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コロナ禍の休校で起床と朝食の時間が遅かった小中学生は、より不健康な生活習慣だった 東京大学の研究

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックによる臨時休校中に、起床と朝食とが遅い生活パターンを送っていた子どもは、そうでない子どもに比べて、不健康な習慣をもつリスクが高いことが、小中学生6,220人の横断調査から明らかになった。東京大学の研究グループの研究によるもので、研究の成果が「Public Health Nutrition」に論文掲載されるとともに、同大学のサイトにニュースリリースが掲載された。著者らは、明らかになった結果をもと、「学校が長期休校になった際にも、平時と同様の時刻に睡眠と食事をとる習慣を保つことが重要である可能性が示唆された」と述べている。

コロナ禍の休校で起床と朝食の時間が遅かった小中学生は、より不健康な生活習慣だった 東京大学の研究

発表概要:コロナ休校時の過ごし方から成長後のライフスタイルを占う

学校は、学齢期の子どもたちの生活に大きくかかわっている。COVID-19の流行によって、長期に臨時休校が実施された期間中、学齢期の子どもたちは学校に通っていた時とは異なり、不規則な生活習慣を持っていた可能性がある。そこで、研究グループでは、学校が再開された直後(2020年6月)に小中学生6,220人に対して、臨時休校中の睡眠や食事、運動などの生活習慣を尋ねる横断調査を実施した。

調査で得られた臨時休校中の起床・就寝・食事の時刻を分析したところ、とくに起床と朝食の時刻が異なる4つのパターンが見いだされた。なかでも、起床と朝食の時刻が遅いパターンの子どもたちは、起床と朝食の時刻が早い(つまり、平時と同様の時刻と思われる)パターンの子どもたちに比べて、運動量が少ない、ゲームやテレビ、パソコンなどの画面を見ている時間が長い、朝食や昼食の欠食が多い、菓子類や清涼飲料類の摂取量が多い、といった不健康な生活習慣をもつリスクが高いことが示された。

将来、感染症や災害等が原因で長期に学校が休校になった際にも、平時と同様の時刻に睡眠と食事をとる習慣を保つことが重要である可能性が示唆された。

発表内容:起床と朝食が遅れた子どもは身体活動が少なく食習慣も悪化していた

研究の背景:休校中の概日リズムと生活習慣との関連を探る

COVID-19パンデミックにより、日本を含め世界の多くの国で臨時休校が実施された。学校は、学齢期の子どもたちの睡眠および食習慣に大きく関わる要素である。そのため、長期の休校は、子どもたちの睡眠や食習慣を変化させた可能性がある。しかし、これまでの研究では、長期の休校中における睡眠と食事を組み合わせた概日リズム、およびその概日リズムと生活習慣との関連は調べられていない。

そこで本研究は、臨時休校中の学齢期の子どもたちの睡眠と食事の時刻パターンを特定し、それらのパターンと、運動などの生活習慣および食事摂取量との関連を調べることを目的とした。

研究内容:全体を4群に分けて比較

2020年6月に、全国14都道府県の48の学校・団体に所属する小中学生、1万1,958人に対する横断調査を実施した。

調査では、学校・団体を通して児童・生徒に質問票を配布し、過去1カ月(臨時休校中)の睡眠時間と食事時間、生活習慣、食事摂取量を評価した。食事摂取量の評価には、小学生・中学生・高校生のための食事質問票(brief-type self-administered diet history questionnaire;BDHQ15y)を用いた。解析には、調査票に回答し、必要な情報が揃っている6,220人の子ども(8~15歳)のデータを用いた。

潜在クラス分析※1を用い、起床、就寝、食事の時刻に基づいて、睡眠と食事の時刻パターンを特定した。さらに、対象者が、身体活動レベルが低い、朝食欠食の頻度が多いといった、不健康な生活習慣を持つリスクを、ロジスティック回帰※2を用いて検証した。また、食品および栄養素の摂取量を、睡眠と食事の時間的パターン間で比較した。

※1 潜在クラス分析:カテゴリカル変数を用いて、解析対象の集団に属する個人を、統計的にクラス分けする手法。
※2 ロジスティック回帰:説明変数から「2値の結果(目的変数)」が起こる確率を説明・予測する統計手法。

潜在クラス分析により、とくに起床と朝食の時刻が異なる4つのパターンが見いだされた。この4つのパターンとは、時刻の順に、「非常に早い(6時ごろに起床し6~7時ごろに朝食)」が参加者の20%、「早い(7時ごろに起床し朝食)」が24%、「遅い(7~8時ごろに起床し8時ごろに朝食)」が30%、「非常に遅い(8~10時ごろに起床し9~10時ごろに朝食)」が26%。

