子どもの肥満対策のために水分補給は水だけを許可 スポーツイベント参加者の反応を調査
増加する小児肥満への対策の一つとして、スポーツイベント参加時に摂取する水分を、加糖飲料ではなく、水のみに限定するという働きかけが、オーストラリアの一部で行われている。この施策に対する保護者の反応を調査した結果が報告された。さまざまな分析がなされているが、保護者の4人に3人以上が、そもそも「スポーツ中の水分摂取の必要性に関する情報を受け取っていない」と回答していることもわかった。
スポーツに参加している子どもに水のみの摂取を推奨するという活動の是非は?
オーストラリアでは、2~17歳の子どもと青年の4人に1人が過体重または肥満に該当し、経年的にその割合が増加しているという。その原因の一つと目されているのが加糖飲料であり、スポーツドリンクも例外でないとされている。その一方で、同国の子どもたちの最大6割が学校の授業以外で習慣的な身体活動を行っていることも報告されており、近年ではジュニアトライアスロンの人気も高まっているとのことだ。
同国ビクトリア州に拠点を置く健康推進のための組織「Victorian Health Promotion Foundation(VicHealth)」では、その活動の一環として、人々が健康のために加糖飲料の代わりに水を飲むようにする働きかけを行っている。その活動対象は成人にとどまらず子どもたちも含まれており、例えばスポーツイベントなどでも加糖飲料にアクセス可能な機会を減らすことを目指している。
ただし、実際に同国で、スポーツに参加する子どもたちに水のみの摂取を推奨するという動きはごく一部でみられるものであって、注目されているとは言い難い。さらに、スポーツに参加している子どもたちに、スポーツドリンクではなく水の摂取を推奨することに対する、保護者の意見や態度は明らかでない。
本論文は、ジュニアトライアスロンに参加した子どもの保護者を対象とするアンケート調査で、この点を検討した結果の報告。
競技中のエネルギー補給が必要ない条件での調査
アンケート調査は、メルボルンで2017年3月に実施されたジュニアトライアスロンの参加者の保護者に、iPadを手渡しアンケートに回答してもらうという手法で実施された。トライアスロンには水泳が含まれているため、温かい季節に行われることが多い。よって水分摂取が重要となる。
同大会には7~19歳の子どもや青年が約350人参加し、アンケートに回答した保護者は159人だった。そのうち129人(81%)は1人の子ども、25人(16%)は2人の子ども、5人(3%)は3人の子どもを参加させていた。
トライアスロンの競技メニューは、最も距離の短い7~9歳は水泳75m、自転車3km、マラソン500mで、最も長い14~19歳は同順に500m、16km、5km。成人のトライアスロンと異なり短時間で終了することから、競技中のエネルギー補給のために、スポーツドリンクなどを摂取する必要性は高くない条件での検討と言える。
「水のみ」のポリシーは支持されている
アンケートは、ジュニアトライアスロンに参加する子どもにどのような水分を摂取させるかという質問や、スポーツ中の水分摂取に関する認識の把握、子どもに水のみを摂取させることへの意見などを問う内容だった。
飲み物は「水」との回答が大半だが、年長の子どもの親はスポーツドリンクも選択
スポーツ前・最中・後に摂取する水分の種類を選択してもらったところ、いずれの時点でも水が最も多く選択された(スポーツ前は75%、最中は85%、後は61%)。水に次いで多かったのは、スポーツドリンクであり、とくにスポーツ後には27%が選択していた。水、スポーツドリンク以外の選択肢(ソフトドリンク、牛乳、フルーツ飲料)を選択したのはごくわずかだった。
スポーツドリンクは、年長(14歳超)の子どもの親が多く選択する傾向があった。
スポーツイベントの水分摂取に関する情報を「受けていない」保護者が77%
「スポーツイベントの後、子どもたちに水を飲むように勧めるべきである」というポリシーには、保護者のほぼ全員(99%)が同意した。
一方、「スポーツイベントでの子どもの水分補給の必要性に関する情報を『受け取っていない』」と回答した保護者が、77%に上った。残りの23%は、その情報を「受け取ったことがある」と回答していたが、その情報に基づいて子どもの水分補給に何らかの変更を加えたのは14%にとどまり、50%は「自分がしていたことを確認した」と回答した。
水分補給の重要性は強く認識されている
トライアスロンイベントの前、最中、および後の水分補給の重要性を、10点満点のリッカートスコア(0点は「まったく重要でない」、10点が「非常に重要」)で答えてもらった。結果は、イベントの前、最中、および後のいずれも、10点が大半を占めていた。ただ、スポーツ後は80%近くの保護者が10点を選択していたのに対して、スポーツ前は70%弱、最中は60%弱であり、やや差が認められた。
「水のみ」の摂取を推奨する施策に対する立場
子どものスポーツ中の水分摂取を「水のみ」とするという施策に対する考え方を、10点満点のリッカートスコア(0点は「まったく支持しない」、10点が「強く支持する」)で答えてもらった。
ジュニアトライアスロンイベントを想定した場合は7.94±1.3点、ジュニアスポーツイベント全般を想定した場合は7.86±1.9点であり、比較的高く支持されていた。しかし、ジュニアのみでなく、成人も含めたトライアスロンイベントで水のみの摂取を推奨することに対しては、6.40±3.1点と、やや支持が低下した。
トライアスロン以外での検討が必要
以上の結果から著者らは、「ジュニアスポーツイベントでの水分摂取を『水のみ』とするポリシーは、ジュニアトライアスロンに参加した子どもの保護者の多くから指示されていた。この肯定的な考え方が、他のスポーツを行っている子どもたちの保護者にも当てはまるかどうかは不明であり、さらなる研究が必要」と結論をまとめている。
文献情報
原題のタイトルは、「Attitudes and Opinions of Parents towards Water-Only Drink Policy at Junior Triathlon Events」。〔Int J Environ Res Public Health. 2022 Jul 12;19(14):8529〕
原文はこちら(MDPI)