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クレアチンの医学領域での可能性、リハビリテーション医学に関する考察を中心に

2023年05月29日

クレアチンの医学領域での可能性を文献レビューに基づき考察した研究がある。リハビリテーションのサポートなどに、クレアチンは潜在的な有用性があるとしている。2021年に、米国の研究者によって発表された論文。

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イントロダクション

クレアチンは今日、スポーツ領域では最も多くのアスリートが使用するサプリメントの一つとなっている。体内のクレアチンはその約95%が骨格筋にあり、その他には脳と精巣にみられる。骨格筋のクレアチンの約3分2はクレアチリン酸で、残りは遊離クレアチンとして存在している。

過去数十年にわたる研究から、クレアチンの補給が骨格筋の代謝や構造にプラスの効果をもたらすことが示されている。クレアチンによりトレーニング誘発性筋肥大を増加させ、筋委縮を抑制することから、スポーツにおけるエルゴジェニックエイドとしての地位が確立している。そしてクレアチンのもつそのような機能性に、医療領域からも注目されるようになってきた。

医学・医療領域でのクレアチン利用の現時点でのエビデンスを整理するために、本論文の著者らは、PubMedおよびGoogle Scholarを用いた文献検索を行った。抽出された研究報告に基づき、本論文では、運動からの回復、筋損傷に対する保護的作用などの主にスポーツ医学以外に、リハビリテーション医学などの側面からの考察が加えられている。前者のスポーツ医学的な側面は既に多くの文献で語られているため、本稿では論文の後半にまとめられているリハビリテーション医学の考察を中心に要旨を紹介する。

廃用症候群

骨格筋を用いないことが、筋断面積の減少、筋力の低下、筋タンパク質異化亢進、神経筋機能などを引き起こす。筋力トレーニングの同化効果に及ぼすクレアチンの有用性が十分に文書化されているため、そのような骨格筋を使わないことによって生じる負の影響に対しても、クレアチン補給が何らかの保護効果を示すのではないかとする発想はたいへん興味深い。実際、最近実施された7件の研究では、不動中のクレアチン補給の効果が検討されており、有望な結果が報告されている。

一方で、有用性を否定する結果もある。また、浮動に伴う筋肉量低下をクレアチンがどのように抑制するのかというメカニズムの解明も十分でない。しかし、臨床において不動によって発生する廃用症候群は深刻な問題であり、何らかの有望な介入法の必要性は切実である。

術後リハビリテーション、脊髄損傷、関節炎

不動や関節の固定後のリハビリテーションにおいてクレアチン摂取が有望と考えられるのに対して、術後のリハビリテーションに関しては有益な効果をもたらすようにはみえない。

このほかに、脊髄損傷の患者は筋力と作業能力の低下を来しやすく、不活動につながることが多いために、問題をさらに悪化させやすい。クレアチンには同化を促す可能性があるため、その有用性が脊髄損傷患者でも検討されている。これまでの文献は限られているものの、結果は有望といえる。

クレアチンはまた、関節炎を有する患者の身体機能にも有益な効果をもたらす可能性が示唆されている。関節リウマチ患者を対象とするある研究では、プロトコル上、介入にトレーニングを組み込んでいないにもかかわらず、筋力の向上が認められたという。ただし、その論文の著者らは、機能的能力と疾患活動性が変化しなかったため、クレアチン補給の明確な臨床的メリットはないと結論づけている。とはいえそれでも、歩行の自己効力感、痛みの軽減などが観察されている。

多発性硬化症

多発性硬化症は女性に多く臨床症状は非常に多様で、根治的治療法は確立されていない。クレアチン補給が多発性硬化症患者の転帰を改善し得ることを支持する理由については、強力な理論的根拠がある。例えば、多発性硬化症の患者は、脳のクレアチン代謝の低下や心臓のクレアチンリン酸レベルの低下、脳脊髄液中のクレアチンキナーゼの上昇が観察される。

このような理論的な根拠はあるものの、実施された2件の研究は、プラセボ以上の改善がみられなかった。このトピックに関しては科学的発見の機会に満ちているが、今日までの研究からは、クレアチン補給が多発性硬化症の身体機能を高めるという結果が得られていない。

クレアチンの医学領域での応用にはさらなる研究が必要

論文ではこのほかに、筋ジストロフィー、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病、ミトコンドリア病、および心肺疾患などに対するクレアチン補給の理論的根拠と介入研究の結果のオーバービューを行っている。そのうえで結論としては、「クレアチン補給は、事実上、すべての患者集団において安全であり許容されるようであり、多くのプラスの影響が示唆されている。それにもかかわらず、現時点では身体機能の低下の抑制またはリハビリのサポートとしてクレアチンを使用することを強く推奨することはできない。クレアチンの医学的役割の評価には、さらなる研究が必要」とまとめられている。

文献情報

原題のタイトルは、「The Application of Creatine Supplementation in Medical Rehabilitation」。〔Nutrients. 2021 May 27;13(6):1825〕
原文はこちら(MDPI)

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