起床と朝食の時刻が早いパターンでは、学校のある平時と同様の時刻に起床し朝食をとっていると思われたが、遅いパターンでは、早いパターンと比較して、起床、朝食、昼食の時間帯が1~2時間以上遅くなっていた(図1)。

図1 臨時休校中の睡眠および食事の時刻パターン

図1 臨時休校中の睡眠および食事の時刻パターン

  • 起床と朝食の時刻が遅いパターンほど、起床する時間帯と、朝食をとる時間帯が遅い
  • 起床と朝食の時刻が「とても遅い」パターンでは昼食をとる時間帯が遅い
  • 夕食をとる時間帯は、パターン間の差が小さい
  • 起床と朝食の時刻が遅いパターンほど、就寝する時間帯も遅いが、パターン間の差は小さい
潜在クラス分析を用いて、対象者6,220人の臨時休校中の睡眠および食事の時刻のパターンを分類した。睡眠は、起床と就寝の時刻を、食事は、朝食と昼食、夕食、夜食を食べ始めた時刻を用いた。その結果、とくに起床と朝食の時刻が異なる4つのパターンが見いだされ、時刻順にそれぞれ「とても早い」「早い」「遅い」「とても遅い」パターンと名付けた。
(出典:東京大学)

起床と朝食の時刻が遅いパターンの子どもは、起床と朝食の時刻が早いパターンの子どもよりも、身体活動が不活発であり、テレビなど何らかの画面を見ている時間が長く(1日に4時間以上)、学習時間が短く(2時間未満)、朝食と昼食を欠食する頻度が高い傾向がみられた(図2)。

図2 臨時休校中、不健康な生活習慣を持っていた対象者の割合

図2 臨時休校中、不健康な生活習慣を持っていた対象者の割合

「画面を見ている時間」には、テレビの視聴、コンピューター、スマートフォン、またはタブレットの使用、ビデオゲームを行う時間を含めた。「学習時間」には、読書と自主学習の時間を含めた。夜食は、主食(米、パン、麺など)を含む食事と定義された。
とくに起床・朝食の時刻が遅いパターンに分類された対象者ほど、臨時休校期間中、不健康な生活習慣をもつ傾向にあった。具体的には、身体活動レベルが低い、画面を見て過ごしている時間が長い(1日4時間以上)、学習時間が短い(1日2時間未満)、朝食または昼食を週1回以上欠食している、夜食の摂取頻度が多い(週1回以上)という傾向がみられた。
(出典:東京大学)

さらに、起床と朝食の時刻が遅いパターンの子どもは、ビタミン類、ミネラル類、野菜、果物、魚介類、乳製品の摂取量が少なく(図3)、砂糖や菓子、清涼飲料類の摂取量が多い傾向がみられた(図4)。

図3 臨時休校中の栄養素の摂取量の比較

図3 臨時休校中の栄養素の摂取量の比較

とくに起床・朝食の時刻が遅いパターンに分類された対象者ほど、臨時休校期間中は、ビタミン類やミネラル類の摂取量が少ない傾向がみられた。
(出典:東京大学)

図4 臨時休校中の食品摂取量の比較

図4 臨時休校中の食品摂取量の比較

とくに起床・朝食の時刻が遅いパターンに分類された対象者ほど、臨時休校期間中は、野菜類、果物類、魚介類、乳製品など、好ましい食品の摂取量が少なく、砂糖・菓子類や清涼飲料類などの好ましくない食品の摂取量が多い傾向がみられた。
(出典:東京大学)

社会的意義:休みの日も生活リズムを守ることが重要な可能性

本研究により、長期に学校が休校になった際、平時より著しく遅い時刻に起床し朝食をとっている子どもでは、不健康な生活習慣を持つリスクが高いことが示された。将来、感染症や災害等が原因で長期に学校が休校になった際にも、平時と同様の時刻に睡眠と食事を取る習慣を保つことが重要である可能性が示唆された。

プレスリリース

コロナ禍による臨時休校中の小中学生の睡眠と食事の時刻パターンの分析:起床と朝食の時刻が遅かった小中学生は、より不健康な生活習慣を持っていた傾向が明らかに(東京大学)

文献情報

原題のタイトルは、「Temporal patterns of sleep and eating among children during school closure in Japan due to COVID-19 pandemic: associations with lifestyle behaviours and dietary intake」。〔Public Health Nutr. 2022 May 16;1-35〕
原文はこちら(Cambridge University Press)

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