米国の高校生の食事関連3指標、運動関連3指標が悪化 新型コロナのパンデミックが原因か?
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックに伴い、米国の高校生の間で食事や身体活動習慣の悪化が認められとする調査結果が、疾病対策センター(centers for disease control and prevention;CDC)から発表された。評価指標のうち、食事関連3指標、運動関連3指標の悪化が観察されたという。
全米の高校生の2019年と2021年のデータを比較
2020年春に発生したCOVID-19パンデミックにより、学校やコミュニティーの慣行はCOVID-19伝播を抑制することを主眼としたガイダンスへの準拠が求められるようになった。その変更には、休校や給食サービスの停止、スポーツクラブ活動の制限などが含まれていた。それらが生徒の食生活と身体活動に影響を及ぼしたことは、パンデミック初期の研究報告で明らかになっている。しかしパンデミックが長期化した以降の調査は十分に行われていない。
このCDCのレポートでは、思春期リスク行動調査(youth risk behavior survey;YRBS)のデータを用いて、パンデミック前とパンデミック中の食事・身体活動習慣の差が検討されている。YRBSは、米国で1991年から隔年で実施されている学校ベースの横断調査。全米50州とコロンビア特別区(ワシントンD.C.)の公立・私立学校の9~12年生(日本の中学3年生~高校3年生に相当)を対象に実施されている。
このレポートの研究では、パンデミック前の2019年(n=1万3,677)、パンデミック中の2021年(n=1万7,232)のデータが解析に用いられた。2021年の調査は、同年の秋に実施されている。なお、非健康的な習慣は、食事関連では六つ、身体活動関連では五つの変数で評価されている。
食生活は6種類の指標のうち3種類が悪化
六つの非健康的な食習慣のうち、三つが増加していた。
増加していた指標とその割合は、「果物または果汁100%ジュースの摂取が1日1回未満」が2019年は41.8%であったのに対して2021年は47.1%であり、全体および性別にみた男子・女子ともに有意な変化だった。「野菜の摂取頻度が1日1回未満」は同順に40.7%、45.3%であり、全体と女子で有意な変化で、男子は増加していたものの有意水準未満だった。「朝食の欠食」は66.9%、75.0%であり、全体および男子・女子ともに有意な変化だった。
一方、「加糖飲料を1日1回以上摂取」(15.1→14.7%)、「スポーツドリンクを1日1回以上摂取」(10.6→11.2%)、「ふつうの水の摂取量が1日3杯未満」(44.6→44.2%)は、有意な変化がなかった。
身体活動は5種類の指標のうち3種類が悪化
五つの健康的な身体活動習慣のうち、三つが減少(悪化)していた。
悪化していた指標とその割合は、「筋力強化のための運動を週に3日以上実行」が2019年は49.5%であったのに対して2021年は44.9%であり、全体と女子で有意な変化で、男子は減少していたものの有意水準未満だった。「週5日の体育の授業に参加」は同順に25.9%、19.0%であり、全体と男子で有意な変化で、女子は減少していたものの有意水準未満だった。「一つ以上のスポーツチームでプレー」は57.4%、49.1%であり、全体および男子・女子ともに有意な変化だった。
一方、「毎日60分以上の身体活動」(23.2→23.9%)、「有酸素運動と筋力強化の双方のガイドラインの推奨に準拠」(16.5→16.0%)は、有意な変化がなかった。
身体活動行動間の関連
2021年のデータを用い、性別、人種/民族、学年を調整後、一つ以上のスポーツチームでプレーした生徒はそうでない生徒と比較して、毎日60分以上の身体活動を行っている確率が2.6倍高く(adjusted prevalence ratios〈APR〉2.6〈95%CI;2.4~2.8〉)有酸素運動と筋力強化の双方のガイドラインの推奨に準拠している確率が3.6倍高かった(APR3.6〈3.3~4.0〉)。
同様に、週5日の体育の授業に参加した生徒はそうでない生徒と比較して毎日60分以上の身体活動を行っている確率が1.8倍高く(APR1.8〈1.5~2.0〉)、有酸素運動と筋力強化の双方のガイドラインの推奨に準拠している確率が2.1倍高かった(APR2.1〈1.7~2.5〉)。
パンデミックから正常な状態への回復だけでなく、長期的な習慣改善が必要
著者らは、高校生の食習慣や身体活動習慣の指標の多くが、2021年の秋の時点でもパンデミック前より悪化したままであること、また、有意な変化が認められなかった指標についても、パンデミック前から良好とは言えない実態を表しているとしている。そのうえで、「学校、コミュニティー、および家族が、パンデミックからの回復段階と、それ以降にわたって、それらの行動を改善するための戦略を立案する必要がある」との提言を述べている。