューの結果

18歳以下の女性アスリートの尿漏れ(尿失禁)の有病率を、システマティックレビューにより検討した結果が報告された。女性は男性より尿失禁の有病率が高く、人口ベースでは27.6%と報告されている。とくに妊娠や出産を経て年齢を重ねること(加齢)などが、リスク因子とされている。

思春期女性アスリートにおける尿漏れの有病率 システマティックレビューの結果

一方、若年女性にも尿失禁はみられ、その場合、激しい運動がリスク因子の一つとして挙げられている。女性アスリートの尿失禁有病率に焦点を当てたメタ解析は既に行われており、例えば有病率35%といった数値が報告されている。ただし、調査対象を若年女性、とくに思春期の女性に限ったシステマティックレビューはまだ行われていなかった。

若年期に尿失禁を経験している場合、年齢を重ねた後にも尿失禁に悩まされる頻度が高くなる可能性が指摘されていることから、思春期女性アスリートの尿失禁に早めに対応する必要がある。そこで本論論文の著者らは、19歳未満の女性アスリートを対象に尿失禁の有病率を検討した報告を対象とするシステマティックレビューを行った。

文献検索により9件の研究を抽出

文献検索は2020年10~11月に行われ、PubMed、Embase、Cochrane Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)、Scopus、Web of Science(WOS)などのデータベースが用いられた。検索に用いたキーワードは、尿失禁、腹圧性尿失禁、骨盤底筋、スポーツ、アスリート、女性アスリートなどで、論文の言語や発行された時期には制限を設けなかった。

採用基準は、研究対象にスポーツまたは運動活動に参加している若年期の女性が含まれていること、尿失禁症状を評価していること、査読システムのあるジャーナルに発表されていること、クロスオーバー試験を含む無作為化比較試験または非無作為化比較試験。除外基準は、研究対象者が19歳を超える研究、骨盤底手術の既往者を対象とする研究、妊娠中または産後の女性が対象の研究、および、システマティックレビューやメタ解析、ケーススタディ。

これら一連のシステマティックレビューの工程は、「Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-analyses;PRISMA(システマティックレビューおよびメタ解析のための優先的報告項目)」に準拠し、2名の独立した研究者によって行われた。

抽出された研究報告の特徴

文献検索によりヒットした報告は500件で、重複を削除した後、321件をスクリーニングし、最終的に9件が採用基準を満たす報告として抽出された。

これら9件の報告は2002~2020年に発表されており、9件中8件が横断的デザインであり、研究対象者数は計633人。平均年齢は16.15歳で、BMIは18.9~21.7、週に6~19時間のトレーニングを行っていた。

尿失禁の有病率は18.2~80%の範囲で、平均48.58%

思春期女性の尿失禁の有病率は、18.2~80%の範囲であり、平均有病率は48.58%だった。

報告された競技種目別にみると、トランポリンの有病率が最も高く80%、それに縄跳びが75%、サッカー62.8%と続いた。反対に新体操は有病率が低く、31.8%と報告されていた。

治療手段である骨盤底筋トレーニングの認知度が低いことが明らかに

女性の尿失禁の原因の多くを占める腹圧性尿失禁に対する治療として、骨盤底筋トレーニングが推奨されている。

9件の研究のうち2件では、この骨盤底筋トレーニングの認知度を調査していた。その結果、思春期女性アスリートの間では、骨盤底筋トレーニングの認知度が低いことが明らかになった。具体的には調査対象の69~90%が、「骨盤底筋トレーニングを聞いたことがない」と回答していた。

また、別の1件の研究からは、思春期の女性アスリートの大半(87%)は、尿失禁の症状をコーチに相談することはないというデータが報告されていた。

思春期女性アスリートの尿失禁についての認知向上が必要

著者らは本研究について、解析対象となった研究やそれらに含まれる調査対象者数が十分とは言えないことを限界点として挙げている。その上で、「運動やスポーツ中の尿失禁は、若い女性アスリートにとって懸念事項の一つだ。我々の研究結果から、思春期女性アスリートの尿失禁有病率は48.8%と示された。この高い有病率を考慮すると、女性アスリートが尿失禁を経験する前に早期教育を行い、予防策を実施する努力が必要とされる」と結論付けている。

また、考察として、「人生の早い段階でスポーツに接することにメリットがあることは、十分に明らかになっている」ものの、「人生の早い段階での尿失禁の存在は、人生の後半での尿失禁の強力な予測因子である」とし、「骨盤底機能障害に関する知識を向上させる必要がある」と述べている。加えて、思春期女性アスリートの尿失禁の病態生理学的研究の必要性を強調している。

文献情報

原題のタイトルは、「The Prevalence of Urinary Incontinence among Adolescent Female Athletes: A Systematic Review」。〔J Funct Morphol Kinesiol. 2021 Jan 28;6(1):12〕
原文はこちら(MDPI)

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