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日本、韓国、中国のサッカー代表チームのFIFAランキングが、欧州移籍選手の人数などと有意に相関

中国、日本、韓国という東アジア3カ国のサッカーのレベルを、海外、とくに欧州でプレーする選手数の多寡と関連づけて解析した結果が報告された。それぞれの国から出て、欧州リーグで活躍する選手数が多いほど、FIFAランキングが上位であることが明らかにされている。スポーツ栄養とは直接的な関連のある研究ではないが、選手がハイレベルでの環境で経験を積むことがその国のレベル向上につながることを示す、興味深いエビデンスの一つとして紹介する。中国の研究者らの報告。

日本、韓国、中国のサッカー代表チームのFIFAランキングが、欧州移籍選手の人数などと有意に相関

人材の海外流出は、その人たちが帰国後に国内で活躍することで、長期的にプラスとなる

本稿ではまず、論文のイントロダクションに述べられている内容を紹介する。

専門家の海外流出は、その国の人的資本を枯渇させる可能性が指摘されている。その一方で、時間の経過とともに、海外に移住した人たちの経験が、その国の人的資本を強化する可能性がある。サッカーにおいても、“先進国”と呼ばれる国々のリーグが、サッカーの“発展途上国”のエリート選手を引き抜くことにより、引き抜かれた国の戦力低下がもたらされ、格差をより拡大しているとする批判がある。

トップリーグの人材獲得競争の激しさを表す数値として、例えば欧州5大リーグの1995年の全選手のうち、外国人選手は20%だったが、2005年には39%、2015年の時点で既に50%に達していた。しかし、このようなサッカー選手の海外流出が、その国のレベル低下をもたらすとすることのエビデンスは不足している。一方で、技術者の流出と国内回帰でみられるようなプラスの影響がサッカーにおいても成立し、時間の経過とともに国家間の競技レベル差の縮小につながる可能性も考えられる。具体的には、海外に出てプレーした個々の選手が身に付けたテクニック、身体能力、経験、およびサッカーの戦略や考え方、姿勢などが、帰国後に国内組の選手や指導者、組織に変化をもたらす可能性がある。

東アジアの3カ国、中国、日本、韓国は、地理的に隣接し、文化・歴史・民族という点でも類似点が少なくない。しかしこの3カ国のうち中国は、サッカーの成績という点で日本と韓国から大きく水をあけられている。2024年現在、日本は国際サッカー連盟(FIFA)ランキングが世界で18位、アジアでトップ、韓国は世界23位、アジアで3位であるのに対して、中国は世界で87位、アジアで13位である。

中国の日本に対する対戦成績は7勝15敗8分けで、最後の勝利は1998年までさかのぼる。当時は中国も日本も海外でのプレー経験のある選手がごく限られていた。2026年ワールドカップ予選で、中国は日本に0対7という大敗を喫したが、その時点で日本は海外のハイレベルリーグで21人がプレーしていたのに対して、中国はゼロだった。

論文のイントロダクションでは以上のような事実を整理。そのうえで、海外でプレーするサッカー選手の人数や種通常試合数などと、その国のFIFAランキングとの関連が検討されている。

若い才能の効果的な育成につながる知見

この研究では、海外組の選手を欧州リーグでプレーしている選手数と定義した。その理由として、欧州はサッカーの競争が激しく、名門クラブがしのぎを削っており、東アジアの選手の移籍先としても定着しているためと述べられている。

解析には2000年以降の2万2,972試合のデータが用いられた。FIFAランキングを従属変数、海外移籍選手数を独立変数、出場回数とプレー時間を媒介変数とする解析など、詳細な検討がなされている。以下に結果の一部を紹介する。

ポジション別の選手数

2000年以降、中国、日本、韓国の3カ国から、欧州リーグへの移籍者数をポジション別にみると、フォワードが519人、ミッドフィルダーが332人、ディフェンダーが314人だった。日本と韓国はフォワードが多いのに対して、中国はディフェンダーが多かった。詳細は以下のとおり。なお、論文では国別データを記載する順序として、中国、日本、韓国の順に示されているが(中国発の研究であるためと考えられる)、以降はFIFAランキングにそって、日本、韓国、中国の順に記す。

表1 2000年~2024年に欧州でプレーした東アジア出身サッカー選手の人数
日本韓国中国
フォワード31316838
ミッドフィルダー2129624
ディフェンダー1967543
合計721339105
※ゴールキーパーはサンプル数が少ないため当論文では除外されている

欧州移籍選手数や試合数などとFIFAランキングとの相関

欧州移籍選手数やその選手の参加試合数、先発出場数、プレー時間などは、以下のように、すべてFIFAランキングと有意な相関が認められた。

FIFAランキングと欧州リーグ移籍選手数との相関はr=-0.5338(移籍選手数が多いほど順位の数値が小さいため相関係数はマイナスとなる)、ビック5でプレーする選手数との相関はr=-0.3927、ビック5以外でプレーする選手数との相関はr=-0.4681、選手の出場試合数との相関はr=-0.4731、先発メンバーとしての出場試合数との相関はr=-0.4665、ピッチ上でのプレー時間との相関はr=-0.4709。

なお、日本の選手はいずれの指標についても3カ国間で大きくリードしており、2022年において出場試合数は1,731回、先発出場は1,316回、ピッチ上の時間は90分フル出場に換算して1299.5試合相当だった。韓国の選手は2020年に最高のデータを記録し、出場試合数は399回、先発出場は246回、ピッチ上の時間は250.2試合相当だった。中国の選手のピークは2007年であり、出場試合数109回、先発出場58回、ピッチ上の時間70.6試合相当だった。

論文の結論は、「この研究は、東アジアのサッカーの発展にとって国際的な進出の重要性を強調しており、世界的なキャリアを目指す若い才能を効果的に育成するための洞察を政策立案者に提供するものである」とまとめられている。

文献情報

原題のタイトルは、「East Asian expatriate football players and national team success: Chinese, Japanese, and South Korean players in Europe (2000-2024)」。〔Sci Rep. 2025 Jan 29;15(1):3707〕
原文はこちら(Springer Nature)

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