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新型コロナ禍のトレーニングで、アスリートの負傷を予防するために気をつけること

2022年02月25日

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック時のロックダウンのような状況を想定し、アスリートとスタッフが心にとめておくべきことをまとめたナラティブレビュー論文が発表された。主に、再び起こるかもしれないロックダウン中や、スポーツ再開時に多発する可能性のある負傷の予防に焦点を当てた考察が述べられている。

新型コロナパンデミック時のトレーニングで、アスリートの負傷を予防するために気をつけること

たとえオミクロン株の終わりが見えてきたとしても、次への備えが必要

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のオミクロン株が世界各地で猛威をふるっているが、感染拡大のピークを越えた国も現れ始めている。オミクロン株はこれまでに出現した変異株に比べて感染力が強い一方で、従来の変異株に比べて病原性が低下したことから、「パンデミックの終わりの始まり」と期待する向きもあるが、もちろん、実際にどうなるかは誰にもわからない。また、COVID-19とは異なる感染症が発生する可能性もある。

今回紹介する論文は、こうした状況を背景として、ハイレベルアスリートやプロスポーツ選手が負傷を防止するための「Standard Operating Procedure(標準的な行動手順)」を、ナラティブレビューとしてまとめたもの。要旨を抜粋する。

COVID-19パンデミックは負傷予防プログラムにどのように影響したか?

スポーツ関連の負傷は、とくにハイレベルのプロスポーツ選手において、身体的、心理的、社会的側面に深刻な影響を与える可能性があり、負傷予防アプローチが重要。適切なアプローチによって負傷発生率が低下するというエビデンスがある。

COVID-19パンデミックは我々が生きる時代において、公衆衛生上の最大の緊急事態であり、生活のあらゆる側面に多大な影響を及ぼしている。スポーツ関連で最も印象的な事象は、第二次世界大戦後初となった、2020年東京オリンピックの延期だ。オリンピックに限らず、大半のスポーツ関連競技会は中止または延期された。

負傷予防プログラムへの影響も発生している。第一に、負傷予防のめのスクリーニングテストやトレーニングに困難を来した。その結果、アスリートの身体フィットネス、柔軟性、筋力レベル、バランスなどに影響が生じたと考えられる。ただし、それを客観的に評価することも困難な状況が続いている。

第二に、今日の高度にデジタル化された環境でも、コーチやトレーニングパートナーからの直接的なサポートなしに、アスリートが負傷予防プログラムを確実に遵守することの難しさが指摘される。第三にパンデミックは、これまでのエビデンスに基づき策定された負傷予防トレーニングプログラムの想定を超えて、アスリートに心理的な影響を与えていることが報告されている。

最後に、パンデミックは当初考えられていたよりもはるかに長く続いており、これは通常のオフシーズンの期間を大きく超えていることが挙げられる。

ロックダウンのような状況での負傷予防プログラム運用計画の必要性

スポーツ外傷に対する今回のパンデミックの正確な影響の把握のために、まだ調査が続けられている段階だ。ただし、「Standard Operating Procedure(標準的な行動手順)」を示すことは可能だ。

健康リスクの総合的な評価(Global Health Risk Assessment)

まず、個人の健康を維持することが最優先事項と言える。ロックダウンを要するような事態は急速に進展する可能性があり、コミュニティでの感染リスクを防ぐために、症状がないアスリートも適切にスクリーニングし、必要に応じた隔離措置を立てる。運動能力が高い個人は入院を要する率が低いように見えるが、このウイルスはアスリートの心血管系に影響を及ぼし、一般的に説明されている呼吸障害に加えて、無視できない心筋炎リスクにつながる可能性がある。これらの潜在的な合併症は、スポーツに復帰する前に精査しておく必要がある。

スポーツ特有のリスク評価と“遠隔予防(Tele-Prevention)”

パンデミック中の外傷予防トレーニングはリモートで実行する必要がある。提供する内容には、以下が含まれるだろう。

その時点で直ちに実践可能な運動プログラム

筋肉の強化、柔軟性、バランスと敏捷性、体幹の安定性、各スポーツ固有の要求に応じたさまざまな程度の持久力。全体的なフィットネスを維持しながら、スポーツ固有のトレーニングの減少を補うように調整する。

特定の機器の利用

自宅でのトレーニングを可能とするために、トレッドミル、自転車・ローイングエルゴメーター、筋力トレーニング機器を用意する。または、マット、縄跳び、バンド、ウェイトなど、低コストの資材を活用する。その他にも、メンタルイメージやビデオ分析を利用する。

つまり、アスリートはロックダウン中に通常の環境にアクセスできない、またはアクセスできないリスクに直面するため、「予防サバイバルキット」を利用できる体制を考慮しておく。

論文では、これ以降「スタッフ内、アスリートとスタッフ間、アスリート同士のコミニケーション」、「メンタルヘルス」、「スポーツ復帰の準備」「ローカルポリシーへの準拠」という項目を設け、将来のパンデミック再来への備えを論説。

結論として、「現在の前例のない危機の影響を客観的に評価することで、我々は教訓を学ぶ必要があり、このような状況に適応した負傷防止トレーニングは、将来の同様の状況への備えとして最優先事項の一つとして位置づけられるべきである。アスリートが健康であることを究極の目標として、一連のトレーニングプログラムに十分な時間をかけることが求められる」と述べられている。

文献情報

原題のタイトルは、「Exercise-Based Injury Prevention in High-Level and Professional Athletes: Narrative Review and Proposed Standard Operating Procedure for Future Lockdown-Like Contexts After COVID-19」。〔Sports Act Living. 2021 Dec 17;3:745765〕
原文はこちら(Frontiers Media)

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