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果物・野菜の適切な摂取量に関する知識と、果物・野菜の摂取量が有意に相関

果物や野菜の適切な摂取量を知らない人は、果物や野菜の摂取量が少ないことがデータで示された。さらにこの関連は、10年以上追跡した縦断的な解析でも、引き続き有意な関連が認められたという。また、果物や野菜の適切な摂取量を知っている人が、人口の4分の1程度にとどまることもわかった。オーストラリアからの報告。

果物・野菜の適切な摂取量に関する知識と、果物・野菜の摂取量が有意に相関

8,000人以上を対象とする横断研究に加え、一部の対象で縦断研究を実施

世界的にみて、果物や野菜の平均摂取量はどの国でも推奨よりも少ない。その背景に、推奨されている摂取量自体が国民に知られていない可能性が考えられる。そこでこの論文の研究者らは、果物と野菜を1日に数回以上摂取すべきであることを知っていることと、それらを十分摂取していることとの関連を調査し、また、果物や野菜の摂取量が少ない集団の特徴を明らかにする目的で、本検討を行った。

オーストラリアの大規模住民研究のデータを解析

この研究には、オーストラリアで行われた、肥満や糖尿病と生活習慣の関連を調査した「AusDiab Study」のデータが用いられた。AusDiab Studyは、25歳以上のオーストラリア成人1万1,247人を対象とする大規模な住民対象研究。この参加者から、食事摂取頻度調査に回答していない人、妊娠中・妊娠の可能性のある人、および摂取エネルギー量が極端に多いか少ない人(男性は788kcal未満または4,180kcal以上、女性は597kcal未満または3,463kcal以上)などを除外し、8,966人のデータを解析対象とした。

なお、本研究では後述のように、継続的な評価が可能だった人を対象とする前向き観察研究も行っている。その対象者数は、5年後時点で5,204人(58%)、12年後は3,549人(40%)。

果物や野菜の摂取量についての知識の評価方法と、摂取量の評価

果物の摂取量に関する知識は、「バランスのとれた食事のために、大人はどのくらいの頻度で'果物'を食べるべきか?」との質問をして、「1日に数回」との回答は25点、「毎日」は20点、「2日おき」は15点、「週に2回」は10点、「週に1回以下」は5点、「わからない」との回答は0点と判定して評価した。野菜についても同様の方法で評価し、果物と野菜それぞれを25点満点中の得点で摂取量との関連を検討するとともに、両者を合計して50点満点中の得点と摂取量との関連も検討した。

スコアが20点未満(両者合計では40点未満)の場合は知識が「貧弱」と判定し、20点(同40点)の場合は「不十分」として、25点(50点)の場合に「適切」な知識と判定した。

果物や野菜の摂取量は、研究参加登録時の食物摂取頻度調査から推定した。また、1,598人に関しては、ベースライン時に測定された血清カロテノイドとの関連も検討した。

知識が豊富な人と、そうでない人の違い

横断研究の対象である8,966人は、年齢が47.9±15.0歳、男性49.8%、BMI26.6±4.8、摂取エネルギー量2,102±740kcal、現喫煙者15.7%、前喫煙者25.8%、非喫煙者68.4%であり、果物や野菜の摂取量に関する知識は、適切が24.1%、不十分が73.0%、貧弱が2.9%だった。

果物と野菜の摂取量の知識が適切な人とそうでない人の背景

果物と野菜の摂取量(両者の合計)の知識が適切と判定された人は、女性、若年者、大学以上の学歴、非喫煙者、社会経済的状況が良好、身体活動量が多い、既婚者、総摂取エネルギー量が少ない人に多いという傾向があった。心血管疾患や糖尿病を有する人は、果物と野菜の摂取量の知識が貧弱に該当する割合が多かった。

一方、BMIによる知識スコアの違いは観察されなかった。

果物、野菜、それぞれの摂取量の知識が適切な人とそうでない人の背景

次に、果物と野菜を別々にみてみよう。

果物の摂取量の知識が適切と判定された人は、女性、総摂取エネルギー量が少ない、大学以上の学歴、社会経済的状況が不良でない、糖尿病がない、非喫煙者に多かった。身体活動量、婚姻状況、BMI、年齢、心血管疾患は、有意な関連がなかった。

