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新型コロナで外出自粛の高齢者、サルコペニアを予防・改善する必須アミノ酸の摂取法

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックが長期化している。当初の厳格な外出禁止措置は多くの国で解除されているが、行政府が市民に外出自粛を要請したり、市民が自主的に外出を控えるような状態は、まだまだ続きそうだ。このような状況を背景に、高齢者のサルコペニアのリスクの高まりが指摘されている。サルコペニアの予防や改善には筋力トレーニングと栄養介入が二本柱と考えられる。今回取り上げる論文は、そのうち後者の栄養介入について、とくに必須アミノ酸に焦点を当てた、韓国の研究者らの総説。要旨を紹介する。

必須アミノ酸による筋タンパク質合成刺激

外出自粛などによりパンデミック以前の身体活動を長期間おこなえない状態が続くことは、肥満、インスリン抵抗性、糖尿病、心血管疾患、がんなどのリスクを高めることが想定される。パンデミックが当初の大方の予想よりはるかに長く続いていることから、本格的な対策を立てることが急務となってきた。ことに高齢者にとっては筋肉量の急速な減少がQOLの低下のみならず、生命予後にかかわることがある。

加齢に伴う筋肉量の減少を抑制し、筋肉量増加へと反転させるために最も重要な手段はレジスタンストレーニングであり、そして栄養学的アプローチだ。後者については摂取エネルギーを確保することによる体タンパク質の異化防止と、必須アミノ酸による筋タンパク質合成(muscle protein synthesis;MPS)を高めることが鍵となる。

必須アミノ酸によるMPS刺激作用に関しては豊富なエビデンスがあり、比較的少量の必須アミノ酸であっても高齢者のMPSを増加させることが報告されている。パンデミック中の身体活動量の低下、およびCOVID-19罹患に伴う入院時などに、必須アミノ酸の積極的な摂取が考慮される。

必須アミノ酸による筋肉の質の改善

レジスタンストレーニングと組み合わせた必須アミノ酸の摂取により、筋肉の質が改善する可能性がある。加齢に伴う筋肉機能の低下は、筋肉量の減少では部分的にしか説明がつかず、筋肉の質の低下の関与が示唆されている。これに対して必須アミノ酸の摂取を強化することで、筋肉量の増加の有無にかかわらず、筋肉の機能が改善したとする報告がある。また本論文の著者らも、動物実験で遊離必須アミノ酸が最大負荷量を増加させることを確認しているとのことだ。

また、加齢に伴いミトコンドリアの働きが低下していくことが知られているが、必須アミノ酸の補給がそれを抑止するように作用する可能性がある。必須アミノ酸の摂取によるミトコンドリアでのアデノシン三リン酸(ATP)の生成が増えることが、げっ歯類で示されているという。

高齢者の必須アミノ酸サプリメント摂取のガイド

上記に抜粋した内容は、論文中では「COVID-19による運動不足とサルコペニアへの影響」「筋肉の成長に対する食事療法での必須アミノ酸の優位性」「MPS刺激における必須アミノ酸の役割」「臨床からのエビデンス」などに項目立てて述べられている。それらの考察のうえで論文の後半には、「高齢者向け遊離必須アミノ酸サプリメント摂取の実践的ガイドライン」という項目がまとめられている。その要旨は以下のとおり。

投与量

高齢者のMPSを高めるための必須アミノ酸の至適摂取量は、1回あたり約15g。これは、MPS刺激が3gから15gの範囲で直線的に増加することが示されていることが根拠。ただし、何らかの理由で15gの摂取が困難な場合は、より少ない用量であっても有効。

なお、必須アミノ酸をサプリメントとして摂取することは、タンパク質食品の摂取によりその必要量を確保する場合に比較して窒素排泄を減らす。その結果、肝臓や腎臓の負担を軽減すると考えられる。また、摂取エネルギーが過剰な個人の場合は、必須アミノ酸の確保のためのタンパク質食品の摂取がさらなるエネルギー過剰を招くが、サプリの摂取でそれを回避可能。

組成

筋肉量の維持のための必須アミノ酸摂取に際し、量とともに重要なポイントは組成であり、9種類の必須アミノ酸をバランスよく摂取したい。高齢者の筋タンパク質合成という視点では、とくにロイシンを強化することが推奨される。これは、高齢者において若年者と同等のMPS刺激作用を得るには、より多くのロイシンが必要であることが示されているため。

また、必須アミノ酸ではないが、アルギニンやシトルリンなどの非必須アミノ酸は、一酸化窒素産生刺激を介した筋肉血流改善などのメカニズムを通じて、必須アミノ酸摂取に対するMPS刺激応答を高めると考えられる。

摂取のタイミング

三つ目のポイントは摂取タイミングだ。食間に必須アミノ酸を摂取することは、加齢に伴う食欲不振や咀嚼機能の低下により、食事としてタンパク質食品を十分に摂取できない場合に、食後のMPSを維持するうえで役立つ。既報論文によると、食事の2~3時間後の必須アミノ酸摂取が血漿中の必須アミノ酸の利用可能性を高め、高齢者のMPSを刺激し得ることが示唆されている。また、就寝直前などの摂取も体タンパクの異化を防ぐのに役立つと考えられる。さらに、バランスの良い必須アミノ酸サプリを、レジスタンストレーニングと組み合わせて摂取することが推奨される。この場合、トレーニングの直前またはトレーニング中、あるいは開始1時間以内に摂取すると、MPSが大きく刺激される。

まとめると、高齢者の筋タンパク質同化作用を高めるためには、朝食前、食間、および就寝前に、最大15gのバランスの取れた必須アミノ酸を摂取し、さらに可能であればレジスタンストレーニングに合わせての摂取が効果的と考えられる。ただし、これが負担になる個人の場合、より少ない条件であっても必須アミノ酸サプリのメリットを得ることができるだろう。

文献情報

原題のタイトルは、「Prevention of Loss of Muscle Mass and Function in Older Adults during COVID-19 Lockdown: Potential Role of Dietary Essential Amino Acids」。〔Int J Environ Res Public Health. 2022 Jul 1;19(13):8090.〕
原文はこちら(MDPI)

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