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HDL-Cと血圧のU字型の関係が明らかに HDL-C低値はメタボ、高値は飲酒の影響か 特定健診150万人のデータを解析

神奈川県内の特定健診受診者のビックデータを解析した検討から、善玉(HDL)-コレステロールと血圧はU字型の関係にあることが明らかになった。神奈川県立保健福祉大学大学院保健福祉学研究科の中島啓氏らの研究によるもので、「Journal of Clinical Medicine」に論文が掲載された。同氏らは、HDL-C低値で血圧高値の場合はメタボリックシンドローム(Met-S)の影響、HDL-C高値で血圧高値の場合は飲酒の影響により、両者がU字型の関係になるのではないかと考察している。

HDL-Cと血圧のU字型の関係が明らかに HDL-C低値はメタボ、高値は飲酒の影響か 特定健診150万人のデータを解析

HDL-CとTGや血糖との関連に比べて、HDL-Cと血圧の関連はよくわかっていない

高比重リポタンパク(HDL)は“善玉”と呼ばれ、HDL-コレステロール(HDL-C)の値は、心血管イベントリスクと逆相関する。しかし、高すぎるHDL-C(例えば、100mg/dl以上)については疑義が報告されている。またHDL-CはTG(中性脂肪)と逆相関することもよく知られており、これはMet-Sを基盤とするインスリン抵抗性によってリポ蛋白リパーゼ活性が低下するためと考えられている。このような病態では、インスリン抵抗性が血糖値を押し上げるように働くことから、インスリン過剰分泌という代償機能が十分働かない場合には、HDL-C低値と高血糖も併存しやすい。実際にMet-S改善に伴い、HDL-Cは上昇、TGと血糖値は低下することが多い。

このように、HDL-Cの変動はこれまで主として糖・脂質代謝の側面から研究されてきており、数々のエビデンスが蓄積されてきている。その一方で、HDL-Cと血圧との関連はこれまであまり研究されていない。このような状況を背景として、中島氏らは神奈川県での特定健診の結果というビックデータを用い、非常に低値(20md/dl)から非常に高い(110mg/dl以上)幅広い範囲のHDL-Cと血圧の関係を詳細に検討した。

神奈川県での特定健診受診者、約150万人のデータを解析

2014年度の神奈川県内の特定健診受診者181万9,173人から、データ欠落のある人を除いた149万3,152人(男性55.6%)を解析対象とした。

対象者全体をHDL-C値に基づいて9群に分け、血圧値を含むその他の検査指標との関連を検討した。なお、各群の対象者の割合は以下のとおり。HDL-C39mg/dL以下4.3%、40~49mg/dL16.0%、50~59mg/dL23.3%、60~69mg/dL22.2%、70~79mg/dL16.4%、80~89mg/dL9.7%、90~99mg/dL4.8%、100~109mg/dL2.0%、110mg/dL以上1.3%。

全体的な傾向として、年齢以外のすべての連続変数(血圧、BMI、TG、LDL-C、およびHbA1c)はHDL-C低値群で高く、また高血圧・糖尿病・脂質異常症の薬物療法中の患者の割合や、心血管疾患既往者、現喫煙者の割合もHDL-C低値群で高い傾向にあった。反対に身体活動習慣のある人と習慣的飲酒者の割合は、HDL-C高値群で高かった。

HDL-Cと血圧の詳細な解析の結果

では、HDL-Cと血圧、HDL-Cと高血圧該当者数との関連をみていこう。なお、本研究では「140/90mmHg以上または降圧薬の服用」を高血圧と定義している。

男性はHDL-C70台、女性は90代の群で、高血圧有病率が最も低い

交絡因子を考慮しない検討では、収縮期/拡張期血圧ともにHDL-C90~99mg/dLの群を底値とする左右が逆のJ字型の関係が認められた。高血圧の有病率との関連については、男性はHDL-C70~79mg/dL群を底値(高血圧有病率は33.8%)、女性は90~99mg/dLの群を底値(同20.6%)とするU字型の関係が認められた。とくに男性は女性に比べて、HDL-C最高値群(110mg/dL以上)での高血圧有病率(40.8%)の上昇が顕著だった。

次に、交絡因子(年齢、現喫煙、糖尿病・脂質異常症の薬物療法、身体活動習慣、飲酒量)を調整後の検討では、HDL-C高値群での有病率がやや低下した。ただし男性では逆J字型の関係が維持されていた。女性ではHDL-C高値群での高血圧有病率の上昇はみられなくなった。

さらに、BMIとTGの影響も調整すると、HDL-C低値群での高血圧有病率は大きく低下して、男性、女性ともに正の線形の関係となった。この線形の関係は、調整因子にLDL-CとHbA1cを追加しても維持されていた。

非飲酒群では、HDL-C高値群の高血圧有病率の上昇幅はやや低下

続いて飲酒習慣との関連を検討。全体の18.1%が習慣的飲酒者、33.7%が機会飲酒者、48.2%は非飲酒者であり、高血圧有病率は習慣的飲酒者(OR1.72〈95%CI;1.71~1.74〉)だけでなく、機会飲酒者(OR1.59(同1.57~1.61)〕でも、非飲酒者より有意に高かった。

非飲酒群におけるHDL-Cと高血圧有病率の関係は、男性、女性ともにHDL-C60~69mg/dLの群の高血圧有病率が最も低いというU字型の関係にあった。ただし、前記の全体解析の結果に比べ、HDL-C高値群で高血圧有病率が高いという関係性は減弱した。

HDL-Cが70以下程度での高血圧はメタボ、それ以上高値での高血圧は飲酒の影響か

著者らは以上の結果を、「HDL-Cが低い場合と高い場合の双方が高血圧リスクに関連している。この関係は複雑で、飲酒者と非飲酒者では異なるようだ」とまとめている。そのうえで、「HDL-C30~70mg/dL程度の範囲内でのHDL-Cと血圧の逆相関はMet-Sの影響によるものと考えられる。一方、HDL-Cがより高い場合に見られる高血圧は、飲酒の影響によるものではないか」と考察を加えている。

特定保健指導に際しては、Met-Sの解消を一義的な目的としがちだ。しかし、血圧高値者の場合、飲酒習慣是正のための介入もないがしろにできないと言えそうだ。

文献情報

原題のタイトルは、「Association of Serum High-Density Lipoprotein Cholesterol with High Blood Pressures at Checkup: Results of Kanagawa Investigation of Total Checkup Data from the National Database-9 (KITCHEN-9)」。〔J Clin Med. 2021 Oct 30;10(21):5118〕
原文はこちら(MDPI)

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