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3カ月間の潜水艦任務で体組成はどのように変わるか? COVID-19外出自粛生活に似た環境

2020年06月30日

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染拡大抑止のための外出自粛要請は、国内では解除され、徐々に日常生活が戻りつつある。外出自粛に伴う身体活動量の減少や食生活の変化、それらに伴う体重・体組成への影響について、世界各地から報告が出され始めている。本コーナーでもいくつかの情報を紹介してきたが、それらによると、数カ月間の外出自粛により、身体に種々の有意な変化が確かに生じるようだ。

3カ月間、潜水艦の任務に就くと、体組成はどのように変わるか? オランダ軍での検討

二重標識水法でエネルギー消費量を測定

ところで、狭い空間に閉じこもり、身体をあまり動かせず、日光に当たる時間も限られているという特殊な条件で長期間すごさなければならない状況が、COVID-19パンデミックのかなり前から一部に存在する。潜水艦での勤務がそれだ。

軍隊において潜水艦への勤務中は、身体活動の機会が減り、生鮮食品の摂取機会が限られ、ほとんど日光に当たることはできない。本研究はこの点に焦点を当て、二重標識水法による消費エネルギー量の測定を含む、代謝、体組成への潜水艦勤務の影響を、詳細に検討している。

13名の兵員、3カ月の潜水艦勤務中の観察研究

この研究の対象者はオランダ軍の男性潜水艦勤務の兵員55名のうち、協力に応じた13名のボランティア。平均年齢は27.8±5.8年、BMIは24.8±3.7。

潜水艦勤務期間は3カ月で、その間の身体、心血管、代謝および行動に関するパラメータの観察研究として実施された。任務前と任務終了時に、血圧や血清脂質などの心血管リスク因子、体組成を測定するとともに、潜水艦任務中の4週目と5週目に、二重標識水法によりに2週間にわたって毎日の総エネルギー消費量を測定した。

体組成、摂取および消費エネルギー量の変化

体脂肪率が有意に増加

潜水艦任務中、参加者はベースラインの体重を維持した(-1.4±3.4kg,p=0.18)。しかし体組成の計測からは、体脂肪率の有意な増加が観察された(21.9±3.2%から24.4±4.7%に増加.p=0.01)。この体脂肪率の増加は、1名を除いてすべての参加者で除脂肪体重の有意な減少(-4.1±3.3kg,p=0.003)に伴って発生していた。

上腕二頭筋、上腕三頭筋、肩甲下筋、腸骨筋で測定した皮下脂肪厚は、平均14±13 mm、35%有意に増加した(p=0.002)。最も顕著な変化は腸骨筋で観察され(8.9±7.8mm、55%増,p=0.001)、上腕三頭筋での増加も有意だった(1.0±0.4mm、15%増、p=0.04)。

参加者のうちエネルギーバランスを評価可能だった10名の平均消費エネルギー量は2,937±498kcal/日で、一方、平均摂取エネルギー量は3,158±786kcal/日であり、221±506kcal/日のプラスだった。消費エネルギー量と基礎代謝量の比で求めた身体活動レベル(physical activity level;PAL)は1.54±0.21だった。

除脂肪体重の変化は身体活動量とのみ正相関

潜水艦任務中の除脂肪体重の変化は、任務前のBMI(r=-0.68,p=0.03)、体重(r=-0.74,p=0.02)、脂肪量(r=-0.65,p= 0.04)、および除脂肪体重(r=-0.77,p=0.01)と逆相関した。その一方、BMIで調整後の身体活動量(PAL)とのみ、正の相関が認められた(PALが0.1増加するごとに0.8±0.3kgの除脂肪体重減少が抑制された)。

したがって、除脂肪体重を維持するには、BMIに応じた身体活動量が必要と考えられた。他方、脂肪量の変化は、潜水艦任務前のBMIとの関連は認められなかった(r=0.48,p=0.16)

心血管代謝マーカーの変化

心血管リスクスコアは変化なし

血糖値は潜水艦任務により有意に低下し(-0.3±0.4mmol/L〈-5.4±7.2mg/dL〉,p=0.03)、インスリン値は低下傾向がみられた(-1.5±2.7mU/mL,p=0.07)。トリグリセライドは低下した(-0.3±0.4mmol/L〈-26.6±35.4mg/dL〉,p=0.01)。その他、血圧、総コレステロール、HDL-コレステロール、LDL-コレステロールに有意な変化はなく、したがって心血管リスクスコアも変化がなかった(-0.04±0.3%,p=0.66)。

ビタミンD濃度は著減

任務期間中にビタミンDサプリメントの使用を開始した参加者では血漿ビタミンD濃度が46%増加したが、サプリメントを使用しなかった群ではビタミンD濃度が大幅に低下した(-11±5%,p=0.04)。尿中カルシウムおよびマグネシウム濃度は減少した一方、血漿濃度は有意に上昇していた。血漿および尿中の微量栄養素と電解質濃度の変化は、体組成の変化とは関連していなかった。

これらの結果から、著者らは本研究の結論を以下のようにまとめている。

「この観察研究は、潜水艦任務が除脂肪体重の大幅な低下と、脂肪量の増加を促す可能性があることを示している。身体活動量が多いことはこれを防ぐかもしれないが、それには本研究で観察されたよりも高いレベルの身体活動を必要とする。乗組員の心血管代謝マーカーが任務前後で改善されたのは意外だった。これは、潜水艦で支給された食事の質に関係している可能性がある。ただし、ビタミンD欠乏への対応の必要性が認められる」。

文献情報

原題のタイトルは、「Energy Expenditure and Changes in Body Composition During Submarine Deployment-An Observational Study "DasBoost 2-2017"」。〔Nutrients. 2020 Jan 15;12(1):226〕
原文はこちら(MDPI)

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