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新型コロナウイルス感染症の影響で、未成年長距離ランナーの怪我が適切にケアされていない可能性

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に伴うソーシャルディスタンスの確保の影響で、未成年長距離ランナーでは怪我の適切なケアを受けていないケースが増加していることを示唆するデータが報告された。研究者らは「将来的な慢性疼痛のリスクにつながる可能性がある」と懸念を表している。

新型コロナウイルス感染症の影響で、未成年長距離ランナーの怪我が適切にケアされていない可能性

ソーシャルディスタンスの確保のために、ランニング関連傷害(RRI)は減った?

ランニングは若年者の間でもポピュラーなスポーツで、米国では150万人の高校生ランナーがいるという。手軽に始められることがランニングの人気が高いことの理由の一つだが、ランニングに伴う怪我「ランニング関連傷害(running-related injury;RRI)」の頻度は低いものではなく、高校生ランナーの半数以上がRRIの既往を有するとの報告がある。RRIが適切にケアされない場合、易再発性や慢性化につながることが危惧される。

外出自粛によりトレーニングの機会が減ることで、RRIの発生リスクは恐らく低下すると考えられるが、主に健康維持のためにランニングに取り組む成人では、むしろCOVID-19パンデミック中のRRI増加傾向がみられるとの報告もある。しかし未成年アスリートでの実態は明らかでない。著者らは、外出自粛によって未成年アスリートの練習量が減り、それとともにRRIも減少し、かつ受傷時に遠隔医療を受療する頻度が高まっているとの仮説を立て、本検討を行った。

米国で昨年5~6月にWeb調査

2020年5~6月に、全米の中高生長距離ランナーに対しWebベースの調査を行った。調査への参加資格は、年齢が9〜19歳で、クロスカントリー、800m以上の陸上競技、ロードレース、レクリエーションランニングなどの長距離ランニングを行っている者とし、以前に実施した長距離ランナー調査への協力者に対して電子メールで再度の協力を依頼したほか、ソーシャルメディアを通じて回答を呼びかけた。

576件の回答が寄せられ、このうち287件の回答が選択基準を満たしていた。選択基準を満たさないものの大半は、年齢が基準範囲以外であることがその理由。

287人の背景は、年齢が15.3±1.7歳、男性124名、女性162名、性別不明1名、ランニング経験5.0±2.3年。235人(81.9%)が競技ランナー、52人(18.1%)がレクリエーションランナーだった。

負傷後にケアを受けていないアスリートの割合が有意に増加

トレーニング量とRRIが、パンデミック以降、ともに有意に減少

結果について、まずトレーニング量をみてみる。

週あたりの走行距離は、パンデミック前が38.6±22.0km/週、パンデミック以降は33.2±24.2km/週に減少(p<0.001)、週あたりの走行頻度は同順に、5.0±1.4回/週、4.3±2.0回/週に減少(p<0.001)、1,000km走行あたりの怪我の発生率は、11.4±36.5件/1,000km、6.5±26.5件/1,000kmに低下(p=0.002)であり、いずれもパンデミック前後での変化が有意だった。

パンデミック以降、41名(14.3%)に計82件のRRIが発生していた。部位として多い箇所は、膝が18.3%、股関節・骨盤が同じく18.3%、下腿が17.1%などだった。

パンデミック以降、RRI発生後にケアを受けたアスリートは半数に満たない

パンデミック以降に負傷したアスリートのうち、医療者のもとでケアを受けたアスリートは17名(40.5%)であり、ケアを受けなかったアスリートが過半数の24名(57.1%)を占めていた。他に1名(2.4%)は遠隔医療を利用していた。

この値をパンデミック以前と比較してみると、パンデミック以前のRRI発生を報告したアスリートは63名で、そのうち51名(80.9%)は医療者のケアを受けており、ケアを受けていなかったのは10名(15.9%)であった。他に2名(3.2%)が遠隔医療を利用していた。

パンデミックによって、負傷後に医療者のケアを受けたアスリートは有意に減り、ケアを受けなかったアスリートは有意に増加していた(いずれもp<0.001)。

ケアを求める対象の割合は、アスレチックトレーナーが大きく減少

ケアを求める対象は、パンデミック前はアスレチックトレーナーが59.7%を占め最多だったが、パンデミック以降は22.0%と有意に減少していた(p<0.001)。アスレチックトレーナー以外では、スポーツ内科医がパンデミック前の41.8%からパンデミック以降は41.5%に、理学療法士は31.3%から34.1%に、カイロプラクターは14.9%から14.6%に、整形外科医は13.4%から9.8%となったが、これらの変化は有意でなかった。

受診抑制による後年の障害リスクの懸念

成人ランナーでは、COVID-19パンデミック以降に走行距離が増加していることが報告されている。しかし本研究では、未成年ランナーでは走行距離の減少が認められた。著者はこの差について、成人ランナーでは競技のためではなく、健康維持のためにランニングを行っている者が多く、未成年ランナーは反対に競技目的の者が多いという相違が影響している可能性を考察として述べている。

本研究の結論としては、「COVID-19パンデミックに伴うソーシャルディスタンス確保のため、未成年長距離ランナーのトレーニング量と怪我の双方が有意に減少している。しかしパンデミック中に負傷した未成年ランナーの多くが、ケアを求めることをせず、とくにアスレチックトレーナーのもとへの訪問回数が著減した。この若い集団に適切なケアが提供されない場合、将来の怪我と慢性的な疼痛の発生リスクに影響が生じる懸念がある」とまとめている。

文献情報

原題のタイトルは、「Impact of COVID-19 Social Distancing Restrictions on Training Habits, Injury, and Care Seeking Behavior in Youth Long-Distance Runners」。〔Front Sports Act Living. 2020 Nov 11;2:586141〕
原文はこちら(Frontiers Media)

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