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軽度の身体活動を増やす指導で介入終了後もその習慣が維持される 国立栄研・宮地氏ら14年間の研究成果

非活動的な生活習慣の人に対して、3カ月間隔で1年に5回のカウンセリングにより軽度の身体活動量を増やすという指導を行うと有意な効果が現われ、その効果は介入終了1年後にも継続していたという、日本人対象の無作為化比較試験の結果が報告された。国立健康・栄養研究所の宮地元彦氏らの研究によるもので、「BMC Sports Science, Medicine & Rehabilitation」に論文が掲載された。

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身体活動量を増やす介入の実効性を示したRCTのエビデンスは多くない

身体活動の多いことがさまざまな疾患リスクの低さと関連していることは、数々の研究報告により揺るぎないエビデンスが確立されている。しかし、身体活動量を増やすための介入によって対象者の生活習慣が変わり、活動的な生活が身に付き介入終了後にもその習慣が継続されるのかという点については、エビデンスレベルの高い研究報告は少ない。また、非活動的な人に対しては日々の軽強度の身体活動を増やすという指導がなされることがあるが、その指導の有効性も明らかでない点が多い。

宮地氏らの研究は、これらの臨床上の疑問を、エビデンスレベルが最も高い研究手法とされる無作為化比較試験(randomized controlled trial;RCT)で検証したもの。

NEXIS研究参加者に1年間介入

この研究の対象者は、日本人成人を対象に行われている縦断的コホート研究「運動と食事の相互作用に関する大規模介入研究(Nutrition and exercise intervention study;NEXIS)」の参加者から、63歳以上、脳卒中・心疾患・腎不全の既往者、歩行に支障のある人を除外した851人。このうち、身体活動量がガイドラインで推奨されている3.3METs-時/日以上かつ1万歩以上歩行している人356人を「活動的な群」とし、残り495人を無作為に2群に分け、1群は後述の指導を行う「介入群」、他の1群を「対照群」とした。

研究継続参加の同意を得られたのは、活動的な群248人、介入群186人、対照群163人。ベースライン時にはこれら3群で、年齢、男性/女性の比、BMI、摂取エネルギー量、VO2peak、HbA1c、中性脂肪、総コレステロールなどに有意差はなかった。また、身体活動量については介入群と対照群とで有意差はなかった。

介入群への介入方法

介入群に対しては、中~高強度の身体活動(moderate-to-vigorous physical activity;MVPA)を増やすことを目的に、3カ月ごとのカウンセリングを5回実施し(計100~200分)、軽度の身体活動を増やすためのアドバイスを行ったほか、加速度計を貸与し身体活動量のモニタリングを課した。

これらによって、ベースラインの1日の歩数が1万歩未満の参加者には1万歩を目標とし、ベースラインで1日1万歩以上歩いている参加者には+3,000歩とすることを目標とした。またそれらの目標を達成後は、身体活動の強度を上げるようにアドバイスした。なお、軽度の身体活動を増やすための具体的なアドバイスは以下のとおり。

軽度の身体活動を増やすためのアドバイスの例

家庭生活

買い物の毎週の頻度を増やす/スーパーマーケットの店内を一巡してから商品を選ぶ/家の清掃をスケジュール化する/テレビのコマーシャル中のストレッチ/歩行速度を上げる

余暇時間

休日に家族でジムに行く/地元のスポーツイベントに参加する/ファッショナブルなスニーカーを買う/子どもと公園で遊ぶ

仕事中

階の移動の階段使用/異なる階のトイレ使用/昼食時に外出

通勤時

一つ前の駅で下車して歩く/改札口から最も遠い車両に乗車

介入群では介入期間中の身体活動量が有意に増加し、介入終了1年後も継続

前述のように、介入群には1年間にわたり計5回のカウンセリングを行った。ベースライン時と介入終了時点(1年後)と身体活動量は以下に示すとおり、活動的な群では歩数が有意に減少しMVPAは有意な変化がなく、対照群では歩数に有意な変化がなくMVPAは有意に増加、介入群は歩数とMVPAがともに有意に増加していた。

活動的な群
介入前1年後有意差
歩数13,447±3,180歩/日12,265±3,379歩/日p=0.001
MVPA5.5±2.1METs-時/日5.1±2.6METs-時/日有意な変化なし
対照群
介入前1年後有意差
歩数8,049±2,090歩/日8,567±2,494歩/日有意な変化なし
MVPA2.6±1.0METs-時/日3.0±1.4METs-時/日p=0.013
介入群
介入前1年後有意差
歩数8,415±1,924歩/日9,247±2,633歩/日p<0.001
MVPA2.7±1.1METs-時/日3.5±1.8METs-時/日p<0.001

このほか、介入群では3METs-時以上の身体活動時間が11分/日、4以上METs-時以上の時間は6分/日、5METs-時以上の時間は3分/日、それぞれ有意に増加していた(活動的な群はいずれも非有意、対照群は3METs-時以上の身体活動時間のみ有意に増加)。

介入終了1年後、介入群の歩数はベースライン時と有意差がないレベル(8,579±2,579歩/日)に減少していたが、MVPAは引き続きベースライン時よりも有意に高い状態(3.3±1.7METs-時/日,p<0.001)が維持されていた。

介入群ではガイドライン推奨の3.3METs-時/日到達者が2倍以上に増加

厚生労働省の「アクティブガイド」では65歳未満の成人に対し毎日60分のMVPAを推奨しており、これは3.3METs-時/日に相当する。

本研究において、介入群ではベースライン時にこれを満たしていたのは45人だったものが、介入終了時点では95人と111%増加し、介入終了から1年後も72人(ベースライン比60%増)が満たしていた。一方、対照群では同順にベースライン時に39人が満たしていて、介入終了時点では51人と30%増、介入終了1年後は48人(同23%増)だった。

軽度の身体活動の推奨でMVPAが増加するが、健康への影響の確認は今後の課題

このほかに、摂取エネルギー量はベースライン時と介入終了時点は群間差がなかったものの、介入終了1年後には介入群のほうが有意に少ないという群間差が生じていた(対照群1,819±549 vs 介入群1,707±452kcal/日,p=0.034)。

また、介入群においてのみ、MVPAの1年間の変化と安静時心拍数の変化(r=-0.22)、およびMVPAの2年間の変化とウエスト周囲長の変化(r=-0.08)との負の相関が認められ、かつMVPAの2年間の変化とVO2peakとの間に有意な正の相関(r=0.23)が認められた。その他に評価した体幹の柔軟性、垂直飛びなどのデータには有意な変化がなかった。

これら一連の結果をもとに、論文の結論は、「身体活動量の増加を目的とした1年間の軽度身体活動の推奨はMVPAの有意な増加を誘発し、かつMVPAが増加した対象者の多くは介入終了から1年後もそれを維持していた。一方、計2年の観察では健康関連パラメータに顕著な変化は生じず、より長期間の追跡が求められる」とまとめられている。

文献情報

原題のタイトルは、「Effect of a 1-year intervention comprising brief counselling sessions and low-dose physical activity recommendations in Japanese adults, and retention of the effect at 2 years: a randomized trial」。〔BMC Sports Sci Med Rehabil. 2021 Oct 25;13(1):133〕
原文はこちら(Springer Nature)

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