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肥満とビタミンD不足は新型コロナウイルス罹患・重症化の危険因子

肥満が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の罹患や重症化のリスク因子であることは、パンデミックの当初から指摘され、数多くの研究で確認されている。また、ビタミンDの不足が感染症のリスク因子であり、COVID-19の罹患や重症化のリスクを高めている可能性を指摘した報告が少なくない。

この現状をオーバービューした論文が発表された。論文のタイトルは、「Obesity, Hypovitaminosis D, and COVID-19: the Bermuda Triangle in Public Health」であり、副題にある「the Bermuda Triangle(バミューダ・トライアングル)」は、西大西洋の海難事故が多発する魔の三角地帯。肥満、ビタミンD不足、COVID-19が、現在の公衆衛生における重要課題であることを指摘する意図と思われる。

肥満とビタミンD不足は新型コロナウイルス罹患・重症化の危険因子

イントロダクション

2019年末に出現した重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)による感染症であるCOVID-19により、2021年11月8日時点で、世界中で500万人以上が死亡したとされる。肥満はCOVID-19の罹患リスクの高さや転帰不良と関連ており、また、肥満はビタミンD欠乏症とも関連している。加えて、ビタミンD欠乏症は呼吸器感染症への感受性が高いことに関連していることが知られており、COVID-19に対する潜在的な保護手段としてのビタミンD摂取への関心が高まっている。ただし、ビタミンD摂取により、肥満者のCOVID-19罹患・重症化リスクを抑制可能かという点については、確固たるエビデンスはない。

肥満とCOVID-19パンデミック

COVID-19の発生直後に、肥満がCOVID-19重症化の主要な危険因子である可能性が浮上した。大規模な観察研究とそのメタ解析から、肥満がSARS-CoV-2感染、COVID-19発症・重症化・入院・侵襲的人工呼吸管理の必要性、およびCOVID-19による死亡の独立した危険因子であることが示されている。

COVID-19と同じ呼吸器感染症であるインフルエンザとの比較では、肥満の影響はCOVID-19のほうが大きい可能性が指摘されている。入院を要した患者での比較において、肥満はインフルエンザ患者よりもCOVID-19患者に多く見られ(16.6 vs 20.6%)、リスク因子としてはCOVID-19との関連のほうが強かった(OR1.30〈95%CI;1.12~1.32〉,p<0.0001)。

メタ解析からは、肥満患者のSARS-CoV-2感染のリスクは、正常体重者よりも46~78%高く、COVID-19による入院リスクはオッズ比で1.4~4.17の範囲で上昇することが示されている。また、侵襲的呼吸管理を要する状態のリスクは66~113%、ICU入室のリスクは21~88%増大する。さらに、肥満はCOVID-19関連死亡の独立した危険因子であり、オッズ比は1.14~3.52とされている。

肥満がCOVID-19の罹患や重症化、COVID-19関連死のリスクを高めるメカニズムとして、複数の経路が想定されている。重要なことは、肥満は自然免疫と獲得免疫の両方に影響を与えることと、肥満自体が全身の慢性炎症状態であって、COVID-19罹患時の炎症性プレコンディショニングの原因となり、炎症誘発性サイトカインの過剰分泌を引き起こすという点だ。また、肥満に伴う内皮機能障害は、COVID-19による生命予後をしばしば決定する血栓イベントのリスクを上昇させる。さらに興味深いことに脂肪組織では、SARS-CoV-2の細胞への侵入を促進するアンジオテンシン変換酵素2受容体(ACE2R)の発現増強が観察され、脂肪組織がSARS-CoV-2の貯蔵庫かつ複製の場となる可能性がある。

世界保健機関(WHO)によると、肥満は1997年時点で世界的パンデミックと見なされている。2016年には16億人の成人が過体重(BMI25~29.9。日本の基準では肥満に該当)、6億5,000万人が肥満(BMI30以上)であり、世界の有病率は52%(過体重39%、肥満13%)に上る。これは1975年のほぼ3倍に当たり、さらに2030年までに57%を超えると予想されている。

