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アウトドアスポーツの日焼け対策 アスリートのリスク抑制に関するレビューを基にした推奨事項

アスリートの日光曝露のリスクとその対策に関する、スペインの研究者によるレビュー論文が発表された。レビューに基づく推奨事項も示されている。屋外でのスポーツやトレーニングに際しては、皮膚の色にかかわらず日焼け対策が必要であり、サポートスタッフも同様であって、エリートアスリートがロールモデルとして実施すべき、などの提言をしている。

アウトドアスポーツでの日焼け対策 アスリートのリスク抑制のためのレビューに基づく推奨事項

海より山のほうが紫外線が強い

日光曝露によって皮膚がんのリスクが高まる。対策として衣服(ユニフォーム)の着衣が優れた保護効果を発揮するが、スポーツアスリートの場合、実用性、あるいは単に習慣上の理由のため、日光曝露抑止のためのユニフォーム着用はあまり行われていない。

日光曝露によるリスクをより高める因子として、地理的要因が挙げられる。例えば、雪の反射やオゾン層の薄さなどだ。日差しの強い環境と言うと海辺を思い浮かべることが多いかもしれないが、紫外線の強度を表すUVインデックス(ultraviolet index;UVI)は海面よりもスキー場(高度2,100m)では20~30%高いことが報告されている。スキーヤーが日焼け対策をしない場合、高度3,400mではわずか6分で日焼けの変化が始まると報告されている。

生理学的要因も関係する。例えば発汗は最小紅斑線量(日光による皮膚傷害が生じるのに必要な最小放射線量)を低下させる可能性があり、日焼けリスクを増大させ得ることが指摘されている。

既報論文の考察

本論文の著者らは、アウトドアスポーツアスリートの日光曝露対策の包括的な推奨事項をまとめることを目的として、文献レビューを行った。

文献検索にはPubMedを用い、2021年3月までに発表された、英語またはスペイン語の論文を対象とした。キーワードとして「スポーツ」「皮膚」「日光」を設定。ヒットした306報の報告をタイトルとアブストラクトに基づくスクリーニング、全文精査を経て、10件の研究を抽出した。

抽出された10件の研究に基づき、本論文では、アウトドアスポーツの日光曝露時間、用いられている保護手段、日焼けの有病率、皮膚がんの発生率などについて考察を行ったうえで、推奨事項をまとめている。それらの中からいくつかピックアップして紹介する。

日光曝露時間

エリートウォータースポーツアスリートを対象とする研究では、日光曝露時間が1日約4時間と報告されている。エリートサーファーでは1週間あたり13.93時間であり、対象の6.9%のみが紫外線のピーク時間帯を回避したトレーニングを行っていた。ブラジルからは、検討対象のアウトドアアスリートの57%が午前10時前にトレーニングを行うなどの対策が実施されていた。

保護手段

オーストラリアの18~30歳のさまざまな競技のアスリート(サッカー、ホッケー、ライフセービング、テニス)に関する研究では、ほぼ半数が日焼け止めを不適切な方法で用いており、ほぼ3分の1はまったく使用していなかった。ニュージーランドのエリートラグビー、フィールドホッケー、ボートアスリートでは、66%が皮膚がんを心配しているにもかかわらず、日焼け止めを使用していたのは9%のみであり、かつ3分の1は意図的に日焼けしたことがあると報告していた。別の研究では、大学生アスリートの大半(96%)が日焼け止めが皮膚がんの予防に役立つと考えていたが、実際に用いた経験があるのは半数未満だった。

登山ガイドの34.4%が日焼け止めを時々使用、またはまったく使用しないと報告し、使用する人の約3分の1は紫外線防御指数(sun protection factor;SPF)30未満での使用だった。長袖シャツは16.1%、長ズボンは43.5%、帽子は79.0%が着用していた。移植レシピエントであり免疫抑制状態のために皮膚がんのリスクが高い可能性のあるアスリートでさえ、日光曝露対策の重要性を認識しているにもかかわらず、31%が日焼け止めを定期的に使用していないと報告されていた。

皮膚病変のスクリーニング検査

登山ガイドの約50~60%が医療専門家による皮膚科検査を受けていると報告されていた。一方、エリートウォータースポーツアスリートでは83.3%が皮膚の医学的検査を受けておらず、87.5%が自己検査をしていなかった。オーストリアのマラソンランナーの60%、スペインのサイクリストの61.0%は定期的に皮膚科検査を受けていないと報告されていた。

皮膚がんリスク

米国スポーツ医学会(American College of Sports Medicine;ACSM)が行った12件のコホート研究のプール解析からは、身体活動の高さがメラノーマ(黒色腫)のリスクの高さと関連していることが示されている。南ヨーロッパの集団での検討からは、生涯の日光曝露時間が累積7万時間を超えると、皮膚扁平上皮がんのリスクが増大するという結果が報告されている。

そのほか、ウォータースポーツは基底細胞がんの独立したリスク因子だが、アウトドアスポーツ全般では有意でないとの報告もみられる。ただし、別の研究からは、アウトドアスポーツによる日光曝露は基底細胞がんのリスクを2倍上昇させ、独立したリスク因子として境界値(p=0.05)の有意性が示された。

このほか、ドイツからは、小児期にウィンタースポーツを行っていた場合、基底細胞がんのオッズ比が1.7となるとするデータなどがみられた。

サポートスタッフの日光対策など、20項目の推奨事項

論文では上記のほか、アウトドアスポーツによる前がん病変(がんになる前の状態)のリスク、被曝線量、アスリートの認識、サブグループによる相違など、さまざまな角度から考察が加えられている。最後に結論として、20項目から成る推奨事項が掲げられており、そこからいくつかを抜粋する。

  • 日光曝露対策は、皮膚の色にかかわらず、すべてのスポーツ参加者が実施する必要がある。
  • 一般的にはUVインデックス(UVI)が3を超える日に日焼け止めの使用が推奨されるが、より低いレベルであっても長時間の曝露により総曝露量は増加するため、UVIにかかわりなく、日焼け止めを塗ることを推奨する。
  • 可能であれば、午前10時~午後2時の屋外でのトレーニングを避けるようにスケジュールを調整する。
  • 日焼け止めは少なくともSPF30である必要がある
  • 日焼け止めは、十分な量(約2mg/cm2)を少なくとも曝露の30分前に塗布し、その後は2~3時間の曝露ごとに再塗布する。ウォータースポーツでは、再塗布がとくに重要。
  • 皮膚の定期的な自己検査、および、少なくとも年に一度の受診を推奨。
  • 日焼け止めは、更衣室やピッチサイドなどの手に取りやすい場所に置く。
  • アスリート以外のスポーツにかかわるスタッフも日光から身を守る対策を。また、コーチはアスリートに対し、ウエアを脱ぐような指示をしてはならない。
  • ロールモデルとしてのエリートアスリートが対策を実施する。
  • 競技会主催者は、参加者に対して事前に日焼け止め対策を促すメッセージを発信する。

文献情報

原題のタイトルは、「Photoprotection in Outdoor Sports: A Review of the Literature and Recommendations to Reduce Risk Among Athletes」。〔Dermatol Ther (Heidelb). 2022 Feb;12(2):329-343〕
原文はこちら(Springer Nature.)

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