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低炭水化物食は肥満女性の体重、体組成を改善 運動を加えると腸内細菌叢にもプラス効果

肥満傾向のある女性に対する低炭水化物食による、体重や体組成、腸内細菌叢への介入効果を検討した研究結果が報告された。低炭水化物食単独では、体重、体組成は改善したものの、腸内細菌叢に有意な変化は生じず、一方、運動介入を加えた群では腸内細菌叢にプラス効果がみられたという。中国からの報告。

低炭水化物食は肥満女性の体重、体組成を改善 運動を加えると腸内細菌叢にもプラス効果

低炭水化物食(LC)単独と、LC+運動療法を比較

低炭水化物食(low-carbohydrate diet;LC)は、体重管理や心血管代謝リスクの低減などを目的に近年、試みる人が増えている。ただ、低炭水化物食(LC)による心血管代謝リスクへの影響はエビデンスがまだ不十分であり、そのリスクに関与する可能性のある腸内細菌叢への影響に関する研究の結果も一貫性がない。一方、運動が腸内細菌叢の組成を改善することに関しては、より強固なエビデンスが蓄積されつつある。

そこで本論文の著者らは、肥満傾向のある女性を対象として、LCのみ、またはLCと運動療法を平行して行うことによる、腸内細菌叢への影響を比較検討した。

研究参加者の特徴

この研究の参加者は18~30歳のやや過体重傾向(BMI23超)のある女性50人(21.6±3.4歳、BMI24.8±2.4)。代謝内分泌疾患や心血管疾患などがなく健康で、飲酒や喫煙習慣がなく、減量やサプリメント摂取を行っておらず、過去3カ月間に抗菌薬を含む処方薬の服用歴がなく、過去6カ月間の体重変動幅が5%以内に安定しているという適格条件を満たしていた。

全体を無作為に以下の3群に分けて4週間介入した。

低炭水化物食単独群(LC群)

ふだんの食生活を2週間継続し、その間の3日間(平日2日と休日1日)の食事記録から摂取エネルギー量を把握。続く4週間の介入期間は、摂取エネルギー量を変えずに低炭水化物食(LC)とした。このLC単独群には16名が割り当てられた。

低炭水化物食(LC)に高強度インターバルトレーニングを加える群(LC+HIIT群)

上記の低炭水化物食(LC)同様のプロトコルに、高強度インターバルトレーニング(high-intensity interval training;HIIT)を追加。自転車エルゴメーターを用いて、初期抵抗1kgで6秒間できるだけ速く走行し、9秒間急速。これを10回反復するというトレーニングを課した。このLC+HIIT群には17名が割り当てられた。

低炭水化物食(LC)に中強度連続トレーニングを加える群(LC+MICT群)

前記の低炭水化物食(LC)同様のプロトコルに、中強度連続トレーニング(moderate-intensity continuous training;MICT)を追加。自転車エルゴメーターを用いて、50±5rpmで30分間の連続サイクリング運動を課した。負荷強度は介入期間の前半2週間は50%VO2peak、後半の2週間は60%VO2peakとした。このLC+MICT群には17名が割り当てられた。

介入前後の評価項目

体重、体組成、ウエスト/ヒップ比(WHR)、腸内細菌叢の組成、血圧、インクリメンタルテスト(増分テスト)などを、介入の120~48時間前、および介入の72~96時間後に評価した。増分テストは、自転車エルゴメーターを60±5rpm、50Wでこぎ始め、消耗に至るまで、3分ごとに25Wずつ負荷を強めていき、最後の15秒間の平均最大酸素摂取量をVO2peakとした。

低炭水化物食(LC)のみでは腸内細菌叢に有意な変化なし

栄養素摂取量の変化

摂取エネルギー量は、介入前の2週間が約2,000kcal/日で、主要栄養素の割合は炭水化物が約45.0%、タンパク質が約15.0%、脂質が約40.0%だった。介入期間中の摂取エネルギー量は約1,900kcalであり、介入前からの変化は有意でなかった。主要栄養素の割合は前記と同順に、約9.0%、約23.0%、約68.0%となり、炭水化物は有意に減少、タンパク質と脂質は有意に増加していた(すべてp<0.01)。

体重、体組成、血圧は全群で改善、VO2peakは運動介入群でのみ上昇

4週間の介入で3群すべてで、体重、BMI、腹囲長が有意に低下した(すべてp<0.01)。例えば体重については、LC群は-2.5±1.83kg、LC+HIIT群は-2.7±1.33kg、LC+MICT群は-2.4±1.3kgだった。

また、収縮期血圧と平均血圧が3群ともに有意に低下した(ともにp<0.01)。

一方、VO2peakは運動介入を行った群でのみ向上した(LC+HIIT群は3.4±2.2mL/分/kg、LC+MICT群は3.7±3.0mL/分/kg上昇)。

いくつかの微生物属の変化がVO2peakやBMI、血圧の変化と相関

腸内細菌叢のα多様性は、3群ともに有意な変化がなく、門レベルでの有意な変化は認められなかったが(すべてp>0.05)。属レベルでは有意な時間効果が観察された。

具体的には、LC単独群はPhascolarctobacterium属を増加させ、LC+HIIT群はBifidobacterium属を減少させた。LC単独群に比較して運動介入を行った群では、善玉とされるBlautiaが増加し、潜在的に悪玉とされるAlistipesが減少した。

これら腸内細菌叢の組成の変化の一部は、BMIや血圧、VO2peakの変化と有意な相関がみられた。例えばBMIの変化幅はEnterobacterの変化幅と正の相関があり(r=0.334,p<0.05)、VO2peakの変化幅はGranulicatellaの変化幅と負の相関があった(r=-0.342,p<0.05)。

以上から論文の結論は、「低炭水化物食による介入は、腸内細菌叢のα多様性と全体的な組成を変化させなかった。ただし運動介入を組み合わせると腸の生理機能のメリットを得られるようだ。特定の微生物属の変化は、運動耐用能および心血管代謝因子の改善と関連していた」と述べられている。

文献情報

原題のタイトルは、「Effects of Low-Carbohydrate Diet and Exercise Training on Gut Microbiota」。〔Front Nutr. 2022 May 3;9:884550〕
原文はこちら(Frontiers Media)

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