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COVID-19緊急事態宣言下で運動を制限された少年野球の子どもたちの行動変容の実態――相模原での調査

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの第一波(2020年4月頃など)による緊急事態宣言が発出された状況下で、少年野球チームの子どもたちがどのように過ごしていたかを調査した結果が報告された。自宅で(個人で)工夫して自主的なトレーニングを続けていた実態が明らかになった。北里大学医療衛生学部リハビリテーション学科の河端将司講師らの研究によるもので、「Children」に論文(筆頭著者:倉坪亮太氏)が掲載された。

COVID-19緊急事態宣言下で運動を制限された少年野球の子どもたちの行動変容の実態――相模原での調査

感染者数に比べて社会生活への衝撃が大きかったパンデミック第一波

2019年末に始まったCOVID-19パンデミックは、当初の大方の予想よりはるかに長く続いている。この間にワクチン接種が普及し、発症後の治療法が確立されてきたこともあって、ある程度の感染リスクは許容しながら以前の社会生活に戻ろうとする「withコロナ」の流れが定着してきた。しかし、パンデミック第一波では、感染者数は現在に比べればごくわずかと言えるほど少なかったにもかかわらず、感染力や死亡率の実態、治療法が明らかでなかったため、社会生活の一部に混乱がみられた。政府からは緊急事態宣言が発出され、学校閉鎖、スポーツ施設や商業施設の閉鎖などの措置がとられた。

このようなパンデミックとそれに対する措置が、スポーツアスリートに与えた影響については、既に多くの報告がなされている。ただし、特定のスポーツ、特定の年齢層に絞って影響を詳細に検討した研究は少ない。

日本の野球少年に与えた影響を調査

野球は日本で最も人気のあるスポーツであり、競技人口は800万人以上と言われ、サッカーの670万人やバスケットボールの480万人を上回る。また、春と夏の高校野球からは毎年数々のドラマが生まれ、多くの日本人の記憶に刻まれて長年語り継がれる。甲子園を目指してトレーニングを続けている小学生や中学生も少なくない。河端氏らの研究グループは、そのような野球少年に、COVID-19パンデミック第一波に伴う緊急事態宣言が及ぼした影響を調査した。

2021年4月6~20日に、神奈川県の相模原市少年野球協会に加盟している77チームに所属する6~12歳の選手に、チームを通じてwebアンケートへの回答協力を依頼。アンケートの質問項目は、パンデミック前/中の勉強時間や睡眠時間、野球の練習時間やその方法など、合計26項目。回答に際しては、必要に応じて保護者にサポートしてもらった。なお、「パンデミック前」とは2020年3月以前と定義し、同年4~5月を「緊急事態宣言期間」と定義した。

自主的な練習を継続していた姿が明らかに

103人から回答を得た。回答に不備のあるものや、当該期間に選手登録されていなかった子どもを除外し、99人を解析対象とした。平均年齢は9.6±1.5歳、身長137.8±9.4cm、体重35.3±12.4kgであり、女子が7人(7.1%)含まれていた。

スクリーンタイムや平日の学習時間が有意に増加

まず、ライフスタイルの変化をみると、緊急事態宣言期間中は、学習目的以外のスクリーンタイム、すなわちテレビやゲームを見る時間が平日・休日ともに増加した(p<0.001)。また、平日の学習時間も増加していた(p<0.001)。休日の学習時間は有意な変化がなかった。睡眠時間はパンデミック前が560.0±37.2分、緊急事態宣言期間中は568.8±42.7分であり、平均で8〜9分程度であるが有意に増加していた(p=0.006)。

とくに、スクリーンタイムに関しては、1日2時間以上の長時間視聴した割合が、パンデミック前は平日19.2%、休日22.2%であったのに対して、緊急事態宣言期間中は同順に41.5%、53.8%と、200~250%に増加していた。なお、米国小児科学会は、学習目的以外でのスクリーンタイムが1日1~2時間を超過しないことを推奨している。

週末のチーム単位での練習が減少し、自主的な練習が増加

次に野球活動への影響をみると、平日のチームでの練習時間はパンデミック前と大きく変わらなかったものの(p=0.171)、週末のチームでの練習時間は緊急事態宣言期間中に大きく減少していた(p<0.001)。

一方、自主的な練習の頻度は、緊急事態宣言期間中に増加していた(p=0.019)。例えば、自主的な練習を週に6~7回行っていた割合がパンデミック前は9.1%であったのに対して、緊急事態宣言期間中は20.2%と2倍以上に増加していた。

ランニングを増やし、バッティング練習は減少

続いて自主的な練習のメニューを比較すると、全体として大きな変化が認められた(p=0.01)。

具体的には、打撃練習に関してはバッティングセンターの利用がパンデミック前8.8%に対して、緊急事態宣言期間中は4.4%に減少していた。素振りは同順に19.9%、21.9%で大きな変化はみられなかった。

守備練習に関しては、壁当て捕球練習が6.1%から2.4%に減少し、キャッチボールは17.2%から21.2%へとやや増加していた。15分以上のランニングは3.4%から7.7%へ増加していた。

著者らは、「バッティングセンターが閉鎖された影響が認められる一方で、少人数での自主的な練習が継続されていたのではないか」と考察を加えている。

これらの結果を基に論文の結論には、「COVID-19のパンデミックが、少年野球の子どもたちの日々の活動やトレーニング方法に変化を強いたことは間違いない。この変化が子どもたちの成長にどのような影響をもたらすのかを明らかにするため、今後の縦断的研究が求められる」と述べられている。

文献情報

原題のタイトルは、「Lifestyle Changes and Baseball Activity among Youth Baseball Players before and during the First COVID-19 Pandemic in Japan」。〔Children (Basel). 2022 Mar 7;9(3):368〕
原文はこちら(MDPI)

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