コロナ禍では身体活動量が多い人ほど食生活の質が改善している ブラジルの研究
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック下で、身体活動を活発に行っている人ほど、食生活の質が良くなっていることが多いというデータが報告された。感染者数が世界最多クラスにあるブラジルからの報告。
昨年5月のブラジルで調査
COVID-19パンデミックによる外出自粛、都市封鎖、社会的隔離などの政策が、世界中の人の食生活や身体活動に影響を及ぼしていることが報告されている。一般的には、パンデミックにより身体活動量が減り、食生活の質か低下したとされることが多いが、両者が連動するのか、あるいは相反するのか、または関連性はなのかという研究は少ない。著者らはこの点を明らかにするため、本検討を行った。
調査はブラジルでオンラインアンケート形式にて実施され、実施期間は2020年5月5日~5月17日。現在、ブラジルのCOVID-19感染者数は米国、インドに続く世界3位だが、この時期は世界2位だった。ブラジルはパンデミックに対して国レベルでの対策が消極的であることが報道されているものの、自宅で仕事をする人へのインセンティブ供与や、学校の授業のオンライン化などが行われている。
Googleのプラットフォームを利用し、設定されたすべての質問に回答した18歳以上の成人を解析対象とした。質問項目は70項目あり、それらは公衆衛生学や栄養学、生理学、運動学、神経科学、人間行動理論を専門とする研究者によって設定された。
摂食行動の評価方法
摂食行動については、果物、野菜、揚げ物、菓子の摂取量の変化を評価した。
例えば、「COVID-19のパンデミックにより、果物の摂取量は増加したか?」と質問し、「変化なし」または「少しの変化」と回答した場合は「COVID-19は食生活に影響を与えなかった」と分類し、「中程度」または「非常に」との回答は「食生活がCOVID-19の影響を受けた」と分類した。
果物や野菜の摂取量の増加は「健康的な食品の摂取量の増加」と判定し、揚げ物や菓子の摂取量の増加は「不健康な食品の摂取量の増加」と判定。そのうえで、「健康的な食品の摂取量の増加」に該当する項目数から、「不健康な食品の摂取量の増加」に該当する項目数を減算し、その解を摂食行動変化のスコアとした。
身体活動の評価方法
身体活動については、「週に何回運動しているか?」「1回に何分運動しているか?」「何カ月運動を継続しているか?」「身体活動の強度はどれくらいか?」「どのような種類の運動をしているか?」という質問の回答に基づき、身体活動量を算出。中程度~高強度運動(moderate-to-vigorous physical activity;MVPA)が週に150分以上の場合を「活動的」とみなし、150分未満は「非活動的」と判定した。また、MVPAが週に30分以下、31~90分、91~150分、151~300分、300分超に分類した解析も行った。
MVPA 150分/週以上の人はパンデミック中に食生活が良質に変化
アンケートには1,929人が回答し、そのうち1,874人(1,099人〈58.6%〉が女性)が有効回答だった。MVPA 150分/週以上で「活動的」と判定されたのは535人(28.5%)で、1,339人(71.5%)は「非活動的」と判定された。
活動的な群は非活動的な群に比較し女性の割合が低く(53.3 vs 60.8%, p=0.003)、BMIが低い(25.17±4.31 vs 25.83±4.54, p= 0.008)という有意な違いがあった。年齢は平均38~39歳であり有意差はなかった。また社会的孤立の期間は平均91~92日で、有意差はなかった。
パンデミック中の身体活動量が多い人は、揚げ物、菓子の摂取量が増えていない
パンデミック下で、野菜の消費量が増加したのは26.6%だった。一方、18.8%は揚げ物の摂取量が増加し、菓子の摂取量が増加した人は42.5%に上った。
性別、年齢、教育歴、BMI、社会的孤立の期間で調整後、身体活動が「活動的」な群は「非活動的」な群に比べ、パンデミック下の食生活が良好に保たれていることが明らかになった。
具体的には、
- 揚げ物の摂取量が増加する確率は非活動的な群より4割低く(aOR 0.60〈95%CI; 0.44~0.81〉, p<0.001)、
- 菓子の摂取量が増加する確率はほぼ2分の1だった(aOR 0.53〈95%CI; 0.42~0.66〉, p<0.001)。
また、
- 野菜の摂取量が増加する確率は有意水準には至らなかったものの25%高かった(aOR 1.25〈95%CI; 0.99~1.58〉, p=0.055)。
- 果物の摂取量についても、活動的な群のほうが増加していた(aOR 1.24〈95%CI; 0.98~1.56〉, p=0.076)。
身体活動量が多いほど、摂食行動変化スコアがプラスに
週あたりのMVPAは、
- 30分未満が710人(37.9%)、
- 31~90分が433人(23.1%)、
- 91~149分が195人(10.4%)、
- 150~300分が476人(25.4%)、
- 300分超が60人(3.2%)だった。
MVPAの時間が長いほど、摂食行動変化スコアが高いという有意な傾向性が認められた(傾向性p<0.001)。
以上をまとめると、COVID-19パンデミック中に、より活動的に暮らしている人は、より健康的な食習慣に変化したという正の相関が認められた。著者らは、「ウイルスの感染拡大を防ぐための公衆衛生上ガイドラインを遵守しながらも、健康維持のための身体活動の重要性が強調されなければならない」と述べている。
文献情報
原題のタイトルは、「Physical Activity Is Associated With Improved Eating Habits During the COVID-19 Pandemic」。〔Front Psychol. 2021 Apr 12;12:664568〕
原文はこちら(Frontiers Media)