【医療従事者向け】新型コロナウイルス流行下における熱中症対応の手引き 感染症学会など4学会
日本救急医学会、日本臨床救急医学会、日本感染症学会、日本呼吸器学会の4学会からなる「新型コロナウイルス感染症の流行を踏まえた熱中症診療に関するワーキンググループ」はこのほど、医療従事者向けの「新型コロナウイルス感染症流行下における熱中症対応の手引き」を公開した。同4学会は6月1日付で、一般市民向けに「新型コロナウイルス感染症の流行を踏まえた熱中症予防に関する提言」を公開していたが、今回は医療従事者が臨床現場で活用可能な手引きとして追補し公開した。
新型コロナウイルス感染症の流行を踏まえた熱中症予防に関する提言
6月1日に公開された提言は一般市民を対象とするもので、内容は以下のとおり。
- 屋内においては、室内換気に十分な配慮をしつつ、こまめにエアコン温度を調節し室内温度を確認しましょう。
- マスク着用により、身体に負担がかかりますので,適宜マスクをはずして休憩することも大切です。ただし感染対策上重要ですので,はずす際はフィジカルディスタンシングに配慮し、周囲環境等に十分に注意を払って下さい。また口渇感に依らず頻回に水分も摂取しましょう。
- 体が暑さに慣れていない時期が危険です。フィジカルディスタンシングに注意しつつ、室内・室外での適度な運動で少しずつ暑さに体を慣れさせましょう。
- 熱中症弱者(独居高齢者、日常生活動作に支障がある方など)の方には特に注意し、社会的孤立を防ぐべく、頻繁に連絡を取り合いましょう。
- 日頃の体調管理を行い、観察記録をつけておきましょう。おかしいなと思ったら、地域の「帰国者・接触者相談センター」や最寄りの医療機関に連絡・相談をしましょう。
新型コロナウイルス感染症流行下における熱中症対応の手引き
7月14日に公開された「新型コロナウイルス感染症流行下における熱中症対応の手引き」は医療従事者向けの内容で、熱中症やCOVID-19関連の国内外の論文2,736件から得られた情報を整理したもの。予防、診断、治療に関する6項目のクリニカルクエスチョン(CQ)と、その解説で構成されている。CQと回答の一部を抜粋し紹介する。
予防(マスク・エアコン)
Q.熱中症を予防する上でのマスク着用の注意点は何か?
A.マスクを着用する際は、長期間(1 時間以上)の運動を避けることが望ましい。
Q.COVID-19の予防で「密閉」空間にしないようにしながら、熱中症を予防するためには、どのようにエアコンを用いるべきか?
A.換気により室内温度が高くなるため、エアコンの温度設定を下げるなどの調整を行い、熱中症対策とCOVID-19対策を両立することが望ましい。
診断(臨床症状・血液検査・CT 検査)
Q.熱中症と COVID-19は臨床症状から鑑別できるか?
A.呼吸器症状や嗅覚障害・味覚障害を認める場合はCOVID-19を疑う根拠になるが、臨床症状のみから熱中症とCOVID-19を鑑別することは困難である。
治療(冷却法)
A.蒸散冷却法は原則使用せず、各施設での使用経験や準備の状況に応じて、蒸散冷却法の代替となる冷却法を選択するのが望ましい。
上記以外のQ項目として、「血液検査は熱中症とCOVID-19の鑑別に有用か?」、「高体温、意識障害で熱中症を疑う患者のCT検査はCOVID-19の鑑別診断に有用か?」が掲げられている。
なお、公表された手引きの「緒言」において、熱中症とCOVID-19の関連などを直接検討した文献等はいまだ存在しないため、科学的論拠は依然乏しく限界があることに言及し、「今回の手引きはあくまでも現時点でのもので、今後アップデートされる可能性がある」と述べている。
関連情報
日本感染症学会「新型コロナウイルス感染症流行下における熱中症対応の手引き(医療従事者向け)」
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