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COVID-19の影響を前向きな変化として活用 米国食事ガイドラインの実行性を高めるための推奨事項

栄養学に基づいた食事ガイドラインが多くの国で開発され、かつ、最新のエビデンスを取り込み改訂が重ねられてきている。しかし、それらが各国の一般市民に遵守されているかというと、かなり心もとない。この状況は今に始まったことではなく、長年続いている。この問題に終止符を打つべく正面から向き合い、理想と現実の乖離を埋めるための推奨事項が、米国でまとめられた。研究者らは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックを、この取り組みをスタートする好機ととらえている。

COVID-19の影響を前向きな変化として活用 米国食事ガイドラインの実行性を高めるための推奨事項

パンデミックは人々の食習慣改善のチャンス

米国では1980年に、科学的エビデンスに基づき、栄養素の需要を満たし慢性疾患のリスクを提言させるための食事ガイドライン(Dietary Guidelines for Americans;DGA)が策定され、以後5年ごとに改訂が重ねられている。しかし、多くの米国人はDGAの推奨事項を満たすことができず、長年公衆衛生上の懸念となっている。例えば、米国人の健康食指数(Healthy Eating Index)は、2005年から2016年にかけて、56から59に上昇したものの、100をはるかに下回っている。

人々がDGAの推奨を実践しない理由として、知識や理解が不足していることや動機付けが乏しいこと、経済的な問題などが想定されている。しかし、目下、COVID-19パンデミックにより人々の生活パターンが大きく変わり自宅で過ごす時間が増えている。これは、人々がこれまで長年続けていた食生活を変えるための、大きなチャンスという捉え方も可能だ。

この状況を背景として、米国マサチューセッツ大学などの研究者らは2021年5月、健康、栄養、食品科学のオピニオンリーダーを招集し、一般消費者のDGA推奨事項遵守率を向上するためのアプローチを開始した。2日間にわたる一般公開されたプレゼンテーションとパネルディスカッションに続き、35名の招待参加者による円卓会議を実施。そのメンバーには、栄養学はもちろん、循環器や代謝領域、小児科領域の医学学会、食品流通業界、教育関係、消費者団体など、食品・栄養に関連して利益相反関係にあるさまざまな立場からの専門家や代表者が含まれていた。

話し合われたテーマは主に以下の3つ。

  1. 消費者の傾向、向き合い方、および食事と健康に対する動機
  2. 健康的な食事パターンの遵守率を改善するのに役立つテクノロジーの役割
  3. 効果的なコミュニケーションと信頼の構築

本論文では、プレゼンテーションでの報告やパネルディスカッションおよび円卓会議で話し合われたことを詳細に記し、それらのまとめとして、「米国人のための食事ガイドライン(DGA)の遵守率向上のための推奨事項とアプローチ」が掲げられている。本稿では、その結論部分から一部を抜粋して紹介する。

米国人のためのDGAの遵守率向上のための推奨事項とアプローチ

推奨事項1 COVID-19パンデミックの影響を前向きな変化として活用する

  • 家庭での料理を通じて得られる健康上のメリットや、家族の時間の増加など、他のやる気を起こさせる価値を強調する。
  • さまざまな種類の健康的な加工食品や食材を家庭料理に、簡単に採り入れることができることを示す。
  • 健康的な食事パターンの一部となり得るさまざまな食品を調理するための調理スキルと方法を消費者に提供する。

推奨事項2 安全で健康的かつ手頃な価格で入手しやすい食料供給を引き続き促進する

  • 食品科学と技術を進歩させて、健康的で安全な食品供給を拡大し、これらの技術で作成された食品をすべての消費者にとって、より手頃な価格にすることを目指す。
  • 家庭で食品を製造するために使用される調理テクニックと、食品業界で大規模に食品を製造するために使用される技術の類似性を示すことによって、食品加工に関する誤解を是正する。
  • 消費者がDGAの推奨事項を満たすのに便利で手頃な価格で役立つ多くの食品についての理解を深める。

推奨事項3 食品を取り巻く関係者のコラボレーションとパートナーシップを拡大する

  • 官民パートナーシップと投資を呼び掛け、食事パターンをDGAの推奨事項に近づける。
  • プライマリケア医や他の医療専門家の適切な栄養と健康増進のトレーニングを行い、プライマリケア医には継続教育の機会を提供する。
  • 小売業者と提携して、店舗やオンラインでメッセージを拡散し、消費者をより健康的な食事パターンに誘導する。
  • 学校給食やフードサービスなど、大規模な人口を対象としたDGAの遵守状況を把握する。

推奨事項4 信頼を築くためにコミュニケーション戦略を採用する

  • 教育に焦点を当てた従来のコミュニケーションアプローチから、経年的に少しずつ変化する消費者の食習慣に対応して影響を及ぼすという戦略に移行する。
  • さまざまな人口統計、年齢、文化、人種、価値観、動機付けなどについて、的を絞った、シンプルで一貫性のあるメッセージを作成する。
  • 消費者が信頼するインフルエンサーの関与を増大させる。

文献情報

原題のタイトルは、「Implementing the 2020–2025 Dietary Guidelines for Americans: Recommendations for a path forward」。〔Curr Dev Nutr. 2021 Dec 9;5(12):nzab136/J Food Sci. 2021 Dec;86(12):5087-509〕
原文はこちら(Oxford University Press)
原文はこちら(John Wiley & Sons)

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