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新型コロナの影響か? 東京2020オリンピック・水泳選手のパフォーマンス低下を確認

2022年05月06日

東京2020オリンピックに出場した世界トップレベルの競泳選手の記録が、2019/20シーズンに低下していたことが報告された。考えられる原因は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの影響だ。統計解析によると、トップスイマーのパフォーマンスは約2年前のレベルに後退したとのこと。

新型コロナの影響か? 東京2020オリンピック・水泳選手のパフォーマンス低下を確認

パンデミックの影響はある?ない? 研究手法によって異なる結果

COVID-19パンデミックがエリートアスリートのパフォーマンスに影響を与えている可能性はあるが、それを正確に検証することはなかなか困難だ。まず、対戦型スポーツでは両者ともに影響を受けていると考えられるため、検証はほぼ不能。また個人競技であっても屋外で行われるものは、天候の影響を受けるため、経年的な比較が難しい。それに対して室内で行われ成績に影響を及ぼす因子が比較的少ない水泳は、選手のパフォーマンスの変化を検討しやすい競技と言える。

東京2020オリンピックに出場した競泳選手の記録を解析した結果、COVID-19パンデミックの影響はみられないとする研究論文が既に報告されている。それに対して今回紹介する論文の結論は、正反対と言えるものだ。ただし、今回紹介する論文の研究では、東京2020オリンピックのみの記録ではなく、水泳に関する国際大会全体の記録を解析している。

研究手法が異なると、異なる結論が導き出されることもあるのは不思議でないが、別の解釈として、東京2020オリンピックは解析対象とされた大会の中で最も遅い時期に開催されたため(2021年開催)、パンデミックの影響が緩和されていた可能性や、オリンピックがアスリートにとって極めて特別な意味をもつ大会であることが関係しているのかもしれない。

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2018-19に比較し2019-20は全種目で記録が低下

トップスイマーのパフォーマンスは過去1年あたり平均約1%の割合で向上してきた。これに対して、1年で0.4%さらにパフォーマンスを向上すると、メダル獲得の確率が有意に高くなるというデータも報告されている。このように、水泳はパフォーマンスの経年的な変化を比較しやすい競技であり、そのためのデータも多く蓄積されている。

今回発表された研究では、国際水泳連盟(Fédération Internationale de Natation;FINA)のトップ50と、東京2020オリンピックに出場した男子競泳アスリート、計515人を対象として、2015~20年までの各選手の記録が公開されているwebサイトで確認し、経年的な変化を解析した。2020年の記録はあっても2019年までの記録のない選手は比較不能のため除外されている。

早速、結果をみてみよう。

各年の記録とその前年の記録との対比

フリースタイル(自由形)

自由形は、50m、100m、200m、400m、800m、1500mのいずれも、2015/16~2016/17、2016/17~2017/18、2017/18~2018/19は、記録が更新されていた。この間の最大の記録更新は、2016/17~2017/18にかけて800mでみられ、1.46±2.15%更新していた。一方、同じく2016/17~2017/18にかけて、50m(0.16±1.59%)と100m(0.16±1.22%)は、最も更新の幅が小さかった。

では、気になる2018/19~2019/20の変化だが、すべての距離でパフォーマンスの低下が認められた。具体的には、50mは-1.94±1.82%、100mは-2.06±1.95%、200mは-1.57±2.09%、400mは-2.06±3.42%、800mは-1.02±1.69%、1500mは-1.11±1.64%であり、100mと400mで最大のパフォーマンス低下がみられた。

背泳・バタフライ・平泳ぎ

自由形以外の種目も同様であり、2015/16~2016/17から2017/18~2018/19にかけては記録が更新されていた。この間の最も大きな記録更新は、バタフライ100mの2015/16~2016/17の変化であり(2.03±3.65%)、記録更新の幅が最も小さいのもバタフライ200mの2016/17~2017/18の変化だった(0.53±1.26%)。

2018/19~2019/20は、すべての種目で記録が低下していた。具体的には、背泳100mは-0.90±1.76%、200mは-0.90±1.76%、バタフライ100mは-0.90±1.76%、200mは-2.03±2.21%、平泳ぎ100mは-1.13±1.57%、200mは-1.99±1.94%。

平泳ぎは記録のばらつきが少なく、バタフライは大きい

上記のほかに本研究では、ある年の記録と別の年の記録との間の相関が検討されている。その検討からは、自由形の50mと1500m、背泳の100mについては、すべての年の記録が互いに有意に相関していた。

さらに、平泳ぎは100m、200mともに、すべての年の記録が互いに有意に相関しており、最も記録のばらつきが少ない種目だった。反対にバタフライは100m、200mともに、記録が互いに有意な相関のない年が存在していた。

以上の結果から論文では、「COVID-19パンデミックの影響により、ワールドクラススイマーのパフォーマンスが1~2%低下し、2年前のレベルに戻ったと結論付けられる。また、平泳ぎは全期間を通じて、すべてのレース距離でパフォーマンスが安定していた唯一の泳法だった」とまとめられている。

文献情報

原題のタイトルは、「How Much the Swimming Performance Leading to Tokyo 2020 Olympic Games Was Impaired Due to the Covid-19 Lockdown?」。〔J Sports Sci Med . 2021 Oct 1;20(4):714-720〕
原文はこちら(Uludag University)

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