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新型コロナウイルスがアスリートのトレーニングに与えた影響とは? 142カ国、1万2,526人の実態を調査

2021年12月09日

世界6大陸、142カ国、1万2,526人のアスリートが回答を寄せた、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック下でのトレーニングの実態調査の結果が報告された。COVID-19パンデミックにより、トレーニング頻度が著しく減少しそれがモチベーションの低下につながっているアスリートの存在も浮き彫りになった。

新型コロナウイルスがアスリートのトレーニングに与えた影響とは? 142カ国、1万2,526人の実態を調査

同一のアンケートを35カ国語で作成し、世界規模の調査を実施

COVID-19は国内では第5波が収束後の状態が続いている。しかし新たな変異株が出現し、世界的には依然、患者数の減少傾向がみられず、いまだ先行きを見通せない状況にある。既にオミクロン株の拡散抑止対策のために、開催が中止されたスポーツイベントも発生している。

パンデミックのアスリートへの影響はこれまで、さまざまな国からさまざまな対象で調査され、多くの報告がなされている。ただし、世界規模での実態はいまだ明確に把握されていない。今回紹介する論文は、パンデミックに伴うロックダウンによるアスリートのトレーニングへの影響を、世界規模で調査した結果の報告。2020年5月17日~7月5日に、オンラインにて、ロックダウン前およびロックダウン中(2020年3~6月)のトレーニング強度、頻度などの調査が行われた。

各国のスポーツ競技連盟・機関やクラブに対して、電子メールやソーシャルメディア(Facebook、Twitter、Instagram)などを通じて、所属アスリートへの調査協力を要請。回答の適格基準は、障害の有無は問わず18歳以上のエリートまたはサブエリートアスリートであり、少なくとも2週間連続してロックダウンを経験し、ロックダウンに伴う中~高レベルの影響(例えば公園などのトレーニングを行える公共施設の利用が制限されるなど)を1つ以上経験したことなど。

質問票はまず英語のマスター版が作成。それを日本語も含まれている34の言語に翻訳され、使用された。

8割強のアスリートがロックダウンを経験

有効回答は1万2,526件だった。回答したアスリートの特性をみると、男性が66%、年齢層は18~29歳が67%を占め、行っている競技は108種類に及んだ。全体の83%は、5~12週間のロックダウンを経験し、3分の2(67%)は自宅のみでしかトレーニングを行えない状況を経験していた。所属国はアジア諸国が38%、欧州34%、アフリカ11%、南米8%、北米7%、オセアニア2%

競技レベルは13%が世界的に活躍しているアスリートであり、21%は国際大会出場レベル、36%は各国の国内大会出場レベル、24%は各国の地方大会出場レベル、その他の6%はレクリエーションレベルだった。全体の26%はプロ選手で、22%はセミプロ、51%はアマチュアだった。

競技レベルと、知識や信念/態度、トレーニングの実践に有意な関連

ロックダウン中のトレーニングの中断とそれに関連する影響に関するアスリートの見解(既知の知見の知識)を10の質問で評価。また、14の質問により、ロックダウン中のトレーニングの中断をどのように認識したかや、どのように向き合ったか(態度)を評価した。

その結果、競技レベルが高いほど、知識や信念/態度のスコアが高い傾向がみられた。また、トレーニングの実践に関しても、競技レベルとの正の相関がみられた。

明らかになったポイント

全体的な解析の結果、論文では本調査により明らかになったこととして、以下のキーポイントを挙げている。

  • 競技レベルの高いアスリートは、トレーニングに関して優れた知識と信念/態度を持っている。ただし、その評価結果は「中程度」と判定され、パンデミックという状況下でのトレーニングに関するエビデンスのすべてがアスリートに、「最良」と判断されるほどには浸透していない可能性があることが示唆される。
  • ロックダウン中、大半のアスリートは単独でトレーニングを行い、行っているスポーツに特異的なトレーニング内容ではなく、一般的な健康状態維持を目的とする内容だった。これは、スペース、設備、施設、学際的サポートチームなどのリソースが不足しているため。
  • ロックダウン中にアスリートが経験した問題は、彼らのモチベーションを低下させ、それは競技会参加の機会の欠如によって、より増幅された。
  • 競技レベルの高いアスリートは全体的に、状況の変化に上手に対処していた。しかし、その他のアスリートは、トレーニングの頻度や強度、およびタイプなど、トレーニングに関する主要な変数の大幅な低下を報告した。
  • コーチング/トレーニングにデジタルを介したテクノロジーを使用した、リモートベースのプラクティスが出現し、それは効果的であるように思われる。このツールは、競技レベルの高いアスリートに最もよく受け入れられた。
  • アスリートの知識や信念/態度を向上させるには、情報リソース(たとえば、容易にアクセスできるオンラインセミナーやディスカッション)が必要。

上位カテゴリーのアスリートは、リモートでのコーチングへの満足度が高い

このほか、著者らは競技レベルの高いアスリートの特徴をいくつか述べている。

その一つは、競技レベルの高いアスリートはトレーニングを維持したいという強い願望があり、ロックダウン中に「トレーニングしない」ことに対する抵抗が最も大きかったという。そして、これらの上位カテゴリーのアスリートは、おそらく、限られたトレーニングリソースへの優先的なアクセスが提供されたために、他のアスリートよりも、参加しているスポーツ固有のトレーニング特異性が、大幅に確保されていた。また、より上位のカテゴリーのアスリートは、より低いカテゴリーのアスリートよりも「リモートによるコーチング」で十分であると考えていた。

論文では、上述の結果について子細なデータを基にした詳細な考察が加えられている。ロックダウンを介したトレーニング慣行の変更は、アスリートの精神的健康にも悪影響を与える可能性があるという。著者らは、「本研究のデータは、今後起こり得るパンデミック下でのアスリートのトレーニングのサポート体制の確立に有用な情報となり得る」と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「Training During the COVID-19 Lockdown: Knowledge, Beliefs, and Practices of 12,526 Athletes from 142 Countries and Six Continents」。〔Sports Med. 2021 Oct 23;1-16〕
原文はこちら(Springer Nature)

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