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バレーボール選手の市販鎮痛薬の使用状況が明らかに ドイツのアマチュア選手での検討

アマチュアバレーボール選手の市販鎮痛薬の使用状況が報告され、使用者は過去4年間(中央値)にわたって使用し続けていることや、女性は男性よりも使用率が有意に高いことなどが明らかになった。ドイツからの報告。

バレーボール選手の市販鎮痛薬の使用状況が明らかに ドイツのアマチュア選手での検討

余暇スポーツにはQOL向上と低下の二面性がある

余暇にスポーツに参加することは幸福感の向上に資する方法として認識されている。しかしスポーツ中に怪我や痛みが発生した場合、QOLが低下することがある。痛みに対して、一般生活者ではまず市販鎮痛薬を使用することが多い。鎮痛薬の多くは非ステロイド性抗炎症薬(Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs;NSAID)であり、消化管の炎症や出血、腎機能低下、心血管イベントといった副作用がある。

バレーホールは比較的安全なスポーツだが一定の頻度で受傷が発生し、市販鎮痛薬が使用されることも少なくないと考えられる。この研究では、その実態の把握とともに、鎮痛薬を使用しながらスポーツへの参加を継続することの背景が検討された。

女性の6割、男性の4割が市販鎮痛薬の使用を報告

研究は、18歳以上の男女のプロとアマチュアのバレーボール選手の横断調査として行われた。ドイツ語版と英語版が作成されたオンラインアンケートが2018年10月~2019年3月に実施され、同国で一般的に用いられている、アスピリン、アセトアミノフェン、およびジクロフェナク、イブプロフェン、ナプロキセンという3種類のNSAID、計5種類の市販鎮痛薬の使用状況や、過去の受傷履歴、スポーツ参加の動機などが調査された。

アンケートに完全な回答をしたのは152人(年齢範囲10~58歳、女性100人)であり、年齢基準(18歳以上)に満たない者、自主的にではなく医学的管理下で市販鎮痛薬を服用していた者などを除外。また、プロアスリートはサンプル数が少ないため解析対象から除外し、結果的にアマチュアアスリートのみでの検討となった。

最終サンプル数は女性72人と男性42人。年齢は女性26.6±6.0歳、男性29.3±9.6歳だった。

女性の市販鎮痛薬使用者は高齢で、男性は年齢差なし

調査前の過去6カ月間に、42人の女性(58%)と16人の男性(38%)が、処方箋なしで市販鎮痛薬を服用したと報告した。市販鎮痛薬の使用期間は、女性が5.5±5.5年、男性は4.6±3.2年。なお、同国のアスリートで1年以上のセルフメディケーションの平均利用率は21.4%と報告されている。

女性の市販鎮痛薬使用者の年齢は28.0±6.3歳で、市販鎮痛薬を使用していない群の24.5±4.9歳より有意に高齢だった。一方、男性は両群ともに約29歳であり有意差はなかった。

1週間あたりのトレーニング時間については、男性、女性ともに、市販鎮痛薬使用者群と使用していない群で有意差はなかった。

市販鎮痛薬を使用した理由の7割はスポーツに伴う痛み

市販鎮痛薬を服用したことの理由として119件が挙げられ、そのうち83件(69.7%)はスポーツ活動中に発生した痛みに対処するためだった。スポーツに関連しない理由として、発熱、風邪の症状、歯科手術、月経痛などが挙げられ、それらを除外した解析で、痛みの発生部位としては、頭(27%)、膝(22%)、肩(19%)、背中(12%)の痛みが多かった。

男性に比較し女性プレーヤーは1.7倍、痛みを有する部位の数が多かった。ただし、痛みの部位の分布に関しては、有意な性差は認められなかった。

使用する薬剤の種類は、イブプロフェンが最多

最も多く使用されていた市販鎮痛薬はイブプロフェンだった。用量は、屯用の場合は中央値400mg(範囲100~800mg)であり、週あたりでは中央値550mg(同100~2,800mg)だった。また、処方箋なしで同薬を使用している期間は中央値4年であり、最長20年だった。

競技会前には使用率が上昇

市販鎮痛薬を使用する場面を、トレーニング、交流戦、競技会という3場面に分け、それぞれ「強く同意」「同意」「否定」「強く否定」の4ついずれかで回答してもらった。

競技会では79%が、強く同意または同意と回答した。交流戦ではその割合が30%、トレーニングでは33.3%だった。

市販鎮痛薬の安易な使用を抑制する施策が必要か

このほか、心理学的質問票の回答に基づく分析で、女性では、成功への希望と競技歴の長さが、市販鎮痛薬の使用に有意な関連があることが明らかになった。男性では市販鎮痛薬の使用との有意な関連がある因子は特定されなかった。

著者らは、「アスリートは運動中の怪我、病気、または一般的な不調による痛みの強度を軽減することを期待して、市販鎮痛薬を服用する。しかし、NSAIDにエルゴジェニック効果はなく、警告症状としての痛みを抑制し、さらなる傷害につながる可能性がある」と注意を喚起している。重ねて「市販鎮痛薬の安易な使用を減らすための教育プログラムが必要。また、スポーツチームは、選手の性別を考慮した心理的サポートの提供を考慮すべき」とまとめている。

文献情報

原題のタイトルは、「Sex differences in the consumption of over-the-counter analgesics among amateur volleyball players」。〔BMC Sports Sci Med Rehabil. 2021 Apr 29;13(1):45〕
原文はこちら(Springer Nature)

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