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栄養士や栄養専門職者の4割は「燃え尽き症候群」を経験している可能性

栄養士をはじめとする栄養専門職者の約4割が、バーアウト(燃え尽き症候群)を経験している可能性が明らかになった。システマティックレビューにより、過去25年間に報告された12報の報告を抽出しメタ解析を行った結果であり、「BMC Psychology」に論文が掲載された。

栄養士や栄養専門職者の4割は「燃え尽き症候群」を経験している可能性

栄養士のバーンアウトの有病率に関する初のシステマティックレビュー

バーンアウト(burnout)は、それまで高いモチベーションを保ち、職業、学業、スポーツトレーニングなどに励んでいた人が、突然のようにやる気を失い、それまでコツコツと積み重ねてきたものを手放してしまいかねない状態に陥ることで、日本語では“燃え尽き症候群”と呼ばれる。就業上のバーンアウトはあらゆる職業で生じ得るとされている。ストレスフルであることの多い医療職者は、一般にバーンアウトのリスクが高いと考えられている。

栄養士の業務は、食事計画、患者や介入対象者の栄養評価・カウンセリング、ニーズの把握、食材・食品の購入と管理、会計・財務管理など多岐にわたりストレスフルであることから、やはりバーンアウトのリスクが高い可能性がある。これまでに栄養士のバーンアウトの実態に関する報告はいくつかなされているが、それらを対象とするシステマティックレビューはまだ行われていない。本論文の著者によると、この研究は栄養士・栄養専門職者のバーンアウトに関する初のシステマティックレビューとメタ解析の報告だという。

12報の論文、16件のデータセットを解析

文献検索には、EBSCOhost Research Platform、EMBASE、PubMed/MEDLINE、ProQuest、ScienceDirect、Scopus、Web of Scienceという七つのデータベースを用い、2000年1月1日~2024年4月1日に収載された論文を対象として実施された。栄養士(dietitian)または栄養専門職者(nutritionist)のバーンアウトの有病率を報告している論文を、言語に制限を設けず検索。レビュー論文、および、著者に連絡をとったにもかかわらず全文を入手できなかった論文は除外した。そのほか、灰色文献(学術的なジャーナルに正式に発表されていない文献)の検索も行った。

2024年11月15日に追加の論文の有無を確認し、計337報がヒット。重複削除後に2名の研究者が採否を判断。意見の不一致は、別の2名の研究者の討議にかけ、さらに一致しない場合は研究者全員で討議し合意を得た。

解析対象研究の特徴

最終的に、16件のデータセットを含む12報を適格と判断した。研究参加者数の合計は1万2,166人で、6カ国から報告されていた。国別の内訳は、米国が25%、韓国が17%、その他が58%(オーストラリア、ブラジル、カナダ、日本、ポルトガル、サウジアラビア、シンガポールが各8%)。各研究の対象者数は中央値102.5(範囲4~8,038)人で、平均年齢37.53歳(中央値38.35歳)、女性の割合が平均92%(同94%)だった。

日本からの報告は、がん患者に対する栄養カウンセリングと、管理栄養士のバーンアウトのリスク因子に関する2022年の日本全国調査の報告で、631人のデータセットとして解析に用いられた。

栄養スタッフでの有病率は他の医療スタッフと同程度

10件の研究(対象者数1万91人)のメタ解析の結果、栄養スタッフ(dietitianまたはnutritionist)の燃え尽き症候群の有病率は40.43%(95%CI;23.7~59.7)であることが示された。個別にみると、最も低い値を報告した研究は5.3%(対象者数19人)、最も高い値を報告した研究は100%(同4人)であり、異質性を表すI2統計量は99.33%と、研究間の一貫性が低かった。ただし出版バイアスについては、フェイルセーフNが6293.00(p<0.001)であり、堅牢な結果であることが示された。

なお、研究参加者の年齢が高い研究ほど、また、女性の割合が高い研究ほど、燃え尽き症候群の有病率は低くなる傾向があったが、有意ではなかった。

燃え尽き症候群は、「情緒的消耗感(エネルギーの枯渇)」、「脱人格化(他者への冷淡な態度)」、「個人的達成感の低下(自分の価値や成果への無力感)」という三つが主症状とされている。今回の解析対象研究の2件の研究は、これら三つの症状の有病率を個別に検討していた。それらの研究の対象者数は631人、64人であり、前者は先述の日本からの報告だった。

それら2件の研究を対象としたメタ解析の結果、それぞれの有病率は、情緒的消耗感が25.1%(95%CI;15.1~41.2、I2=84%)、脱人格化が6.6%(1.1~31.2、I2=95.04%)、個人的達成感の低下が59.3%(39.8~76.2、I2=89.32%)であることがわかった。

他の医療スタッフでの有病率

論文の考察には、栄養スタッフ以外の医療スタッフの燃え尽き症候群の有病率について、既報研究のデータが示されている。それによると、救急医療スタッフは43%、助産師40%であり、これらと栄養スタッフは同レベルだとしている。一方、形成外科医は32%、精神科医26%、歯科医13%、理学療法士8%などの報告があり、それらに比較し栄養スタッフは高く、反対に、看護師は最大で72%、医師(診療科を特定せず)は最大72%、呼吸器科医または呼吸療法士が62%、放射線科医83%などの報告があって、それらに比べると栄養スタッフの有病率は低いようだと記している。

なお、本研究のメタ解析で示された研究間の高い異質性に関して、「現段階では燃え尽き症候群の有病率の比較検討には注意が必要であり、今後の有病率を探る研究に際しては測定法に関する合意が求められる」と述べられている。

文献情報

原題のタイトルは、「Prevalence of emotional burnout among dietitians and nutritionists: a systematic review, meta-analysis, meta-regression, and a call for action」。〔BMC Psychol. 2024 Dec 23;12(1):775〕
原文はこちら(Springer Nature)

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