野菜の摂取量の知識が適切と判定された人は、女性、若年者、身体活動量が多い、既婚者、大学以上の学歴、社会経済的状況が不良でない、非喫煙者、心血管疾患や糖尿病の既往のない人に多かった。BMI、総摂取エネルギー量は、有意な関連がなかった。

果物と野菜の摂取量の知識が少ないと、実際の摂取量も少ない

それでは本研究の本題である、果物と野菜の摂取量の知識と摂取量の関係をみてみよう。

知識スコアが適切な群を基準として、不十分な群と貧弱の群の摂取量を比較すると、未調整の粗摂取量で比較した結果、および関連に影響を及ぼし得る因子で多変量調整後の結果、いずれにおいても、知識が乏しいと摂取量が少ないという有意な関連が示された。なお、調整因子は、年齢、性別、BMI、摂取エネルギー量、婚姻状況、身体活動量、教育歴、社会経済的状況、喫煙、糖尿病、心血管疾患。

多変量調整モデルにおける知識スコアが不十分、貧弱な群と、適切な群との果物・野菜摂取量の差は以下のとおり。

果物と野菜の合計では、知識が不十分な群は-67.1g/日(95%CI:-80.0~-54.3)、知識が貧弱な群は-124.0g/日(-142.9~-105.1)。果物については同順に、-65.3g/日(-73.3~-57.3)、-96.7g/日(-126.9~-66.4)。野菜は、-16.1g/日(-26.4~-5.8)、-58.9g/日(-77.6~-40.2)。

知識が少ないことの影響は、12年後の果物・野菜の摂取量の差にも表れている

本研究では前述のように、追跡可能であった対象者については、5年後、12年後にも果物・野菜の摂取量を調査している。その結果は以下のとおり。なお、論文中には関連因子で未調整のデータと多変量調整後のデータがあるが、後者のみを紹介する。

ベースライン時において果物や野菜の摂取量に関する知識が不十分な群は、知識が適切な群に比較し、5年後の果物・野菜の摂取量が-50.4g/日(95%CI:-61.4~-39.4)だった。ベースライン時において果物や野菜の摂取量に関する知識が貧弱な群は、知識が適切な群に比較し、5年後の果物・野菜の摂取量が-122.2g/日(-152.7~-91.6)だった。

同様に、ベースライン時において果物や野菜の摂取量に関する知識が不十分な群は、知識が適切な群に比較し、12年後の果物・野菜の摂取量が-42.5g/日(-54.6~-30.5)だった。ベースライン時において果物や野菜の摂取量に関する知識が貧弱な群は、知識が適切な群に比較し、12年後の果物・野菜の摂取量が-94.6g/日(-133.8~-55.5)だった。

つまり、ある時点で果物や野菜の摂取量に関する正確な知識をもっていないことは、その時点だけでなく、12年後の果物や野菜の摂取量が少ないことと有意に関連していた。

果物と野菜の摂取量の知識と血清カロテノイドにも有意な関連

果物と野菜の摂取量の知識は、血清カロテノイドとも有意な関連が認められた。(r=0.14,p=0.006)。この関連は、果物(r=0.14,p=0.021)、野菜(r=0.12,p=0.011)を別々に解析しても、いずれも有意だった。

知識を増やすことで食習慣が改善する可能性も

これら一連の結果から、著者らは以下の事実が明らかになったと、結論にまとめている。

まず、成人のうち果物や野菜の推奨摂取量を正しく理解しているのは約4分の1にとどまっていた。また、男性や喫煙者、身体活動量が少ない人など、知識が乏しく摂取量が少ない集団が浮き彫りになった。そして、知識が乏しい人は長期間にわたって不適切な食事スタイルが続くことが示された。

これによって、情報提供・啓発活動を重点的に行うべき対象が特定可能になるとともに、それによって果物や野菜の摂取量が増加する可能性もあるのではないかと、著者らは述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「Fruit and Vegetable Knowledge and Intake within an Australian Population: The AusDiab Study」。〔Nutrients. 2020 Nov 25;12(12):E3628〕
原文はこちら(MDPI)

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