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新型コロナ以前・以後のパラ水泳アスリートの筋力を比較 強力なロックダウンが行われたイタリアで調査

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック抑制のために強力なロックダウンが行われたイタリアから、パラ水泳アスリートの上半身の筋力にロックダウンが及ぼした影響に関するケースレポートが報告された。ロックダウン中に自宅でのトレーニングを継続していたが、筋力の低下が生じていたとのことだ。

新型コロナ以前・以後のパラ水泳アスリートの筋力を比較 イタリアのパラアスリートを調査

ロックダウンはパラスイマーにどの程度の影響を与えたか?

COVID-19パンデミックによるロックダウン中、エリートアスリートは自宅でのトレーニングにより基礎体力や筋力の維持に努めていた。ただ、やはりパフォーマンスや体組成などに影響を与えていたことが報告されている。

とくに、パラアスリートは健常アスリートに比較し、一人でのトレーニングが困難なことがあり、ロックダウンの影響は大きい可能性がある。ただし、その実態はほとんど報告されていない。本論文の著者らはこの点に着目し、ロックダウン前、ロックダウン解除直後、および解除からしばらく経過した3時点でのパラスイマーの上半身の筋力を比較検討した。

なお、本研究が行われたイタリアは、2020年3月に国土全体に外出禁止措置がとられ、必要不可欠な行動での外出のみが許可された。その後、数カ月間にわたり、ジムや競技場は閉鎖されていた。ただし、アスリートについては、全国レベルのエリートアスリートの場合、トレーニングセッションへの参加が許可された。

研究対象アスリートの特徴

この研究には当初5名が参加したが、1名は怪我のため脱落。最終的な解析対象は4名だった。男性3名と女性1名で、年齢は24.3±3.8歳、身長1.73±0.20m、体重72.2±13.1kgであり、すべて3年以上の競泳経験があって、主要な国際大会(欧州選手権、世界選手権、パラリンピック)または国内大会(イタリア選手権)に少なくとも1回出場し、かつそれらの大会のいずれかで1回以上表彰台に立っていた。

各選手の障害の種類と程度は以下のとおり。アスリートAは脳性麻痺でS5クラス、アスリートBは遺伝性痙性対麻痺でS6クラス、アスリートCは下肢欠損症でS9クラス、アスリートDは下肢切断によりS8クラス。

評価のタイミングと評価項目

ロックダウンに伴いジムなどの利用が制限されていた期間(2020年3~9月)の2週間前を「T0」、制限解除後を「T1」、および復帰16週間後を「T3」として、これら3時点で上半身のパフォーマンスを評価した。

パフォーマンスの評価は、同じ屋内ジムで、同様の条件(室温21~24℃、相対湿度42~51%)、同時刻(15~17時)に実施された。参加者は前日からアルコール飲料とカフェインの摂取を控えるように指示された。

評価項目は、パラリンピック柔道のパフォーマンス評価用に提案されているプロトコルに従い、ベンチプレスとラットプルダウンにより、1RM(repetition maximum)、バーベルの平均速度、1RM最大値付近での平均速度、および体重あたりの相対速度を評価した。

なお、これらの研究期間中の栄養面に関しては、炭水化物やタンパク質などの主要栄養素、および微量栄養素を十分摂取していたことが確認された。

ロックダウン中と解除後のトレーニングについて

ロックダウン中はジム施設へのアクセスは許可されなかった。体力の低下を軽減するためアスリートに対して自宅でのレジスタンストレーニングプログラムが示され、弾性バンドや一般的な家庭用品を使用したトレーニングが続けられた。水泳のコーチスタッフは、ネットを介してトレーニングの指導を継続した。

一方、前述のように、エリートアスリートに限りロックダウン中にトレーニングセッションに参加することが許可された。よって各アスリートは週に5回(各90分)、定期的な水泳セッションをスタートした。このトレーニングには、身体的距離の確保、体温チェック、PCR検査、感染防御アイテムの使用などが徹底された。

28週間後、ジムの利用が再開された。再開後のジムトレーニングの強度は怪我の発生リスク抑制のため、最初の4週間は50~60%1RMとし徐々に強度を上げていった。

自宅トレーニングに改善の余地あり

パフォーマンスの評価は、サンプル数が4名と限られているため、マグニチュードベースの推論(MBI)という手法により変動の大きさを判定した。

その結果、ロックダウン前(T0)と比較してロックダウン直後(T1)では、ベンチプレスとラットプルダウンともに1RMやバーベル速度の相対値が低下していた可能性が非常に高いと判定された。T1とロックダウン解除の16週間後(T2)の比較では、1RMは改善していた可能性が非常に高いと判定された。バーベル速度の相対値については、T1からの変化が不確かなアスリートが多かった。ベンチプレスとラットプルダウンともにバーベル速度の相対値の改善が確実と判定されたアスリートは、下肢切断によりS8クラスで競技をしている1名のみだった。

これらの検討結果から論文では、「ロックダウン中の自宅でのトレーニング継続にもかかわらず、パラ水泳アスリートの上半身筋力に影響が生じていた。これは、家庭で使用される機器が、アスリートの筋力を維持するためには不十分である可能性を指し示している。ただし、ジムでの適切なトレーニング再開後は、比較的急速にロックダウン前のレベル近くまで回復していた」と述べられている。

文献情報

原題のタイトルは、「Changes in Upper-Body Muscular Strength and Power in Paralympic Swimmers: Effects of Training Confinement during the COVID-19 Pandemic」。〔Int J Environ Res Public Health. 2022 Apr 28;19(9):5382〕
原文はこちら(MDPI)

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