バスケットボール選手の回復力を高めるための栄養戦略、生活習慣、支援ツール
バスケットボールアスリートが、シーズンを通してパフォーマンスを発揮するために必要な回復戦略をまとめた、ナラティブレビューが「Sports medicine」に掲載された。栄養戦略や睡眠ばかりでなく、マッサージ、コンプレッションガーメント(圧縮衣服)、水療法、凍結療法などについてもエビデンスに基づく考察が加えられた大部な論文。ここでは結論に掲げられた推奨事項の栄養戦略を中心にしつつ、抜粋して紹介する。
シーズン中の栄養戦略
炭水化物
- エネルギー要件として1日あたり5〜7g/kg摂取する。
- 次の試合まで8時間を超える場合は、1日あたり5~7g/kg(1日あたりの必要量として)の炭水化物を摂取し、次の競技まで8時間未満の場合は、筋肉と肝臓のグリコーゲン貯蔵を補うために、1時間ごとに1.0~1.2g/kgの炭水化物を4時間摂取する。
タンパク質
- 筋タンパク質合成速度の最適化を含む回復促進のため、1日あたり1.2〜2.0g/kg摂取する。
- 1日を通してタンパク質の摂取量を均等に分散させるために、4~5時間ごとに0.31g/kg摂取する。
- 回復を促進するために、睡眠前に30~40gのタンパク質を摂取する。
- 15gのコラーゲンペプチドまたはビタミンCを含むゼラチンが、コラーゲン合成をサポートする可能性があるものの、今後の研究が必要。
水分
- 練習または試合での発汗量がわかっている場合や、セッションの合間に短い休憩をとる場合、体重1kgの低下ごとに1.0~1.5Lの水分を摂取する。それ以外の場合で、セッションの間隔が24時間以上になる時には食事/軽食時に任意に摂取する。
遠征時の考慮事項
- ジェットラグ(時差ぼけ)の軽減のための栄養上の推奨事項を裏付けるエビデンスは少ない。
- ホテルのルームサービスメニューに基づいてルームサービスフードガイドを作成し、アスリートが十分な情報に基づいて選択できるように支援する。
- ホテルのフードサービススタッフの協力を得られる場合は、高炭水化物食品、高タンパク質食品、野菜や果物、および水分を指定する。
- 飛行機またはバスでの移動中は、スナックと水分を手元に保持する。
- 宿泊施設では1日を通して継続的な摂食を促進し、それによってグリコーゲンの補給と回復のための筋タンパク質合成最適化を目指す。
- サポートスタッフは、健康的なメニューの選択肢を示すため、ホテル周辺のレストランを事前に調査する必要がある。また、試合後の食事を提供する際には、アリーナへの納入実績の豊富なケータリング業者を検討する。それらの業者の豊富な経験は、試合後の食事のプロセスをより簡潔かつ効率的にすることが可能。
シーズン中の回復方法(支援ツール)
- バスケットボールアスリートは、最低8時間の睡眠時間を確保すべき。
- タイトなスケジュールの最中、または遠征後には、より十分な睡眠時間の確保と昼寝が推奨される。
- サポートスタッフは、トレーニングと試合の双方のストレスが夜間の睡眠に影響を与える可能性があることに注意する必要がある。
- コーチは、睡眠に利用できる時間を増やす戦略、とくにトレーニングセッションのタイミングやゲームの翌日の移動時間を検討する必要がある。
- トレーニングの時間帯を変更しないことが、就寝時間と起床時間の変動を減らすのに役立つことがある。
- 定期的な睡眠のモニタリングとフィードバックが、睡眠の最適化に役立つことがある。
- 夜間の試合後の青色光への曝露を避けるか、電気機器に青色遮光フィルターを使用する。
- ホームアリーナまたは施設内に、快適で便利な休息/睡眠エリアを設けることを検討する。
以上、栄養戦略と睡眠に関する推奨事項を抜粋として紹介した。論文では上記のほかに、「コンプレッションガーメントとマッサージ」、および、「水療法と凍結療法」に関する推奨事項が掲げられている。その中で、例えばマッサージについては、長時間(15分以上)ではなく、短時間(5~12分)にする必要があるとしている。
文献情報
原題のタイトルは、「In-Season Nutrition Strategies and Recovery Modalities to Enhance Recovery for Basketball Players: A Narrative Review」。〔Sports Med. 2021 Dec 14〕
原文はこちら(Springer Nature)