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「男性アスリートの三主徴」の実態は? 米国の持久系スポーツでのフィールド調査

米国から、男性持久系アスリートの三主徴の実態を調査した結果が報告された。検討対象者のほぼ9割が炭水化物摂取量が不十分で、3人に1人は摂食障害の潜在的なリスクが認められたという。

「男性アスリートの三主徴」の実態は? 米国の持久系スポーツでのフィールド調査

男性アスリートの三主徴の問題

女性アスリートの三主徴(female athlete triad;FAT)は、利用可能エネルギー不足(low energy availability;LEA)、機能性視床下部性無月経、骨粗鬆症の三つで構成される。このうちLEAと骨粗鬆症は男性でも生じ得る。また、男性ホルモンであるテストステロンの分泌低下も起こり得る。このような男性アスリートの三主徴(male athlete triad)に対する関心が徐々に高まってきているが、いまだ知見が十分蓄積されているとは言えない。本論文は、男性アスリート三主徴の理解に向けて行われたフィールド調査の報告。

レクリエーション男性持久系アスリート14名での検討

研究参加者は、米国南東部の地域住民から募集された、レクリエーションレベルの男性持久力アスリート。適格基準は、過去3カ月以上にわたり週に10時間以上のトレーニングを継続していて、何らかの競技会に出場経験があり、体脂肪率12%以下で、過去6カ月間の体重の変化が±3kg以内であること。除外基準は、摂食障害や心血管疾患、甲状腺疾患等内分泌疾患の既往、中等度以上運動の妨げとなる整形外科的障害の存在。

条件にマッチする18名が研究に参加し、うち3名が研究プロトコルから逸脱、1名は採血に同意しなかったため、解析対象は14名だった。なお、研究参加登録時の体脂肪率の判定にはタニタ社の体組成計を使用し、研究データの収集には二重エネルギーX線吸収測定法(DXA)を用いた。

トレーニング強度の異なる2つの条件で検討

エネルギー需要とテストステロンレベルは、トレーニング強度の異なる2つの条件で測定した。高強度トレーニング条件は週に10時間以上トレーニングを行う1週間、低強度トレーニング条件は軽い運動を週に2~3日行う1週間とした。

計2週間の研究期間中、参加者は摂取した食物・水分を記録し、その記録に基づいて摂取エネルギー量、摂取栄養素が計測された。摂食障害のリスク評価には、摂食障害調査票(Eating Disorder Inventory-3;EDI-3)と症状チェックリスト(Symptom Checklist;EDI-3 SC)を用いた。

64%がLEAで、35%には摂食障害のリスク

解析対象者14名の年齢は26.4±4.2歳で、体重70.6±6.4kg、身長179.5±4.3cm、BMI21.9±1.8、除脂肪体重65.7±5.4kgであり、VO2maxは62.3±6.9mL/kg/分、体組成計による体脂肪率7.1±2.2%、DXA法では13.6±3.5%。安静時代謝量は1,799±549kcal、トレーニングによる消費エネルギー量は高強度条件で1,048±805kcal、低強度条件で682±326kcal、摂取エネルギー量は高強度条件2,687±878kcal、低強度条件2,629±927kcalだった。

炭水化物摂取量は9割が推奨を満たしていない

利用可能エネルギーは平均が27.6±10.7kcal/kg除脂肪体重であり、30kcal/kg除脂肪体重未満で定義される利用可能エネルギー不足(LEA)に、64.3%が該当した。

トレーニング強度別では高強度条件で25.2±12.9kcal/kg除脂肪体重、低強度条件では29.9±11.1kcal/kg除脂肪体重であり、条件間の差は有意でないものの(p=0.13)、高強度条件では利用可能エネルギーが相対的に少ない傾向にあった。この差は、前述のように摂取エネルギー量が両条件でほぼ一致し、消費エネルギー量の差が大きいことから、後者の影響によるものと考えられた。

栄養素別摂取量をみると、炭水化物は4.9g/kgであり、参加者の89.3%は推奨を満たしておらず、特に高強度トレーニング条件ではその割合が92.9%に及んだ。タンパク質は1.7±0.6g/kg、脂質は摂取エネルギー量比32.3±5.0%だった。

EDI-3による評価の結果、35.7%が摂食障害のリスクがありと判定された。

テストステロンと骨密度の低下は認められず

テストステロンレベルは、高強度トレーニング条件で1,339±836ng/dL、低強度トレーニング条件で1,455±889ng/dLであり、基準範囲を逸脱した参加者はいなかった。また骨密度は1.31±0.09g/cm2であり、同じく基準範囲を逸脱した参加者はいなかった。

男性アスリート三主徴の全体的な評価

テストステロンと骨密度の低下を来していた参加者が存在しなかったことから、男性アスリートの三主徴のコンポーネントすべての基準を満たす該当者はいなかった。

ただし全体的にエネルギー需要を満たしていない参加者が多く、前述のごとく、ほぼ3人に2人に該当する64.3%はLEA状態にあり、さらに3人に1人以上にあたる35.7%は摂食障害のリスクがあると判定された。一方、1名(7.1%)は過食症の臨床的スコアを示した。

著者らは、「男性持久系アスリートの64.3%が、三主徴のコンポーネントの一つを満たしていた。炭水化物の摂取不足や摂食障害に関連する行動、およびそれによる内分泌代謝への影響に関するさらなる研究が求められる」と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「Examination of Athlete Triad Symptoms Among Endurance-Trained Male Athletes: A Field Study」。〔Front Nutr. 2021 Nov 26;8:737777〕
原文はこちら(Frontiers Media)

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