カフェイン摂取がアーティスティックスイミングのパフォーマンスを改善
アーティスティックスイミングのパフォーマンスがカフェイン摂取により向上する可能性を示した論文が発表された。二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験で、バラクダなど4種類の動作の完成度を画像で比較した結果、有意差が認められたという。ブラジルからの報告。
アーティスティックスイミングでは初めてのカフェインの効果検証
アーティスティックスイミング(2017年にシンクロナイズドスイミングから名称変更)は、水泳と体操を組み合わせた競技で、芸術的な審美性が競われる。競技時間は一般的に2~4分で、技術力のほか、デュエットやチームで動作を一致させるために、スピード、筋力、安定性、持久力などが求められる。一方、カフェインのエルゴジェニックエイド(スポーツにおけるパフォーマンス向上が期待される手段・食品)としての有用性は多くの競技で報告されているが、アーティスティックスイミングではいまだ十分検証されていない。著者らは本研究が、「アーティスティックスイミングのパフォーマンスに対するカフェインの影響を調査した初の研究」としている。
16名の女性スイマーを対象に、二重盲検プラセボ対照クロスオーバー法で検討
既報に基づく計算で、カフェインの効果をプラセボと比較し有意差を検証するのに必要なサンプルサイズは15と推測された。そこで16名の経験豊富な女性アーティスティックスイマーを対象として研究が行われた。
選択基準は、(1)少なくとも4年間、アーティスティックスイミングを行っていること、(2)過去2年間、国内または国際レベルで競技に参加していること、(3)思春期に達し、定期的な月経があること。除外基準は、(1)過去6カ月以内のあらゆる種類の筋損傷、(2)過去1カ月以内の薬剤使用、(3)過去3カ月以内の経口避妊薬使用、(4)過去6カ月以内の月経困難症や無月経。
16名の平均年齢は17.4±3.2歳、競技歴5.6±2.8年、体重54.6±6.4kg、身長162.2±4.0cm。試験デザインは、二重盲検プラセボ対照クロスオーバー法で、アスリートと研究者がともにカフェイン摂取条件かプラセボ摂取条件かがわからない状態で実施された。なお、カフェイン条件とプラセボ条件の施行順序はランダムであり、ウォッシュアウトのため間隔を1週間以上あけ、黄体期から15~25日の間に実施された。
試験実施の24時間前からカフェインやアルコールの摂取、および激しい運動を禁止。5mg/kgのカフェインまたはプラセボ(セルロース)のカプセルを200mLの水とともに摂取し、40分間の安静後、ウォームアップを20分かけて行い、続いて以下の方法による検討を行った。
アリアーナ、ブースト、バラクダ、スカルテクニックで評価
評価項目は以下の3項目。
アリアーナ:水中に潜り、水面に両脚の位置を保ったまま、ウォークオーバーバック、ウォークアウトフロントという動作を行い、両脚の角度を矢状面と冠状面で比較。
ブーストとバラクダの高さ:水中から素早く上昇した時の水上に現れた身体の高さ、および、水中に潜り両足を素早く上昇させた時の水上に現れた脚の高さを比較。
スカルテクニック:大腿部が水面に対して直角になる状態で静止できる時間の長さを比較。姿勢を維持できなくなった時、または静止位置がずれ、その修正をコーチが指示しても修正できなくなった時に、終了と判断された。
三つの指標で有意差
では結果だが、まずアリアーナについては、冠状面ではプラセボ条件の139.8±12.8度に対してカフェイン条件では143.5±15.2度であり、カフェイン摂取時のほうが有意に大きかった(p=0.035,効果サイズ0.25〈95%CI;0.02~0.50〉)。矢状面では有意差がなかった。
次に、ブーストの高さは、プラセボ条件39.7±19.2cmに対してカフェイン条件は41.3±19.5cmであり、カフェイン摂取時のほうが有意に高かった(p=0.028,効果サイズ0.08〈95%CI;0.01~0.15〉)。同様に、バラクダの高さは、プラセボ条件18.8±8.2cm、カフェイン条件21.3±10.3cmであり、やはりカフェイン摂取時のほうが有意に高かった(p=0.009,効果サイズ0.25〈95%CI;0.06~0.47〉)。
スカルテクニックは、プラセボ条件12.3±7.9秒、カフェイン条件14.5±9.1秒であり、カフェイン摂取時のほうが有意に長かった(p=0.012,効果サイズ0.24〈95%CI;0.05~0.45〉)。
この研究で検討された三つの動作は、アーティスティックスイミングの基本的テクニックであることから、著者らは結論として、「カフェインの摂取は、アーティスティックスイミングのパフォーマンスを改善するための有望なサプリメントと思われる」とまとめ、「アーティスティックスイミングのコーチやアスリートは、カフェイン摂取を検討する必要がある」と述べている。
文献情報
原題のタイトルは、「Caffeine ingestion improves specific artistic swimming tasks」。〔Braz J Med Biol Res. 2021 Feb 12;54(4):e10346〕
原文はこちら(SciELO)