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高齢者のクレアチン不足が狭心症や肝機能異常と関連 米国版・国民健康栄養調査を解析

米国の国民健康栄養調査のデータを用いた研究から、クレアチンの摂取量が不足していることが、高齢者の狭心症や肝機能異常のリスクとなる可能性を示唆する結果が報告された。著者によると、本研究は高齢者のクレアチン摂取量と疾病リスクとの関連を、全米の人口ベースで調査した初の研究とのことだ。また、「高齢者の通常の食事からのクレアチン摂取量は驚くほど少ない」と述べている。

高齢者のクレアチン不足が狭心症や肝機能異常と関連 米国版・国民健康栄養調査を解析

高齢者の健康とクレアチン

高齢者は一般的に栄養失調のリスクの高い集団であり、とくにタンパク質と、タンパク質を構成するアミノ酸の摂取量が少ないことが、しばしば注目される。ただし、タンパク質を構成しないアミノ酸の摂取量が不足していることも少なくない。

クレアチンは、魚や赤身の肉、家禽などの動物性タンパク質が豊富な食品に多く含まれているタンパク質を構成しないアミノ酸誘導体で、エネルギー代謝において重要な役割を果たし、条件付き必須栄養素とされる。既報によると、クレアチンの1日あたりの代謝回転は約2gで、その半分は人体の内部で生成され、残りの半分(約1g)は食事から生成される。クレアチンの可用性が十分でないことは、主としてエネルギーを必要とする組織の機能にさまざまな障害を引き起こす可能性が想定される。

よって、高齢者の栄養失調の評価には、クレアチン摂取不足も勘案される必要があり、摂取量が不足している場合はそれを適切にすることで、体組成や機能的パフォーマンスにメリットがもたらされる可能性がある。しかし実際には高齢者のクレアチン摂取量はいまだ十分把握されておらず、健康障害との関連も不明。

NHANES 2017–2018のデータを解析

本研究では、2017~18年の米国国民健康栄養調査(National Health and Nutrition Examination Survey;NHANES)のデータを使用して、高齢者のクレアチン摂取量が推定され、その結果と自己申告による健康状態との関連が検討された。

米国国民健康栄養調査(NHANES)では、24時間思い出し法で対象者の食事摂取量が把握されており、そのデータを基にクレアチン摂取量が推計された。また、聞き取り調査により既往疾患や身体機能、障害の有無・程度、体調などを把握した。

NHANES 2017~18の調査対象は0~80歳の9,245人で、そのうち65歳以上は1,500人であり、うち1,221人が食事調査からクレアチン摂取量を推計可能だった。その1,221人の年齢は73.2±5.3歳、男性が627人、女性が594人で、BMIは29.4±6.5だった。

高齢者の7割がクレアチン摂取量1g/日未満、2割はほぼゼロ

解析対象1,221人のうち979人(80.2%)は、食事から毎日少なくとも0.02gのクレアチンを摂取していたが、242人(19.8%)は食事からクレアチンを摂取していなかった。対象全体の平均クレアチン摂取量は0.76±0.79g/日(95%CI;0.72~0.81)、体重あたりでは10.2±11.4mg/kg(同9.6~10.8)だった。

現時点で年齢別の食事からのクレアチンの摂取基準は定められていないが、成人一般には1g/日を推奨することが多い。本研究では855人(70.0%)が、クレアチン摂取量1g/日未満だった。

クレアチン摂取量が多い群は摂取エネルギー量が多いがBMIは同等

本研究では、食事からのクレアチン摂取量を以下の4群に分けたうえで、栄養素摂取量や年齢、BMIなどを比較検討している。4群とは、食事からのクレアチン摂取量が0.00g/日の「非摂取群」(242人、19.8%)、摂取量が0.01~0.99g/日の「低摂取群」(613人、50.2%)、1.00~1.99g/日の「中摂取群」(279人、22.9%)、2.00g/日以上の「高摂取群」(87人、7.1%)。

この4群で、年齢や性別(女性の割合)に有意差はなかった。一方、摂取エネルギー量、および、タンパク質・炭水化物・脂質摂取量はいずれも、クレアチン摂取量が多い群ほど多かった(すべてp<0.001)。ただし、摂取エネルギー量に有意差があるにもかかわらず、BMIは群間に有意差がなかった。

クレアチン摂取量が1g/日未満は、狭心症や肝機能異常のオッズが有意に高い

次に、クレアチン摂取量1g/日未満の群(855人、70.0%)と、1g/日以上の群(366人、30.0%)に二分し、年齢、性別、BMI、摂取エネルギー量、タンパク質摂取量で調整のうえ、自己申告による健康状態との関連を検討した。

その結果、クレアチン摂取量1g/日以上の群に対し1g/日未満の群は、狭心症(OR2.62〈95%CI;1.14~6.01〉)と肝機能異常(OR2.59〈同1.23~5.48〉)のオッズ比が有意に高いことが明らかになった。また、自覚症状では、「胸の痛みや不快感」が、やはりクレアチン摂取量1g/日未満のオッズ比が有意に高かった(OR1.71〈同1.17~2.50〉)。

反対に、手首の骨折はOR0.52(同0.30~0.90)であり、クレアチン摂取量1g/日未満の群のほうが低リスクだった。ただし、椎体骨折や大腿部頸部骨折、および骨粗鬆症のリスクは群間差がなかった。

その他の疾患や障害の有無・程度、体調などには、有意な群間差がなかった。

本研究の限界点として著者らは、クレアチンの年齢別摂取基準が規定されていないことから、成人一般に推奨される1g/日未満を低摂取群と判断したが、加齢に伴いクレアチン必要量は減少すると考えられるため、摂取不足を過大評価している可能性があること、および、食事摂取量と健康状態を自己申告により把握していることを挙げている。

そのうえで、「米国の大半の高齢者は、クレアチン摂取量が成人に推奨される量を下回っており、この不足は心臓や肝臓の状態のリスクの増加と関連していた。クレアチンを含む食品の摂取を促す公的な栄養政策に加え、加齢性疾患におけるクレアチンの有用性に関する今後の研究が求められる」と結論を述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「Dietary intake of creatine and risk of medical conditions in U.S. older men and women: Data from the 2017-2018 National Health and Nutrition Examination Survey」。〔Food Sci Nutr. 2021 Aug 25;9(10):5746-5754〕
原文はこちら(John Wiley & Sons)

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