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人の声を聞きながら食べると、一人でもおいしく感じる 独居者高齢者やコロナ禍の孤食対策に

一人で食事をするときには、誰かが話しているのを聞きながらのほうが、話し声がないときよりもおいしく感じるという、名古屋大学の研究グループの研究結果が「Appetite」に論文が掲載され、同大学のサイトにニュースリリースが掲載された。研究者らは、病院などで孤食をしている人の食事の質を高める可能性があると記している。

人の声を聞きながら食べると、一人でもおいしく感じる 独居者高齢者やコロナ禍の孤食対策に

研究の概要

名古屋大学大学院情報学研究科の研究グループは、一人で食事をするときには、誰かが話しているのを聞きながらのほうが、話し声がないときよりも、おいしく感じることを明らかにした。これまで一人で食事をするより誰かと食事をするほうが、おいしく感じるということが知られていたが、人の音声がどの程度、食事のおいしさを高めるかは不明だった。

本研究では、大学生を対象とした三つの実験を行った。その結果、映像に人が映っているかどうかにかかわらず、音声が提示されているときによりおいしく感じ、摂食量も増えたことがわかり、人間の「音声」が聞こえることが、一人での食事をおいしくすることに重要であることが示された。

現在の日本では、多くの高齢者が一人で食事をしており、高齢者の高頻度の孤食※1は、うつとの関連が指摘されている。この研究は、モニターに人間が映っているか否かにかかわらず、ラジオのように人の話し声が聞こえると一人での食事がおいしくなることも示している。病院などで孤食している人の食事の質を高める可能性がある。

研究グループでは、今後はオンラインの会食などでも同じような効果が確認されるかを確かめる予定という。

※1孤食:一人で食べること。現代の食生活を代表する「こ食」の一つ(孤食以外に小食、個食、固食などの漢字で表すことがある)。子どもの家庭内での孤食、独居高齢者の孤食、ランチメイト症候群に代表される青年期の孤食など、世代にかかわらず孤食の機会は増加している。食事の栄養バランスの悪化やうつの頻度との関係が指摘され、心身の健康への悪影響が問題視される。

研究背景と経緯

近年は、新型コロナウイルス感染症の感染防止の観点から、多くの地域で長期間にわたり会食が制限される状況が続き、一人で食事をする孤食の機会が増えている。しかし、緊急事態宣言が発令される以前から孤食をする人の割合は増加していた。

核家族が当たり前となった現代では、子どもが独立し配偶者のどちらかが先立つと、残された方は一人で食事をとることになる。このような高齢者の孤食傾向は年々増加している。平成30年の農林水産省「食育に関する意識調査」では、ほぼ毎日(週に4~5日)一人で食べると回答した人は15%もいて、なかでも70歳以上の女性では29%に上った(参考:農林水産省「食育に関する意識調査」)。

高齢者の生活の質は、食事の楽しさと密接にかかわるとの報告や、高齢者の高頻度の孤食はうつとの関連が指摘されている。また、孤食が食欲減退を招くとの報告もある。しかし現在はコロナ禍により、家族と会うことにも自粛が求められていることから、孤食の問題を容易に解決する方法が求められていた。

以前から、一人で食べるより他者と食事するほうが、より多く食べるという「食の社会的促進※2」が知られていた。現在、孤食する人の多くは、テレビを見ながら食事をしている。また、コロナ禍で遠隔地の他者とコミュニケーションしながら食事するというオンライン会食も提案されている。しかし、それらの行動によって、どれだけおいしさが増すかは不明だった。

※2社会的促進:他者の存在によって個人の行動が促進されること。行動の種類によって、他者が同じ行動をする際に促進される場合(co-action effect)と、他者が存在するだけで促進される場合(audience effect)がある。

研究内容

本研究では、大学生を対象に三つの実験を行った。

実験では、机の上にモニターを置いて、「新製品であり、それぞれ味が異なる」と伝え、皿に盛ったポップコーンを90秒間で好きなだけ食べてもらった。その間、モニターから映像が映し出された。モノだけが映っている映像とモノと人が映っている映像が、それぞれ音声あり/なしで提示された状況とし、合計4回食べてもらった。試行順序が結果に影響しないように、実験参加者ごとに順番を変えた。

その結果、人が映っているかどうかにかかわらず、音声が提示されているときによりおいしく感じ、摂食量も増えた。映っている人数を増やしても同じ結果になり、ヒトの音声を合成音声に変化させると、どの映像条件でも、おいしさや摂食量に違いがなかったことから、人間の「音声」が聞こえることが一人での食事をおいしくすることに重要であることがわかった。

図1 実験1で提示した映像の静止画

図1 実験1で提示した映像の静止画

実験では音声が提示された映像(A/C)と音声が提示されなかった映像(B/D)が90秒間提示された。(半数の参加者はAに音声が、残り半数の参加者はBに音声が提示された)。音声の内容は同じで、最近の天気についてであった
(出典:名古屋大学)

図2 実験1の結果

図2 実験1の結果

左のパネルはポップコーンのおいしさを示している。白抜きの棒は音声がない映像、灰色の棒は音声が提示された映像の得点を示す。人が映っている映像(図1のA、B)と、モノが映っている映像(C、D)の結果が別々に示されている。右のパネルは、皿に盛られたポップコーンのうちどのくらい食べたかの割合を示す。映像の種類に関わらず、音声があるときに、おいしさの得点や摂食量が高い。棒グラフ上の縦棒は、標準誤差
(出典:名古屋大学)

図3 実験2で提示した映像の静止画

図3 実験2で提示した映像の静止画

実験では音声が提示された映像と音声が提示されなかった映像が90秒間提示された。Aは一人で、Bでは4人で、最近の天気について話した
(出典:名古屋大学)

図4 実験2の結果

図4 実験2の結果

左のパネルはポップコーンのおいしさを示している。白抜きの棒は音声がない映像、灰色の棒は音声が提示された映像の得点を示す。1人が映っている映像(図1のA、C)と、4人が映っている映像(B、D)の結果が別々に示されている。右のパネルは、皿に盛られたポップコーンのうちどのくらい食べたかの割合を示す。映像の種類に関わらず、音声があるときに、おいしさの得点や摂食量が高い
(出典:名古屋大学)

図5 実験3の結果

図5 実験3の結果

左のパネルはポップコーンのおいしさを示している。白抜きの棒は合成音声がない映像、灰色の棒は合成音声が提示された映像の得点を示す。人が映っている映像(図1のA、B)と、モノが映っている映像(C、D)の結果が別々に示されている。右のパネルは、皿に盛られたポップコーンのうちどのくらい食べたかの割合を示す。どの条件でも、おいしさの得点や摂食量に違いはない
(出典:名古屋大学)

成果の意義

本研究の成果は、会食が制限される状況で、どのようにすれば一人の食事の質(おいしさの向上)を高められるかを示したもの。会食の自粛が解除されても、病院等で過ごすなど、孤食をせざるを得ない人の食事を少しでもおいしくできる可能性が考えられる。今後、映像を映さない音声だけのオンライン会食や、日常的に孤食している人でも同じ効果が得られるかなどの検討が求められる。

プレスリリース

人の声を聞きながら食べると、一人の食事でもおいしく感じる(名古屋大学)

文献情報

原題のタイトルは、「A human voice, but not human visual image makes people perceive food to taste better and to eat more: “Social” facilitation of eating in a digital media」。〔Appetite. 2021 Dec 1;167:105644〕
原文はこちら(PubMed)

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