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食生活の健康度が高い人は生物学的年齢が若い 地中海食など4種のスタイルとDNAメチル化の関連

地中海食やDASH食など、健康に良いとされる4つの食事スタイルと、DNAメチル化で評価した生物学的年齢との関連を検討した研究結果が報告された。食習慣をどの食事スタイルの指標で評価しても、スコアが高い人ほど生物学的年齢が若いことが明らかになった。食生活次第で死亡リスクが低下し、寿命が延長する可能性を示した研究と言える。

食生活の健康度が高い人は生物学的年齢が若い 地中海食など4種のスタイルとDNAメチル化の関連

食習慣次第で若返る?

健康的な食事スタイルは、心血管疾患や癌のリスクの低さ、および死亡のリスクが低いことに関連している。ただし、その関連の根底にあるメカニズムは不明。一方、年齢は健康状態と強く関連しており、とくにDNAメチル化レベルから推計したエピジェネティクスな年齢「生物学的年齢」は、実年齢よりも健康状態との関連が強い可能性が示唆されている。本研究は、健康的な食事スタイルがDNAメチル化に基づく生物学的年齢の推計値と関連しているか否かを検討したもの。

Sister Study参加者を、4種類の食事スタイルで評価

この研究の対象は、乳癌の新規発症にかかわるリスク因子の探索のために米国で実施されている「Sister Study」の参加者。Sister Studyは2003~09年に参加登録された5万884人の女性を対象とする縦断的コホート研究で、登録時の年齢は35~74歳。乳がんと診断された姉妹がいるものの、本人は乳癌でない女性が参加している。

参加登録時に行われた食事調査の回答を基に、健康的な食事スタイルとして提唱されている以下の4種類の食事スコアを算出した。一つ目は高血圧治療に推奨されているDASH食(Dietary Approaches to Stop Hypertension)、二つ目は健康的な食事指数2015(Healthy Eating Index 2015;HEI-2015)、三つ目は代替健康食指数(Alternate Healthy Eating Index 2010;AHEI-2010)、そして四つ目は代替地中海式食事(Alternative Mediterranean;aMed)。これらの食事スコアは、平均が0、標準偏差が1になるように変換したうえで、DNAメチル化に基づく生物学的年齢との関連を評価した。

Sister Study登録者のうちDNAメチル化に基づく生物学的年齢のデータを利用可能なのは2,878人で、食事データの欠落者や生物学的年齢が平均から4標準偏差以内から逸脱している人などを除外し2,694人を解析対象とした。DNAメチル化に基づく生物学的年齢は、Hannum、Horvath、PhenoAge、GrimAgeという4種類を用いた。

解析対象者の特徴

解析対象2,694人の平均年齢は56±9歳、BMI27±6、摂取エネルギー量1,630±559kcal/日、身体活動量52±32METs/週、身体活動時間2.9±3時間/週、飲酒回数2.9±4回/週で、非喫煙者が52.7%、前喫煙者40.0%、現喫煙者7.3%であり、閉経前が32.6%、閉経後が67.4%だった。

4種類の食事スコアの平均は、8~40点で評価されるDASHは24±5点、0~100点で評価されるHEI-2015は72±9点、0~110点で評価されるAHEI-2010は61±11点、0~9点で評価されるaMedは4.2±2点だった。これらの食事スコアは互いに正の相関関係があり、DASHとHEI-2015の相関が最も強く(ρ=0.78)、HEI-2015とaHEI-2010の相関は最も弱かった(ρ=0.59)。

4種類すべての食事スコアが、2種類の生物学的年齢と逆相関

4種類の生物学的年齢はすべて、実年齢と正の相関関係があり、GrimAgeとの相関が最も強かった。(ρ=0.923)。実年齢と生物学的年齢の差は、4種類の生物学的年齢すべてについて、実年齢との相関はなかった。つまり、実年齢が若いか高齢かにかかわらず、生物学的年齢と実年齢の差は変わらなかった。4種類の生物学的年齢と実年齢との差は、互いに正の相関関係があった。

生物学的年齢に影響を及ぼし得る因子(身体活動量・頻度、喫煙、および総摂取エネルギー量、閉経前/後、出産回数、学歴)で調整後、評価した4種類すべての食事スコアが、4種の生物学的年齢のうちのPhenoAgeおよびGrimAgeと実年齢との差と逆相関していた。

代替健康食指数(AHEI-2010)と生物学的年齢との相関が最も強く、AHEI-2010のスコア1標準偏差あたり、PhenoAgeと実年齢との差との相関がβ=-0.5(95%CI;-0.8~-0.2)であり、GrimAgeと実年齢との差との相関がβ=-0.4(同-0.6~-0.3)だった。またAHEI-20100スコアはHannumと実年齢との差とも逆相関しており、1標準偏差あたりβ=-0.3(同-0.4~-0.0)だった。

身体活動量が少ない女性では、食事スコアと生物学的年齢の逆相関がより強い

生活習慣により層別化したサブグループ解析の結果、身体活動量が推奨(週に2.5時間以上)を満たしていない女性では、食事スコアが高いほど生物学的年齢が若いという逆相関が、より強いことがわかった。

具体的には、DASHスコアとPhenoAgeと実年齢との差の相関が、身体活動時間2.5時間/週以上の人ではβ=0.1(95%CI;-0.4~0.6)で非有意であるのに対して、2.5時間/週未満の人ではβ=-0.7(95%CI;-1.1~-0.3)と有意であり、群間の交互作用が有意だった(交互作用p=0.04)。HEI-2015とPhenoAgeと実年齢との差についても同様の関係が認められたが、交互作用p=0.16で非有意だった。

このほか、BMIや喫煙習慣によっても、一部の食事スコアと一部の生物学的年齢の逆相関に、有意な交互作用が認められた。

栄養介入で生物学的年齢を若返らせることができるか、今後の研究に期待

まとめると、健康的な食事スタイルを維持している女性ほど、DNAメチル化で評価した生物学的年齢が若いことが明らかになった。健康的な食事スタイルのメリットは、とくに身体活動レベルが低い女性で強く現れるように見受けられる。

著者は、「これらの知見は、食事の質の高さが老化を遅らせて、疾患と死亡のリスクを下げるという疫学調査で示されているデータを支持するものと言える」とまとめている。そのうえで今後の研究の方向性について、「DNAメチル化で評価した生物学的年齢と食事の質の関連を前向きに調査することによって、両者の関連をより深く理解できるだろう。さらに、食事への介入により生物学的年齢にプラスのメリットを得られるか、検証が求められる」と語っている。

文献情報

原題のタイトルは、「Healthy eating patterns and epigenetic measures of biological age」。〔Am J Clin Nutr. 2021 Oct 12;nqab307〕
原文はこちら(Oxford University Press)

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