2017年には過体重や肥満のために400万人以上が死亡したと推定されている。前述のとおりCOVID-19による死亡者は約500万人とされている。よって現在、世界は肥満とCOVID-19のパンデミックが同時発生している状況と言える。

肥満とビタミンD欠乏症

肥満は微量栄養素の欠乏と関連している。ビタミンD欠乏症(25(OH)D<30nmol/L)やビタミン不足(同30~50nmol/L)は、肥満においてとくに顕著に認められる微量栄養素欠乏である。メタ解析の結果は、ビタミンDレベルはBMIと逆相関することを示している。4万2,000人以上の参加者を含む21件のコホート研究の大規模なメタ解析では、年齢、性別、その他の交絡因子を調整後、BMIが1高いごとにビタミンDレベルが1.15%低いという関連が示された。肥満はビタミンD低値の独立した危険因子であり、正常体重者と比較して、肥満者では35~52%、過体重者でも24%、ビタミンD低値が多くみられる。

肥満によりビタミンDが低値となるメカニズムについては、体格が大きいことによる希釈、ビタミンDの脂溶性の増大による拡散、日光曝露の相対的な減少によるビタミンD合成の低下などが想定されている。

ビタミンDレベルは、年齢、人種/民族、社会経済的状況によって大きな差があり、小児、皮膚が浅黒い色の人種/民族、低所得国の人々はビタミンD欠乏症のリスクが高い。肥満に比べて利用可能な疫学的データは少ないが、北米と欧州で1億人以上、アジアで4億9,000万人以上がビタミンD欠乏症であると推定されている。肥満とCOVID-19の併発リスクの高さに、ビタミンD低値が関与している可能性がある。

ビタミンD欠乏症とCOVID-19

ビタミンD欠乏症は、COVID-19罹患、重症化、入院、および転帰不良のリスクが高いことに関連している。米国の19万人以上のCOVID-19患者を対象とした遡及的観察研究では、SARS-CoV-2陽性と25(OH)Dレベルとの間に強い逆相関がみられ、年齢、性別、人種、緯度を調整した後も有意性が維持されていた。

COVID-19入院患者ではビタミンD欠乏症が非常に多くみられ、100%とする報告も存在する。27件の研究のメタアナリシスでは、ビタミンD欠乏症の有病率は軽症COVID-19患者より重症COVID-19患者のほうが高いことが明らかになった。また、ビタミンD欠乏により、COVID-19罹患リスクは26~171%、重症化リスクは90~160%、入院リスクは81~117%、死亡リスクは22~208%、それぞれ高いという実態が報告されている。

一方、ビタミンD摂取によるCOVID-19の転帰への影響を検討した報告も少なくない。ビタミンD摂取によりSARS-CoV-2感染後の炎症マーカーが、非摂取の対照群より低値となることなどが報告されている。合計約3,000人のCOVID-19患者が含まれる13件の研究のメタアナリシスから、ビタミンD補給がICU入室と死亡率を約60%抑制するという結果もみられる。

ただし、これらの報告は研究手法が不均一で、有用性を否定した研究結果も少なくなく、結果に一貫性を欠いている。とは言え、ビタミンDは低コストで安全性の懸念が少ないことから、SARS-CoV-2感染およびCOVID-19重症化の予防策として推奨されることが多い。

肥満とCOVID-19とビタミンD欠乏症

COVID-19パンデミックは、肥満のパンデミックの拡大局面で発生した。それにビタミンD欠乏症のエピデミックがさらなる影響を及ぼしていると考えるのが妥当である。

ビタミンD欠乏症と肥満は、ともにCOVID-19の修正可能な危険因子と言える。よって、一般市民の意識を高めるための新たな努力が必要とされる。それは、当面のCOVID-19対策としてのみでなく、将来のウイルス性疾患の影響を軽減することにもつながるのではないか。

文献情報

原題のタイトルは、「Obesity, Hypovitaminosis D, and COVID-19: the Bermuda Triangle in Public Health」。〔Curr Obes Rep. 2022 Apr 7;1-10〕
原文はこちら(Springer Nature)

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