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薬局での管理栄養士による栄養相談と、薬剤師との連携の実態が明らかに 慶大などの調査

地域住民の健康をサポートする「かかりつけ薬局」への期待が高まるなか、薬局に勤務する管理栄養士が行う栄養相談の実態と、薬剤師との連携状況に関する調査結果が報告された。食事や栄養関連の質問に対する説明能力が管理栄養士は薬剤師よりも優れていて、薬局での管理栄養士の配置が患者サービスの向上につながる可能性や、薬剤師の栄養管理に対する認識の向上にもつながる可能性などが明らかになった。慶應義塾大学薬学部医薬品情報学講座の堀里子氏、木﨑速人氏らの研究によるもので、論文が「BMC Health Services Research」に掲載された。

薬局での管理栄養士による栄養相談と、薬剤師との連携の実態が明らかに 慶大などの調査

かかりつけ薬局には、地域住民の栄養管理機能も求められている

厚生労働省が2015年に発表した「患者のための薬局ビジョン」では、薬局には調剤業務だけでなく、処方内容に関する患者への説明、必要に応じた受診の勧め、栄養管理などによって、地域住民の健康を支える機能が求められるとされている。これらの求められる機能のうち、栄養管理について薬剤師は専門教育を十分に受けておらず、日常業務として行うにはハードルが高い。

一方、栄養の専門家である管理栄養士は国内に約25万人いるが、その多くは医療機関に勤務しており、薬局で働いている管理栄養士はわずかだ。医療機関に勤務する管理栄養士と、地域の薬局に勤務する管理栄養士には、以下のような違いがある。

前者は医師の指示のもとで栄養計画を立案し指導・介入を行い、医療機関はそれに関する診療報酬を算定可能。ただし、当然ながら管理栄養士の介入対象は、その医療機関を受診している患者に限られる。

それに対して後者では、医師の指示はない場合がほとんどであり、主として患者からの相談に応じるかたちで行われ、対象は制限されず、広く地域住民へ食事や栄養関連の情報を発信可能。ただし、薬局はその業務に関して調剤報酬などを算定することはできず、あくまでも患者や地域住民へのサービスとして実施される。

2018年の厚生労働省の調査では、管理栄養士が勤務する薬局は全体の10%未満であることが報告され、薬局を栄養相談の窓口として利用できる地域住民はごく限られている実態が示された。管理栄養士が勤務している薬局は、地域住民の健康サポート機能が高いと考えられるものの、エビデンスの裏付けはほとんどない。

このような状況を背景として堀氏らは、薬局で働く管理栄養士の栄養相談の現状と、薬剤師との連携状況を明らかにすることを目的に、本アンケート調査を実施した。

管理栄養士と、管理栄養士のいる薬局薬剤師、いない薬局薬剤師で回答を比較

調査の対象は、調剤薬局チェーンをもつI&H株式会社が運営している店舗195件に勤務する管理栄養士と薬剤師。自記式のアンケートへの回答を依頼し、管理栄養士66名(回答率89.2%)、管理栄養士/栄養士が勤務している薬局の薬剤師53名(同79.1%)、管理栄養士/栄養士が勤務していない薬局の薬剤師110名(同85.9%)から有効回答を得た。

管理栄養士は全員が女性で、大半が20~30代であり、業務経験が1年未満だった。薬剤師は約60%が女性で、30代が最も多く、3年以上の業務経験者が多かった。

管理栄養士による食事相談の実施状況

薬局に勤務する管理栄養士は、患者の栄養相談のニーズに対して、曜日と時間帯を定めて行う相談会形式で応えるスタイルと、それ以外に日常の勤務中に任意の相談に応じるスタイルで応じていた。

後者のスタイルで最も多いのは、「調剤の待ち時間に患者から相談を受ける」ケースと、「薬剤師が管理栄養士への相談を患者に勧め、相談を受ける」ケースであり、ともに76.7%だった(任意の相談に応じたことのある管理栄養士43名に占める割合)。その他、「支払い時に患者から相談を受ける」が62.8%、「管理栄養士のほうから患者に近づき相談にのる」が51.2%であり、「処方箋のない訪問者の相談」を受けているケースも34.9%を占めた。

疾患治療のための栄養相談に応える頻度と説明力の比較

疾患治療のための栄養相談に応じる頻度や説明力を比較した結果、以下の疾患について有意差が認められた。なお、これ以降は、相談会のスタイルと任意の相談に応じるスタイルとを区別せずに解析している。

管理栄養士は、肥満や高血圧患者の栄養相談について、薬剤師より有意に高頻度に対応していた。また糖尿病患者に対しては、管理栄養士/栄養士のいない薬局に勤務する薬剤師より有意に高頻度に栄養相談に対応していた。

説明力については、個々の疾患の栄養相談への応答が、「全く説明できない」「あまり説明できない」「どちらとも言えない」「まあまあ説明できる」「十分に説明できる」の五者択一で回答してもらい比較検討した。その結果、管理栄養士は、高尿酸血症・痛風、肥満、高血圧、および腎臓病(透析なし)の患者からの栄養相談に対する説明能力が、薬剤師よりも有意に高かった。

薬局における栄養管理の必要性に関する薬剤師の認識

薬局で栄養管理することの必要性の認識を薬剤師に問うたところ、職場環境に管理栄養士/栄養士が常勤している/いないにかかわらず、その必要性を認める回答が7割を超えていた(「全くそう思わない」~「とてもそう思う」の5点のリッカートスコアで4点以上の割合)。「薬局での栄養と食事の管理が必要」との項目に対し、管理栄養士のいる薬局に勤務する薬剤師は100%が同意したのに対し、管理栄養士/栄養士のいない薬局薬剤師の同意率は86.4%であり,有意な差がみられた。

自由回答には、「薬剤師は一般的な食事指導はできるが、具体的なレシピは提案できない」「管理栄養士は日常生活に取り入れやすいアドバイスをしている」といった記述がみられた。

薬局で職能を発揮できていると自認する管理栄養士と、できていないと自認する管理栄養士の比較

管理栄養士に対し、薬局で自分の職能を発揮できているかを5段階で評価してもらうと、56.1%と半数以上が「まったくできていない」または「あまりできていない」と回答した。「職能を発揮できている」と回答した管理栄養士は、患者への処方薬と栄養との関連性を薬剤師と相談する機会や、薬剤師から患者の栄養指導について相談を受ける機会が多いことがわかった。一方、「職能を発揮できていない」と回答した管理栄養士は、「栄養相談のきっかけを得ることが難しい」との回答が多かった。

かかりつけ薬局の機能強化に管理栄養士の力を

著者らは本研究を、日本の地域薬局における管理栄養士による栄養相談の現状を大規模に明らかにした初の研究と位置付け、「患者からの要望がきっかけとなり栄養相談が行われることが多く、薬局利用者の栄養相談に対するニーズは高いことがわかった。管理栄養士が薬剤師よりも栄養や食事に関して優れた説明能力をもっていることも示唆された」と結論をまとめている。また、「薬剤師が患者の栄養状態への関心を高め、管理栄養士への栄養相談を勧めることは有益と考えられる」と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「Questionnaire survey investigation of the present status of dietetic consultation at community pharmacies from the perspectives of registered dietitians and pharmacists」。〔BMC Health Serv Res. 2021 Sep 8;21(1):935〕
原文はこちら(Springer Nature)

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